見出し画像

勉強会:NY市の公園に関する勉強会

2020年5月20日に開催されたニューヨーク市の公園政策に関するゲストウェビナー(講師:ニューヨーク市公園局の島田智里氏)に向けて、16日に学生メンバーを中心とした勉強会を行っておりました。元国土交通省公園課課長の町田誠様や大和リース株式会社の方々にもご参加いただき、ニューヨーク市の公園維持管理、日本との比較について議論しました。

勉強会の流れ

以下の3点に関して各学生が予習を行い勉強会に臨みました。
1. 米国ニューヨーク市のユニークな公民連携による公園管理
https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/032300072/050800010/
https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/032300072/050800011/
2. ニューヨーク・ハイラインにおける歴史的高架橋再利用案の形成過程
木村 優介, 山口 敬太, 久保田 善明, 川崎 雅
https://www.jstage.jst.go.jp/article/journalcpij/45.3/0/45.3_199/_article/-char/ja
3. Bryant Park、Brooklyn Bridge Parkのどちらかの公園について、以下の視点を参考に各自調べる。
・どのようなアクティビティがあるか
・どのようなステークホルダーがいるのか
・どのようにマネタイズされているのか
勉強会の前半は、勉強会の担当学生2名が予習概要をスライドを用いて共有しました。その後、各学生が感想を述べ、町田様や大和リース株式会社の方々からコメントをいただく形で議論が展開しました。

NY市の公園維持管理

公園維持管理については、ライセンス、MOU、Stewardship等のニューヨーク市公園局(NYCParks)と民間団体の公民連携制度の他、ニューヨーク市公園局の最近の取り組みであるCommunity Park InitiativeやParks without Bordersが話題に上がりました。また、具体的な公園として、Bryant ParkBrooklyn Bridge Parkを取り上げて、その維持管理体制、公園内でのアクティビティを詳しくみました。

公園における公民連携の草分けであるBryant Parkですが、Bryant Park Corporationがニューヨーク市公園局からライセンスを取得し、資金集め含め、公園維持管理を全面的におこなっております。資金集め手法の1つとして、BID (Business Improvement District)を用いたものが挙げられます。ブライアントパークとその周辺1街区にも満たない範囲がBryant Park BIDという地区として指定されています。その地区内の商業収益の一部がBryant Parkの維持管理に使われるよう制度化されています。公園内のアクティビティは1日の時間帯、季節ごとに合わせ、多様に存在していますが、それらは公園維持管理と密接に関係します。例えば、毎年恒例のWinter Villageはアメリカの大手銀行であるBank of Americaが出資し、スケート場の設置やスケートショーの開催をおこなっています。公園側としては、維持管理費を得ることができ、出資する企業も公園を通じて企業名を大々と掲載できるという点において、ウィンウィンの関係です。

スクリーンショット 2020-05-23 12.29.42

Bryant Park BID (Image: NYCityMap)

一方で、Brooklyn Bridge Parkは2008年にその一部が開園したものの、未だ再開発の途中であり、ニューヨーク市内で比較的新しい公園と言えるでしょう。公園内には商業施設のみならずアパートやホテル等も建設され、そこから得られる資金が公園再開発の資金へと使われます。

画像2

Brooklyn Bridge Park Plan (Image: Michael Van Valkenburgh Associates Inc)

画像3

公園内アパートOne Brooklyn Bridge Park (Photo: StreetEasy)


日本との比較

日本との比較については、指定管理者制度、設置管理許可制度、そしてPark-PFIといった日本での公民連携制度を引き合いに出して、ニューヨーク市の制度との違いを議論しました。日本では公民連携のあり方の多様性が欠ける、そもそも公と民の権力関係が異なる、公園に対する市民の意識が違うなどの意見が出てきました。中でも、公園局が個人のボランティアをも対象に技術提供や技術サポートをするStewardship制度に多くの関心が寄せられました。日本でこのような活動をするには、指定管理者制度を利用して、町内会や地域ボランティアといった市民の立場により近い民間が先導をとらなくてはいけないだろう、日本でも個人が申し込んで公園を使える「おとなりサンデー」という仕組みが渋谷区には存在するなどといった日本でのオルタナティブに関する議論がなされました。

勉強会を開催して事前準備をしたことで、より積極的にゲストウェビナーに参加できたと思います。

個人的な感想

Brooklyn Bridge Parkの再開発手法をみて、日本の公開空地とどう異なるのか、ふと疑問に思いました。どちらも敷地内にPrivateな建築物とPublic Spaceが創出されています。もちろん、その規模、PublicとPrivateの配分、具体的利害関係等は異なります。しかし、我々の究極の目的が公園に執着せず、日本のPublic Spaceを問い直すものだとしたら、公園という枠組みを超えて考える必要があるかもしれないと感じました。

勉強会PHOTO

勉強会の様子

(文責:畑岡愛佳)