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風のつぶやき #03 「ライブペイント」 について | 小田佑二

実はライブユニットなるものをやっている。活動期間はもう5年目になる。

ODANEEV(オダニー)
小田佑二(Paint)と NEEVO(Sound)のユニット。音とペイントによる即興的なライブの探究を目指し、深く思考する事を捨て、決して無理をせず、各々が好きなようにやった結果、偶然的にいい感じになる瞬間を待ちながらゆるくやっています⚡︎⚡︎
【 youtube 】
https://www.youtube.com/@odaneevofficial6469
【 Instagram 】
https://www.instagram.com/odaneev

よくオダニーボと呼ばれる事もあるがオダニーが正式名称。
未来都市をテーマにノイズ音に合わせて絵を描いている。PC 上で組み合わされた音はスピーカーから流れた時にはじめてその造形が現れる。簡単に言えばスピーカーから流れるまでどんな音か NEEVO 自身もわからない。なので僕もわからない。聞こえてきた音に合わせて筆を動かすというスタイルだ。なので、打ち合わせもあまりしないし、本番であり練習でありという感じでゆるくやっている。

やろうとしたきっかけは2017年の京都。
あるグループ展に参加したときのイベントで、ギターとペイントのライブユニットのパフォーマンスを見た事だった。たしか30分のパフォーマンスだったと思う。音とペイントのライブはそれまでにも見ていたが、彼等のライブを見て「楽しそう!!俺もやりたい」と直感的に思った。イベント後にそのペインターの人仲良くなり、「俺もああいうライブペイントをやってみたい」と話したら「やりなよやりなよ」と言ってもらったので、東京に帰ってすぐに NEEVO を誘ったら「やろうやろう」となり、ODANEEV をはじめる事になった。

唐突な展開ではあったが、その頃イベントブースで短時間で即興的に絵を描くという仕事をしていて、それも多少影響してるかも知れない。
因みにそのイベントブースでは NEEVO の楽曲も流れていた。

それまでやっていたライブペイントは大体の制作時間が3時間~4時間とか。フェスになると開催期間中ペイントする事もあり、長い時間かけて絵を仕上げていた。長い時間かけて描く場合に重要な事は絵の変化や展開だと思っている。さっきのあの絵こうなったんだ!みたいな意外性が必要で、例えばフェスなんかだとお客さんはライブペイントエリアにずっといる訳ではなく、他のライブを見に行ったりする。1時間とか2時間後またライブペイントエリアに戻ってきた時に、想像以上に絵が変わっている、かっこ良くなっていたら、見た人は変化に驚きそれが感動に繋がるという具合だ。ただこれが非常に難しくて上手く行かない事があったりで苦労する。だから完成までの展開を意識しながら予め描く絵を練習したりもしていた。

また、イベントによってはお酒を飲みながら、ゆるゆるとライブペイントすることもあった。お客さんから描いてる途中に話しかけられる事も多くて、そこから仕事につながったり、友達になったり色んな出会いがあった。ライブペイントや壁画のように公の場で制作をする面白さはこういう部分にもあると思っている。特に僕は芸能人と同じ名前なので「YUJI ODA ライブペイント中」なんてキャプションあったりすると、よく話しかけられたし、その流れから同姓同名あるあるを話せば異様なスピードで仲良くなった。親に感謝しなければいけない。

最近思うのだが、小田佑二という名前だった事は人格形成にも影響していると思う。自己紹介の際に「小田佑二です」と言ってクールには決められない。小田佑二はそういう種類の名前ではない。「そうなんですよぉ、同じなんですよぉ」みたいなノリにならざる得ないと思う。「カンチ」から始まり「青島」経て「世界陸上」。その間に CM で「キターっ」とか叫んでたし、ものまねを見ても思うのだが、イジる要素が多すぎると思っている。だからクールや無愛想ではなく、「気になる事があったら聞いてくださいね」のスタンスを心掛けていた。織田裕二にも感謝しなければいけない。

話が逸れたが、
時間という点において ODANEEV は全く逆だった、時間が20分~30分と短いので展開は無く完成に向かっていく様子をそのまま見せる。音に合わせて描くので、予め練習もしないし、そもそも練習という概念が無かった。その代わり1年間、毎月第二火曜日、高円寺のアートホテルで ODANEEV ライブをやっていた。毎回30分のライブを二回やって、1年後にそのアートホテルでそれまでライブで描いてきた絵を中心に個展もした。プラスして他のイベントにも参加してたので、ODANEEV ライブの回数は増えていった。
音を聞きながら筆を動かしていると、ごく稀に自分の意識とは別で描いてる感覚になった。考えないで手だけ動かしていて、アスリートで言う「ゾーンに入る」状態に近いのかもしれない。こういう時に出来上がった絵は面白い作品になっていて、僕はこれを宇宙からのインスピレーションを受信したのだと結論付けた。
そうなると常に毎回毎回受信したいのだが、ごく稀に起こる事なので自分ではどうしようもなく待つしかない。ならばせめて確率を上げようと思い取り組んできたのが、受信してるフリをする事だった。これは ODANEEV を見にきてくれてる人に向けてではなく、たまに宇宙からインスピレーションを送信してる何者かに向けてだ。態度で示す事により送信側にあいつは受信拒む事はしない、むしろ待っているという事を知ってもらうのが狙いだ。そして、降りてくるたくさんのインスピレーションを体全体で浴びたいと思っている。

ODANEEV をやり出してから、偶然できた・できてしまった線に対して即興的にリアクションする事が上手くなったと思う。時間の制約ができたことで、絵にスピード感と勢いが出た。
今描いている花のシリーズも ODANEEV をやっていたから出来たシリーズだと感じている。ほぼ思いつきで始めたライブユニットだけど、やってきた成果が出てるのが嬉しい。NEEVO にも感謝しなければいけない。あとはインスピレーションが降りてくるようになれば最高だ。今のところ確率は上がってないように感じる。ただこれからだと思っている。

いい絵を描くためにやれる努力はしていきたい。



絵描きの小田佑二による連載『風のつぶやき』では、絵にまつわる自分事をご紹介します(「風のつぶやき」とは父が発行していた家族新聞のタイトルです)。

小田佑二
秩序ある即興のパターン化をテーマに、見た・聞いたことからのインスピレーションや情景を線や面の構成で表現している。 六本木アートナイト、GOOUT CAMP、FUJI ROCK FESTIVAL など、イベントでのライブペイント、ペイントワークショップや国内外での壁画制作・作品発表をはじめ、書籍、音楽、ファッションなど様々なジャンルのアートワークを手がける。
https://www.instagram.com/odarian

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