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『わたしのつれづれ読書録』 by 秋光つぐみ | #06 『ペイネ♡愛の本』 レイモン・ペイネ

#06
2023年10月26日の1冊
「ペイネ♡愛の本」レイモン・ペイネ 著 / 串田孫一 解説(みすず書房)

本日ピックアップしたのは、レイモン・ペイネ。
以前パークで開催した『ほどく』展にて『つぐみの本棚』として参加した際に、選書した本です。

装丁やタイトルからも、一目で伝わるように、これは紛れもなく愛の本。そこいらに小さく散りばめられた普遍的な恋のお話、愛の讃歌。
この目で見たり、この手に取ることができたらどんなに良いかと身悶えするほどの儚さを帯びながらも、胸の奥から迸る情愛を、メルヘンにラブリーに描いた「愛の本」です。

レイモン・ペイネは、1908年パリ生まれの画家であり、漫画家。1942年から雑誌「リック・エ・ラック」で連載された代表作『ペイネの恋人たち・シリーズ』で広く知られました。
5歳上の妻とペイネ自身をモデルに描かれたという「ペイネの恋人たち」には時を経て国を超えても、この胸に届く"キュン"が目一杯、詰まっています。

ペイネの描く恋の物語たちは、公園、街、家庭で繰り広げられる恋模様であり、ときめく音によって奏でられるハーモニーであり、季節や天気とともに、その形もめくりめく変わったりします。

時に人魚が主役になったり、天使が登場したり、恋する2人の想像の世界は彩り豊かで、まるでおとぎ話。恋をする人ならば、抱いたことのある感情を的確に捉え、見る者から「そうなの!」と共感を得ながらも、ファンタジックでキュートな表現を魅せてくれるのだから、恋している自分に酔ってしまうほど。
あるいは、こんなチャーミングな空想の世界に飛び込むことができるならばと「恋に恋してしまう」くらいではないでしょうか。

しかし、恋する2人はハッピーに満ち溢れているだけではありません。大雨と共に涙を流したり、たくさんの針が刺さったハートを抱えていたり、トゲを張り巡らして相手に近づかれないようにしたり、恋の苦しさ、切なさ、寂しさも表現してみせます。

2人の心を敏感に捉える繊細さ、それを1枚の漫画にユーモラスでドリーミングに描写する豊かさ。この本を眺め終える頃には、レイモン・ペイネにいつの間にかゾッコンなのです。

解説の串田孫一氏の言葉に

この本を見ていると、自分ではとうてい考えもつかないような場面が頁をめくるごとに出て来て、これこそ最上の贈物

とあります。

多くの言葉を必要とはしない、人の気持ちを事細かに説明するなんて野暮なことはしない。この本をめくりながら、遥か奥深くまで恋への想像を繰り広げ、なんだかやさしく満たされる。それができれば、充分にしあわせだなあと、そう思わせてくれる「愛の本」です。

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【 わたしのつれづれ読書録 】
古本屋兼ギャラリーの創設を目指し、パークギャラリーと並行して古本屋でも修行中の秋光つぐみ。
『わたしのつれづれ読書録』はパークスタッフのつぐみが出勤日(主に木曜日)に「今日の1冊」を紹介するコーナーです。
パークで開催中の展示テーマに寄せた本、季節や世間のムーブに即した本、つぐみ自身のモードを表す本、人生に影響を与えた本、趣味嗜好まるだしの本など‥日々積読が増えていく「つぐみの本棚」からピックアップした本をお届け。

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PARK GALLERY
木曜スタッフ・秋光つぐみ

グラフィックデザイナー。長崎県出身、東京都在住。
30歳になるとともに人生の目標が【ギャラリー空間のある古本屋】を営むことに確定。2022年夏から、PARK GALLERY にジョイン。加えて、秋から古本屋・東京くりから堂に本格的に弟子入りし、古本・ギャラリー・デザインの仕事を行ったり来たりしながら日々奔走中。
Instagram https://instagram.com/tsugumiakimitsu

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