うれしい庭 #5 「車窓の蛾」
友人と長瀞に出かけた。帰りの電車でボックス席に座り、旅の疲れのせいか三人とも黙ってぼんやり外を眺めていた。
電車が発車すると同時に、車窓に一匹の蛾がぴとっととまった。
都会の電車と違って緩やかな走行とはいえ、かなりの抵抗を羽は受けてしまっている。
羽が風を受けてひらひらしている、足が曲がっちゃいけない方向に折れてしまいそうだ。しかしその蛾は車窓に張り付き、乗車し続けた。
人間だったらたったの1秒も耐えられないのに … と蛾の胆力に感心してしまった。
数日後、フラワーしげるさんの短歌集「世界学校」刊行記念イベントに行った際にも同じようなことが話題となり、短歌にもなっていることがわかった。
『立った状態から身長の二倍ジャンプできる者はいない全人類が猫に劣る』
フラワーしげる(世界学校)
二倍ジャンプできないだけで全人類が猫に劣ってるなんて…言い過ぎでは?
と心の中で思わずにはいられない。が道で猫を見かける度にこの短歌を思い出す。動物の面白さを発見しそれを歌にするってなんか素敵だなと思った。わたしも電車で見かけた蛾のことを歌にしてみようかな。
『走る車窓に1秒も張り付くことができない全人類は蛾に劣っている』
うーん。真似したくなってしまうね。
歌にしたくなる気持ち日々探していきたい。
おしまい
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