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COLLECTIVE レビュー #60 TARP『TARP vol.3』(東京都)

COLLECTIVE レビューも最後です。全タイトルをひとりでレビューするというのも最初で最後。大変だったけど、参加者のみなさんのお礼のメッセージを通じて、今回のレビューが新たな創作のモチベーションになったり、自信をなくして塞いでいた気分を明るく照らしたりしたのだと知って、僕自身もうれしくなりました。やってよかった。おそらく、60タイトルのレビューを全部読むと、ZINE に限らず、創作をする上で大切にしなければいけないことっていうのがなんとなく見えてくると思います。その ZINE に対する興味のあるなしに関わらず、いつか全部読んでもらえたらうれしいです。
 
今回、僕の中ではっきりしたことがあります。
 
ZINE とは「おまもり」のようなものであるということ。
 
これは、今年の COLLECTIVE での新しい発見でもあり、いまぼくが思う ZINE のとりあえずの正解な気もします。誰かにとって(特に自分にとって)よい方向に作用するもの。持っていると豊かになるもの。信じているとすこし楽になったりするもの。それ自体が食べれたり、着れたりしないけれど、あるとないとでは少しちがうくらいの。誰かにとっては紙切れでも、ぼくには大事だったり。そういうことでいいと思う。
 
そして、つまりそれってアートもそうなんですよね。別にそれでお腹がいっぱいになるわけではないけれど、持っていると暮らしが少しだけ明るくなる。想像力がいつもより働いて自由になれる。絵を描いたり、写真を撮ったりって、生きる上でそんなに必要とされないのだけれど、はるか大昔の時代から世界中にあって、いまも古びれることなく、しっかりと呼吸をしている文化でもあります。金持ちとか貧乏とか、肌や目の色も関係なく、平等に降り注ぐアートという存在。感性の雨。
 
ZINE はそんなアート的な魂をぎゅっと閉じ込めたおまもりなんじゃないかとだんだん考えるようになりました。
 
COLLECTIVE ZINE REVIEW #60
TARP「TARP vol.3」
 
最後に紹介するZINEは「TARP」。今年で3年目。3冊目となる vol.3。10人の表現者のさまざまなアプローチの作品を1冊にまとめた作品集のような ZINE。意味としては日差しや雨からぼくらを守る布状のもの=タープだ。イラストレーションやアートというカテゴリーに捉われることなく活動する、ある種、異端とも言える個性豊かな作家たちの感性の雨を、そっと受け止める存在とも言える。

もっと言えば「居場所」だ。この下でなら好きにやっていいよという声が聞こえてくる。それは創作を続けるひとにとっては大事な存在。苦しい時、辛い時、大丈夫だよって言ってくれる場所があると、ずいぶん救われるし、パークギャラリーもそういうギャラリーでありたいと思っている。
 
ちなみに vol.1 はモノクロのドローイングをテーマに5人の作家が参加。その5人が固定のレギュラーメンバーとなり、vol.2 のテーマ「ストーリーライン(物語)」では作家が8人に。多少の流動性はありながらも、vol3 (今作)にしてメンバーは10人になった。2年前に比べると倍。テーマは「肖像」。ポートレートをお題に、それぞれが考える「肖像」が複数の作品で構成されている。

TARP の下(もと)であれば自由。そう思いながら作品を眺めてみると、バラバラのはずの作品が1つの大きなかたまりになって見えてくる。1つの意思をもった1つの生命体のような。その得体の知れない謎の「強さ」が好きで、毎年たのしみにしているぼくはファンの1人でもある。


ちなみにパークギャラリーでは毎年、この ZINE「TARP」の原画展を開催している。今年も3回目の原画展が、今週9月28日(水)から開催される。
 
この時ばかりと、TARP からはみ出して、自由奔放にのびのびと呼吸をする作品たちが一堂にみられる集まりでもある。見応えはじゅうぶん。今から楽しみだ。

自分の繊細で傷つきやすいパーソナルな思いも、ZINE の中でなら発信できるというひと、たくさんいると思う。そんな ZINE をこの先も、ぼくらも「タープ」みたいに覆って、守っていきたいなと思っている。
 
COLLECTIVE は終わるけれど、パークがある限り、ZINEというメディアの可能性は信じ続けるし、そこから派生する表現の可能性も大切にしていきたいと思う。
 
夏だけじゃなく、毎日が COLLECTIVE だという気持ちで、COLLECTIVE を終わらせたいと思う。
 
今日までレビューを楽しく読んでくれたみなさんありがとうございました。
 
月並みな言い方になりますが、
 
COLLECTIVE は不滅です!
 
おわり
 
つかれた。

レビュー by 加藤 淳也


---- 以下 ZINE の詳細とそれぞれの街のこと ----

【 ZINE について 】
TARP vol.3のテーマは『PORTRAIT/肖像』です。
2022年、TARPは下記のようなことに関心があります。

・人の姿を絵にするとき、描く人は何を考え、どう動くか。
・その絵の中に居る人は、何を見て、何を思っているか。
・その絵を見る人は、どこに注目して、何を感じるか。

肖像というテーマは、いつまでも興味深いと思います。

タイトル『TARP vol.3』
価格:¥1,500(税込)
ページ数:66P
サイズ:A5
【 参加者 】 ナカムラミサキ、春日井さゆり、海老沢竜、須藤はる奈、ルイゾナ、中村美和子、生きるのだ、半袖、ミトミルルイエ、霜田哲也
(*掲載順)

作家名:TARP(東京都杉並区)
<複数人の絵が載っている ZINE>として2020年スタート。 いろいろな縁でつながった人たちが参加しています。年1回ペースで刊行中。
https://tarp.stores.jp
https://www.instagram.com/tarp_2020
https://twitter.com/tarp_2020

【 街の魅力 】
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