- lunar mare #01 - by 星野佑奈
地下を走る電車に長く乗ると外の景色が見れないからか気持ちが重くなる。
ホームに降りて階段を上がって地上に出たら、気分がすっきり晴れたような気がして嬉しくなったがすぐに雨が降ってきた。
久しぶりの桜新町、10年ぶりかな。
雨だけど傘を持たずに出てきてしまった。
待ち合わせ場所まで少しだけ急ぐ。
美術館の前ににももちゃんがいる。
「お待たせしました」と、本を読んでる彼女に声をかける。
にこっと笑って「ゆなさん髪伸びましたね」と言われる。
前会ったのって3月かな?
「夏って毛が伸びるの早いから」と少し笑いながら返す。
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美術館を出た後、やっぱり雨は止まず、どこかで食事をすることにしようと話した。
適当に大きな道路沿いを歩いて行くと、ロイヤルホストを見つける。
「あ、ロイヤルホストあるやん」
「いいですねえ」
意外な返答だと思った。お店に入ることに。
そういえばロイヤルホストって行った事がないかも。
誰かと一緒にいないといつもの自分だけでは違うことに触れれない時もあるな。
でかい道路沿いはそわそわするけどでかい道路沿いのファミレスはわくわくする。
道路側の席に案内されてなんだか私はご機嫌だった。
共通の知り合いの話や北海道の話をしてもらう。
ももちゃんがアイフォンで音楽の確認をするというので
その間私、は美術館で買ったポストカードに友達に宛てた手紙を書くことにした。
財布に切手を入れるようにしてる。
数枚ある切手の中からももちゃんに「どの切手が合うと思う?」と聞いて、
選んでくれた切手の柄に対して「なんでそれにしたの?」と聞くと
「うちわの柄っぽいから」と言われた。自分とは違う切手を選んでくれたのでおもしろいなぁと思ってそれを貼った。
彼女はご飯をゆっくり食べる。
コーンスープでさえゆっくりスプーンで掬うって飲むから
なんだか可愛らしいなぁと思って眺めてしまった。
人のこと好きになるのってこういう部分かなぁと思って。
食事が終わって地図もちゃんと見ずに目的地の方に曖昧に歩いていく。
知らない町の住宅街に迷い込む。
途中、ロープで囲ってある雑草がとても自由に咲いている場所があった。
私はそれを見つけて嬉しくなって駆け寄った。
「楽園や~入りたい」と言うと「だめですよ」とにっこり笑いながら言われた。
夕暮れの優しい光に包まれて植物が伸び伸び育っているのを見るのが嬉しいと思った。
さらに歩くと鳥たちがまとまって同じ方向に飛んでいった。電線にたくさんの鳥が止まってる。
鳥はどこに帰ってくんだろうか。
更に気になる方に進んでいって住宅街に迷い込んでいく。
もうすっかり夜になっていた。
そろそろ目的地を確認して軌道修正。
環七にぶつかった。ここをまっすぐ下っていくと新代田駅に着くなと思ったので、
ここでももちゃんと別れることにした。電池の消耗の早い私のアイフォンの電池は切れていたしまた小雨が降っていた。
雨に濡れながら、もう会えないひと、会わないひとたちの顔を思い出してた。
そうするとすぐに悲しくなるけど今日見た夕暮れの光の中で踊るようにのびのびと咲いていた
植物たちを思い出すと希望を感じた。
安酒を飲みながらそのまま環七を歩いて新代田駅を目指した。
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星野佑奈・写真展 『LUNAR MARE』 開催
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