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issue 01 「さあ、立つんだ。 我らがヒーロー・ボンドラチェック!」 by ivy

 

「あなたのヒーローは誰ですか」

結構この話題って、男の子なら何歳になっても使えるんじゃないか。

言葉の定義自体は、すごく曖昧なんだけど、「ヒーロー」というカタカナ語は、恐らくかなり小さなころから一つの概念として各々の頭の中に醸成されていたんじゃなかろうか。今回の主役は私のヒーロー、且つ、恐らく2020年に彼の話題をしている日本人は私以外にいないであろう、とあるチェコ国籍の男性についてーー

ピーター・ボンドラチェック

私が少年時代を過ごした2000年代は、空前の格闘技ブーム。小学生の頃、PARK GALLERY の目の前にある公園で近所の兄ちゃんと「 K-1ごっこ」だの「 PRIDE ごっこ」をしていたなぁ、懐かしい。

さて、当時の私は小2にして格闘技ヲタク。加齢臭漂う秋葉原の本屋でスポーツ雑誌コーナーに向かい、「格闘技通信(通称格通)」や「 GONG(通称ゴン格)」に齧りついていた。当時まだ日本での認知度はゼロに近かったUFC(アメリカの総合格闘技団体)のランキングまで頭に入っていたのだから、多分相当周囲からは気味悪がられていた。そんな中で私はある選手に夢中で、彼は間違いなく、私のヒーロー。K-1 チェコ代表、ピーター・ボンドラチェックさん!

ググっていただければわかるんだけど、ハードボイルド映画から飛び出してきたような風貌が強烈。もう笑っちゃうくらいのバッキバキボディ。北斗の拳でもここまで、ってくらいの。そして、オールバックの様になりようは、まるでタイタニックのディカプリオ。今見てもうっとりしてしまうくらいの男前。

ニックネームは……

鋼のダンディズム!

しびれるぅ。おれに触れたらやけどするぜッ!

湿気た煙草吹かしながら、キザなセリフ並べてそう。すれ違うターゲットを一瞬で打ち抜いて去っていきそう。間違いなく創作の世界では強キャラの風貌なんですよ。ところがどっこい、私の記憶が正しければ、ボンドラチェックさんが勝ったのを見たことがない。毎回ド派手にぶっ飛ばされる。これがまた、アクション映画で強キャラが狙撃されたシーンみたいに、無駄に絵になるのがすばらしいんだけど、彼の弱点はずばり、耐久力と防御力!

……って、おい!どうした鋼のダンディズム。

鍛え上げられた腹筋は逆に衝撃をダイレクトに受けてしまうらしく、痛みにお腹を押さえたところ、シャープな顎にパンチをもろに食らい、そのまま失神、というのがお決まりパターン。漫画の四天王最弱キャラでももうちょい耐えるよなぁ、と思いながら、ついつい応援してしまう。そんな奇妙な存在に夢中で、なんと今現在も、しぶとく彼の近況を追っている。

なんで彼を応援していたのか。今考えてみると、小学生になってから、ちょっと弱い選手、ダメそうなキャラクターを好きになっていった。幼稚園の頃は、それこそ無敵のヒーローに憧れていた。剣道をやっていて何度やっても勝てない年上の子がいたり、小中高通してクラスに心を開ける友だちができなかったり、苦手なことがあって自分だけできないことがあったり、なんやかんや思い通りにならないことというのを経験するようになってから、変わっていったのかなあ、なんて思うんだ。
 
「あなたのヒーローは誰ですか」この話題でいつまでも盛り上がれるのは、憧れの存在や大好きな誰かを語ることで、知らず知らずのうちにその人を紐解けるからかもしれない。

遠く離れた、チェコで、今も私のヒーロー、ボンドラチェックさんは現役で戦っている。相変わらずのブンブン丸ぶりで、買ったり負けたりしながらも、どこかのマイナータイトルを獲得したらしい。


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ivy(アイビー)
会社員で物書き、サブカルクソメガネ。
自己満 ZINE 製作や某 WEB メディアでのライターとしても活動。
創り手と語り手、受け手の壁をなくし、ご近所付き合いのように交流するイベント「NEIGHBORS」主催。
日々出会ったヒト・モノ・コトが持つ意味やその物語を勝手に紐解いて、タラタラと書いています。日常の中の非日常、私にとっての非常識が常識の世界、そんな出会いが溢れる毎日に、乾杯ッ!
https://www.instagram.com/ivy.bayside

イラスト:あんずひつじ
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