見出し画像

EVERYTHING FLOWS #93 by illustrator はるやまひろし

「とても小さな音にも耳を傾けてほしい。」

・・・

ARTIST:FLORIST
ALBUM『FLORIST』
SONG『SPRING IN HOURS』

● REC / 2023.3.31(FRI)

🎧 Spring in Hours

コオロギの羽音、川のせせらぎ、鳥のさえずり、柔らかい声と楽器。宙を舞うシンセサイザーの音。それぞれがやさしく重なり合う。その世界ではノイズだって綺麗でやさしい。その世界はこの世界でもある。

FLORIST(フローリスト)は2013年にエミリー・スプレイグ一を中心に結成されたアンビエント・フォークバンド。2016年に『BIRDS OUTSIDE SANG』でアルバムデビュー。2017年に 2nd アルバム『IF BLUE COULD BE HAPPINESS』を発表。

そして2018年発表の前アルバム『Emily Alone』は、私的に思い入れのあるアルバムで、連載記事でも紹介しました。

アルバムのタイトル通り、エミリー・スプレイグ一人で作った、悲しみから癒える為の慎ましやかな鎮魂の音楽と言えるアルバムで、細く繊細ながら凄みすら感じる作品だった。

今回のアルバムは再びメンバーが集まり、エミリーを中心とした繊細な音作りは変わらないけど、何処かずっと穏やかだ。曇り空から射しこんだ光に顔を上げた瞬間が収められていたのが『Emily Alone』なら、そのまま一歩前に踏み出した瞬間を映したのが、バンド名を冠したアルバム『FLORIST』だと思う。

🎧 Red Bird Pt. 2(Morning)

前作と今作を聴き比べると、独りで作ることと、仲間と音楽を作ることの両方に良さがあり、作ることそれ自体を祝福しているようでもある。今作の穏やかさはとてもいい。

繊細な魂や歌に心を奪われながら、音響や多彩な楽器の音も聞き逃せない。ギターをはじめとするオーセンティックな楽器の音の鳴らし方もセンスの良いし、エミリーのソロでも活躍するシンセサイザーには聴きいってしまう。フィールドレコーディングによる虫や草木、風の音もバンドの演奏と調和している。とても小さな音にも耳を傾けてほしい。

🎧 June 9th Nighttime

それぞれの要素をまとめるのはタフな作業が伴ったとおもうけど、アルバムを通して丹念にやりきったことが伝わる。バンドの絆を感じるよね。

FLORIST のチャームポイントであるエミリーの歌も勿論大きいだろう。とても柔らかい歌声の持ち主だけど、頑なな強さがある。今この場所、時間の音楽をしっかり書き留めているのが伝わる。

自然な成長しながら身の丈に合ったやり方で、小さくて大きいことを「FLORIST」で成し遂げているんじゃないかな。

多くの人の目にすぐ届かなかったとしても、蒔かれた種はしっかりと大地から芽を出す。

🎧 Sci-fi Silence

🎧 Shadow Bloom

アルバム『Emily Alone』より。アルバムの中でも特に穏やかな曲で、ニューアルバムとの繋がりを感じる曲。新たな一歩への気付きが沢山あったように聴こえる。アルバムを続けて聴いたり、ゆっくりミュージシャンを追っていると、ドキュメンタリー映画を観ているような気持ちになることも多いんだよね。ちょっとずつ前へ。


次回もお楽しみに!

この連載では、絵を描くことを音楽で言う『レコーディング』と称するイラストレーター・はるやまひろしによる、日々のドローイングイラストの記録(REC)を毎週紹介していきます。ライブハウスに貼りだされているチラシのようなイメージで、音楽やバンド、あらゆるサウンドからインスパイアされた、妄想爆発のアートワークが日々描かれていきます。音楽への愛が溢れるテキストと合わせてお楽しみください。

はるやまひろし
静岡県生まれ、千葉県育ち。 好きな音楽のアートワークと Tシャツに憧れてイラストレーターの活動をはじめる。シンガーソングライター気分で絵を日々レコーディング中。
https://www.instagram.com/hiroshi_haruyama

🙋‍♂️ 記事がおもしろかったらぜひサポート機能を。お気に入りの雑誌や漫画を買う感覚で、100円から作者へ寄付することができます 💁‍♀️