COLLECTIVE レビュー #35 びちゃ『AKUBI』(福岡県)
47都道府県のさまざまな地域から ZINE が集まってきて、毎日賑やかな COLLECTIVE 。今思えば ZINE に県民性や地域性が表現されることを期待してはじめた企画だった。過去5年やってみてパッと思い出せるのは、秋田を拠点に秋田の文化を ZINE にしている「ユカリロ」。大分の日田のスナックを取材した「男の歌」、地元の浅草を紹介する「アサクサジン」、移住先で出会ったおもしろい人へのインタビューが載った「西会津フィルム」、福岡の中心地にある大濠公園の魅力を綴った「Ohori PARK」。ZINE をひらけばその地に行けた。
県民性はその土地を紹介することでしか出せないと思っていたけれど、最近はその土地や環境がもたらす空気感も、クリエイションとして誌面に閉じ込められているのではないかと思うようになった。のびのびと自由に作られている ZINE は、そういう場所から届く。
COLLECTIVE ZINE REVIEW #35
びちゃ『AKUBI』
47都道府県の中でも、福岡から届く ZINE が結構好きだ。福岡の人の感覚が好きなのかもしれない。そんな福岡は、「とにかくおいしいものがたくさん!」と教えてくれたのは、イラストレーターのびちゃさん。ゆるいイラストを得意にしているということもあって、びちゃさんの ZINE 「AKUBI」は、まさにその名の通り「あくび」をしている40人のイラストが一言コメントと合わせてゆるく紹介された1冊。だいたい A7 くらいだというサイズの色紙は角丸にきれいに落とされ、リングで綴じられている。その自由なスタンスに一瞬で憧れた。
ただ、この「ゆるさ」というのはパッと見るとラクでカンタンそうに見えるけれど、実はとてもむずかしい。根っからの性格も大事だし、暮らしている環境も大事だし、関わるひとたちの影響も大きいと思う。ただただゆるめて、ゆるくなるものではない。そう考えると、東京という場所ではゆるい作品は生まれにくいなと思ったりもする。田舎過ぎては摩擦も生まれず「作ろう」という気が湧きそうにもないし、となると福岡あたりはちょうどいいのかもしれない。海と山がすぐ近くにあって、新鮮でおいしいごはんがあって、明るく元気な街。温泉も近くて、カルチャーも充実してる。晴れた日曜日、いまにもどこかから誰かのあくびが聞こえてきそうだ。気持ちよさそうに伸びをして、心とからだの健康を確かめて、今日も歩く。
びちゃさんのあくびに込められた、手のひらサイズの癒しの物語。1枚めくると1つ、肩の荷が降りていくような感覚。
少しだけ都会の喧騒に疲れたひとたちのもとに届いたらいいなと思う1冊でした。レビューを書き終えたらなんだかあくびが移ってしまった。あ~あ。
レビュー by 加藤 淳也
---- 以下 ZINE の詳細とそれぞれの街のこと ----
【 ZINE について 】
今回の作品はあくびをしている人、40人を描きました。ちょっとしたストーリーもあって、ほっこりします。手のひらサイズのかわいい ZINE です。
🙋♂️ 記事がおもしろかったらぜひサポート機能を。お気に入りの雑誌や漫画を買う感覚で、100円から作者へ寄付することができます 💁♀️