三嶋さつき 連載 『ひびときめき、きょうてりやき』 〈39〉
2022/03/12
土曜日
ばたばたと足掻いているうちにすっかり土曜日になった。
朝、7時過ぎに目が覚める。
とってもいいお天気で、春を通り越して初夏みたい。
花粉もよく飛んでいるのか、鼻がむずむずする。
今日から、鎌倉のギャラリーJohnさんで個展がはじまります。
犬連れでもOKなお店だということで、初日だし森も一緒に出かけることにした。
今、人の流れが途切れてゆっくりとした時間が流れているのでこの日記を書いている。
久しぶりに会う友人や、偶然通りかかったご近所さん、さまざまな方が見にいらしてすごくたのしい時間だった。
たまに犬連れでいらっしゃるお客さんもいて、賑やか。
とってもありがたい時間だった。
あるお客さんに、「色はすごくビビッドでつよく、元気の出るような印象なのに、描き方やモチーフが優しいから、どこかあたたかい気持ちにもなって不思議ですね」ということを言っていただけて、とても嬉しかった。
そのバランスは意図してやってきたことではないけれど、だからこそそういうふうに捉えていただけたことが、すごく嬉しい。
明日からも生きていけそうです。
何よりも、うちの犬が人気者でした。
きっと今日は大いびきをかいて寝るんだろうな。
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2022/03/16
水曜日
7時前に一度目が覚める。
なんとなく、曇っているような気がする。
いま、朝ドラが佳境で毎日見逃せない。
るいと安子のあいだにある誤解は、あと1週間でどうなるんだろうか。
若い頃の勇ちゃん(村上虹郎さん)が老人になり、ちがう俳優さんが演じられていて最初は「別人…」という戸惑いがあったのだけれど、声を出された瞬間からあの勇ちゃんだった。俳優さんって、すごいなあと思った。
個展が始まり、仕事のこともすこし落ち着いているタイミングなので気持ちが軽やか。
この展示では、自分の力不足やどうしようもないやるせなさやちょっとした苛立ちを1人で感じてしまって、気持ちが落ちることがなんとなく多く。
かといって逃げても仕方ないので、そんな自分と向き合うしかないということもあって。
後半の数日間も、くるしいなりに楽しめるといいなあと思っています。
いつものように、いぬの散歩をしながら空気を吸い込んでみたら、すっかり春のにおいになっていて、「おっ」と思った。
こういう日々のちょっとした「おっ」を、積み重ねてなにかまたかたちにできるといいなあと思う。
道端の野花もすこしずつ咲き出した。
今日は午後、都内で新しい仕事の打ち合わせがあり、1週間ぶりに電車で出かける。
これまたありがたい、そしてうれしいお仕事。
とりあえずできた暁には、まず仲間たちに報告しないと!と、張り切っています。
大変なこともありそうだけれど、ひとまずはたのしみ。
打ち合わせの後は、赤坂でがんばっている友だちに声をかけてちょっとだけお茶をした。
うー。すっごくたのしかった。
帰り道の夕焼けが、きもちよかった。
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2022/03/17
木曜日
8時ごろ目が覚める。
まぶたが重く、二度寝する。
昨日の夜、大きな地震が起きた。
浅い眠りに入っていたときで、しばらくして部屋が大きく揺れているのがわかった。
爆睡しているいぬを抱きかかえて、ベッドの上で伏せることしかできなかった。
ひさしぶりに、おそらく3/11以来に、すごく怖かった。
被害も出ているそう。
どうか、東北の皆様がすこしでもはやく穏やかに過ごせますように。
天気は良かったので、重たいからだをひきずりながらいぬの散歩。
空気の匂いが、春くさい。
春のにおいって、ちょっと濃ゆくてくさい。
なんだろう、植物や生き物が冬眠から覚めて活動し始めた、むはっとしたにおいなのか。
それも含めて、すき。
午後は、いぬを連れてJohnに向かう。
今日の森も大人気。
スタッフさんとも、森を介していろんなお話ができるような気がして。
最初は緊張してしまってたのだけれど、森のおかげでゆっくりお話もできるようになった気がする。
とってもうれしい。
もり、ありがとう。
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2022/03/18
金曜日
7時半にすっきりと目が覚める。
カムカムが佳境です。
外は肌寒く、どんよりと曇っている。
午後の在廊の前に横須賀まで車を走らせる。
横須賀美術館で開かれている、ミロコマチコさんの個展「いきものたちはわたしのかがみ」を観に行きました。
ああ、すんばらしかった。
観に行ったあと、ギャラリーに着いてから忘れないようにとメモしたことをここに書きます。
特に近年の作品はまるで、古代の壁画に描かれてあるような、すこし神々しいもののようにもかんじるような。
絵から発せられるパワーに、いつも圧倒される。
サイズもふくめてものすごい圧力を感じた。
ああ、げんきがでた。
寒い雨の日に観に行ったので、館内も思ったよりも空いていてとっても見やすかった。
晴れた日にも、行ってみたいなあと思いつつ。
ミロコマチコさんはずっと好きな作家さんだけれど、10個くらいしか歳が変わらないのか。
そう思うと、わたしは10年後どんな絵を描いて、なにをしてるんだろうな。
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