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issue 40 「運命を決める、ワンプッシュ!」 by ivy

久々に訪れる場所へ来て、真っ先に意識がいくもの。

私の場合は、匂いだ。

毎年、必ず京都へ行くけれど、駅に着いたら必ず「京都の匂い」を思い出す。タイも台湾もアメリカもキューバも旅したことがあるけれど、それぞれの国に匂いがある。何の匂い、というのはわからないし、人によっては気にも留めないくらいの些細な匂い。ただ、久々に訪れて鼻腔に入ってきたら「ああこれこれ!」ってなる。無意識レベルで脳に割り込んでくる、そして頭に焼き付いて離れない。匂いは、そういうものだ。だから、場所はもちろんのこと、人間の匂いも会う相手にとって強い印象を残す。その意味で、香水は最も「重要なおしゃれ」だと思うんだ。

さて、前置きが少し長くなったけれど、今日はそんな香水の話。私も香水は使うけれど、初めて使う日、やけに緊張したのを覚えている。ワックスを使いだした日、お年玉で買ったマーチンを履いた日、ファッションにまつわる記念日は数多くあれど、香水を初めて吹きかけたあのひと押しは特別だ。

高校生の時、当時の彼女と初めてデートをするとき、震える手でワンプッシュ!青いハート型のガラス瓶に入った『ライオンハート』のやつだ(懐かしい!)。相手に認知される「自分の匂い」を決めるなんて、とっても怖い。自分の匂いを自分で正確に掴むことは難しいし、相手が私からどんな匂いがしたら違和感を感じないか … そんなことわかるはずもない。香水は、自分が相手からどう見られたいかとどう見られているか、のバランスをとりながら選ばなきゃ、って。当時の私もなんとなく理解していた。自分を客観視することがこれ以上なく苦手、更に十代だった私にはあまりに高いハードルだった。

時を経て、今選ぶ香り。実は、これがあまり変わらない。木とか花とか、自然のもの、それでいて果物とかハーブみたいな食べ物ではないもの。あんまり輪郭がはっきりしすぎてしまうと、私とその香りの主が結びついてしまうから、掴みどころがないものを好む。

基本的には好きなもの、好きな香り、と意識している。ところが、無意識レベルで私自身のイメージが特定の何かに意図せず結びつくことを嫌がっている。だから、そういう選択になるんだ。さて、あなたはどんな香水を選ぶ?って、結構話のタネになると思うんだ。久々に会う人と、今までと違う香りがしたら、話に出してみてもいいかもしれない。


イラスト:あんずひつじ

ivy(アイビー)
会社員で物書き、サブカルクソメガネ。
自己満 ZINE 製作や某 WEB メディアでのライターとしても活動。創り手と語り手、受け手の壁をなくし、ご近所付き合いのように交流するイベント「NEIGHBORS」主催。日々出会ったヒト・モノ・コトが持つ意味やその物語を勝手に紐解いて、タラタラと書いています。日常の中の非日常、私にとっての非常識が常識の世界、そんな出会いが溢れる毎日に、乾杯ッ!
https://www.instagram.com/ivy.bayside


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