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三嶋さつき 連載 『ひびときめき、きょうてりやき』 〈40〉

2022/03/29
火曜日



朝7時半ごろ起き上がる。
今日は曇っていて、冬みたいに冷える。
9時から、予約していた森(いぬ)の眼科に行く。
家からも近いし車で行きやすい。
はじめての場所だったけれど、感じのいい方が多くて安心した。

森は、うちに来る前から多分、ずっと目の調子が良くなくて、充血したり目ヤニがついてしまっていたりするのが気になっていた。
まだ6歳だし、これから先の人生(いぬ生)もできるだけ長い時間、じぶんの目で世界を感じていてほしいなあという気持ちが大きくて、個展も終わったし連れていってみることにした。

この思いは、2年前まで実家で暮らしていたランという黒ラブの子のおかげ。
ランも保護犬としてやってきた子だったのだけれど、歳をとってくる少し前に目が見えなくなってしまった。
走ったりあそんだりするのがすきで、人間のこともいぬのこともだいすきな優しい子だったから、不憫で仕方なかった。
歳をとってきて心臓が弱く、手術ができなかった。
目が見えない状態でも長い時間元気に生きてくれて、こちらもとっても救われたのだけれど。

根本的に良くするのは、手術するのが良いということだったので、いままさに頑張っているおおきいお仕事が終わって資金繰りができたら!と思っています。これが生活をするということだなあと感じる。


そんなことを思ったそばから、帰ってきたらいぬもわたしもぐったり疲れてしまい、午後は少しゆっくりすることにする。



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2022/03/31
木曜日


夜、久しぶりに映画を観たので(家で)メモします。
こういう時間って大事だよなあと、観たあとに思う。そして忘れる。

ドライブ・マイ・カー
最初の30分くらいが、どうしてもたるくて「これはわたしにはだめかもしれない・・・」と、心が折れかけていたのだけれど、タイトルバックが出てからぐっと映画の中に入っていけたような気がする。
「寝ても覚めても」がわたしにはどうしても合わないうえ、村上春樹の小説があまり得意ではない・・・というところでかなり不安だったけれど(村上春樹のエッセイはとてもすきです)。
三浦透子さんの役が、ジム・ジャームッシュの「ナイトオンザプラネット」のオマージュのようなものらしいのだけど、その情報を抜きにしても素晴らしかった。

映画にせよ音楽にせよ、表現にはいろんな好みや考えがあって。
最近ちらりと「湯を沸かすほどの熱い愛」に対する酷評なんかも目にしたりして、「そういう捉え方や意見があるのかあ〜」と。
(そんなに言ったらんでええやんと思うこともあるけれど)

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2022/04/02
土曜日


朝8時ごろ、のろのろと起きてくる。
いい天気みたい。
窓から見える森に山桜が何本か育っていて、よく咲いている。
ラジオで、今週末が見頃だということだった。

いぬの散歩コースに咲くソメイヨシノも二日前くらいに満開で、今は散るばかり。
少しさみしいような。
エレファントカシマシの「桜の花、舞い上がる道を」が頭の中で流れる。
桜が咲くといつも立ち止まって眺める場所があって、いぬを抱っこしたままそこでぼーっとしていると、近所のおじちゃんおばちゃんたちもやってきて、「綺麗ですねえ」「今が最高だねえ」と束の間のお花見のような気持ちになる。
この時間、一人と一匹なんだけどこの場所の一部のような気持ちになる。
なんか、いいよね。

ここ何日か、年始からの疲れがどっときているのか、こころがまったく晴れずで何をするにもだめだったし、何もしたくなかった。
こういうときは、とにかくからだを温かくして、美味しいものを食べたり、ただただゆっくりするのが良いというのが持論なんだけれど、休むわけにもいかず。
でも、昨日はほとんど何もしませんでした(お仕事先の人が見ていないことを祈っています)。
なんとか、締切の原稿一本だけ提出をした。
いやー、がんばった。

おかげで今日はちょっと元気な気がする。
人間って単純だ。

いぬの散歩から帰ってきて、昨日伸ばしてしまった仕事をぐっとやる。
そして、お送りする。ふうー。

目が疲れたけど天気はいいし、桜の見頃が今週末と言われてしまったからには。
いぬを連れて長めの散歩に行くことにした。
遠くに行かなくてもいいなあって思う景色がたくさんあることは、恵まれているなあと思う。
いぬが重たくて行きたかったところまでは辿り着けなかったけれど、気持ちが良くてすっきりした。

今日の晩ご飯は何にしようか。


三嶋さつき
イラストレーター、ペインター
http://www.satsukim.com

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