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【 完結 】 COLLECTIVE 2022 レビュー

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COLLECTIVE 2022 に全国から集まった ZINE を PARK GALLERY 加藤が1つ1つ向き合いレビューしていきます。まだ触れたことのないパーソナルな ZINE…
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#zine

COLLECTIVE レビュー #60 TARP『TARP vol.3』(東京都)

COLLECTIVE レビューも最後です。全タイトルをひとりでレビューするというのも最初で最後。大変だったけど、参加者のみなさんのお礼のメッセージを通じて、今回のレビューが新たな創作のモチベーションになったり、自信をなくして塞いでいた気分を明るく照らしたりしたのだと知って、僕自身もうれしくなりました。やってよかった。おそらく、60タイトルのレビューを全部読むと、ZINE に限らず、創作をする上で大切にしなければいけないことっていうのがなんとなく見えてくると思います。その ZI

COLLECTIVE レビュー #58 ZINEつくろうよ!『ONE DAY ZINE TRIP No.1』(東京都)

2018年から5年間、毎年甲子園のように続けてきた COLLECTIVE も今年で終わりだ。2、300冊くらいの ZINE に触れて、それらをこうして言語化してきた。とにかく言えるのは、ZINE というのは気軽で、その気軽さからプレーヤーも増えてきていて、その種類は千差万別だということ。クオリティよりも大事なのは中身で、それは作らされてるものであってはいけない。「好き」な気持ちが充満しているべきだし、ついつい衝動的に、動いてしまっているものであってほしいし。作ったあと、たくさ

COLLECTIVE レビュー #44 白湯 『グリンピースにマウスピースあなたのハートにダブルピース』(宮城県)

山形の片田舎で、“何者かになりたかった” 高校生のころ、ぼくはひたすら映画とテレビを見て、ラジオを聴きながら音楽を聞いて、バイト代で買った雑誌の数々と図書館から借りてきた舞台の戯曲を交互に読み漁っていた。まったく勉強もせず、学校では寝るか本を読むか。 相当鬱屈していたのだと思う。夏の暑い夜は、自転車で汗だくになりながら、遠い街までこいだ。雪の積もった冬の夜は、近くの美術系の大学の屋上に忍び込んで月と交信していた。当時山形では珍しかった「無印良品」のリングノートに詩を書き始めた

COLLECTIVE レビュー #26 リリー『Good day』(和歌山県)

毎年、こうしてレビューを書きながら、ZINE とは何か、というのをすごく考えてる。僕だけじゃなく、参加者も含めて意見の交換を行なっているうちに、だんだんと、ZINE とはどうあるべきかという研究は進み、見えてきた気もする。 その中で、実際、昨日、「こういう ZINE を作りたい」と思い立って、ZINE を作ってみた。テーマを1つ決めて、PC に保管していたたくさんの写真の中なからパッとテーマに合うものを引っ張り出して、デスクトップ上でレイアウトして印刷して折ってホチキスで留

COLLECTIVE レビュー #25 CHIHAYURI『23-24』(東京都)

ZINE のジャンルの1つに、「ガール・ジン」がある。女性学やジェンダー研究を進めるアメリカのフェミニストのアリスン・ピープマイヤーが 「ガール・ジン 『フェミニズムする』少女たちの参加型メディア」という本にもまとめているが、長い歴史と確かな実績を持つジャンルだ。ちなみに訳は野中モモさん。ZINE を語る上で欠かせない存在だ。   ここでかんたんに「ガール・ジン」を定義することは難しいけれど、女性の社会進出において自身の立場の向上(という言い方が正しいかはわからないけれど)の

COLLECTIVE レビュー #24 波入る宿『なみいるやど』(富山県)

毎年、「47都道府県」をキーワードに全国各地から ZINE を募集し、展示・販売するエキシビジョン COLLECTIVE。毎年、東京に集中するにせよ、全国から個性豊かな ZINE が集まってくる。地域性や県民性に期待してはじめた企画ではあったが、思いのほか、ローカリティは出なかった。大阪から届く ZINE は派手、とか、東北の ZINE は余白が多いとか、多少感じたことはあったけれど、今となっては大きな違いはないように思う。   とは言え、その土地でしか作れない、その土地なら

COLLECTIVE レビュー #23 YU TANAKA『Mood Swings』(東京都)

PHOTO ZINE と写真集の違いっていうのは言葉にするのはなかなか難しい。一般的に PHOTO ZINE は、写真集よりもステートメントが熟考される前の状態の冊子(写真業界ではダミーブックともいう)、もしくは直近の作品をまとめたポートフォリオ的な役割を持つ冊子で、比較的、コピー機やキンコーズで刷った紙を簡易的に製本したものとされるが、近年ではネットプリントで製本までを任せているものもある。ネットで注文したものなんて ZINE とは呼べない、という原理主義者がいるけれど、ま

COLLECTIVE レビュー #22 田中まりな『⋯』(東京都)

10代の頃は無印良品の茶色いリングノートがおしゃれだと思い込んでいて、よくそのノートに思いの丈や落書きを書いてた。たまにコンビニや図書館でコピーして友人に渡したりするのだけれど、見開きでコピーするとリングもスキャニングしてしまい、それがかっこいいと信じていた。ゼロックスがいいという噂も流れてた。   20代になると、ノートには罫線がない方がいいと思うようになるし、ノート自体がダサい物だと考えはじめて、日々の思いをパソコンにぶつけては印刷して、ホチキスで止めて持ち歩いてた。デザ

COLLECTIVE レビュー #21 INU HARUNA『ツクッタツクッタ』(埼玉県)

昨年より参加してくれている INU HARUNA さんの ZINE が届いた。自身のルーティンワークをイラストとグラフィックで紹介していた前作「ROUTINE」と同じ作家とは思えないくらい(いい意味で)自由な振り切り方で、手にした瞬間に思わず笑みがこぼれた。その時、その場所で、やれることをやる。これは2022年に発見した  ZINE を楽しんでいる人の定義だと思う。    「これもZINEなんですね」とお客さんは珍しそうにするけど、これこそ ZINE だし、こうありたい。むし

COLLECTIVE レビュー #20 gomm『GOMM PICNIC GUIDE』(東京都)

「自分の中に全くと言っていいほど持ち合わせていない感覚」を持っている人たちがいて、そういう人たちが ZINE を作っていたとして、ぼくらはそれにタッチした瞬間、その感覚がインストールされる。それは SNS とかではなかなか難しくて、エッセイのようなものでも難しく、ZINE がふさわしい。自分たちの考えや活動を「ZINEにする」というプロセスの中で抽出される、目には見えない「エッセンス」があって、それが手から目から伝わってくるからだと考えている。   映画「2001年宇宙の旅」

COLLECTIVE レビュー #18 牧角春那『公園のあの子』(東京都)

2020年にイラストレーターとしてのキャリアをスタートさせ、2021年に自身の描き溜めた作品をまとめた初のZINEを制作し COLLECTIVE にエントリー。そして今年も参加してくれたイラストレーター牧角春那さん。2年という短い期間で、このクオリティのイラストを描けるのかと驚いてしまったが、プロフィールを見ると多摩美出身で、MJ イラストレーションズにも通い、ザ・チョイスにも入選している実力派だ。納得。   昨日レビューしたマサキヒトミさんと先週まで一緒のグループ展に出てい

COLLECTIVE レビュー #17 秋光亜実 『TRIP』(東京都)

ぼくの好きな ZINE のジャンルの1つに「旅」系の ZINE がある。国内外問わず、パーソナルな視点で切り取られた街の風景、暮らしの延長にあるささやかなドラマ、光と影が織りなす時間や季節。その瞬間にしかない特別な時間が、写真や、時に言葉でつづられる「旅の手帖」。その旅先に行った気分になれたり、知らなかった街のことを知れたり、誰かの思い出の中にお邪魔させてもらっている感じが心地がいい。   今回紹介する ZINE も、旅の手帖的1冊だ。タイトルは「TRIP」。作者は金曜日のパ

COLLECTIVE レビュー #16 ショージサキ『ガール イーツ ガール』(東京都)

自身のイラストや写真はもちろんのこと、日々の日記やレポートなど、さまざまなスタイルの ZINE を見てきたけれど、毎年必ず「こんなジャンルのZINEもあるのか」と驚かされる。   中でも今回異彩を放っているのが、短歌ZINE 。歌人・ショージサキさんによる「ガールイーツガール」という作品。表紙のブルーがこの季節にちょうどよくて、たくさんの ZINE が並んだ空間でもひときわ鮮やかだ。これにまさか<短歌>が掲載されているなんて誰が思うだろうか。   5・7・5・7・7   なじ

【 ゲストレビュー 】 下司悠太 『反抗的味噌汁』 レビュー by 秋光つぐみ

反抗的。反抗するようなさま、また、反抗する気持を態度や言動に表わすさま。味噌汁。みそをだしにとかし、刻んだ野菜や豆腐やわかめなどを入れて煮た汁。 反抗的。むき出し、刺激的、あるがまま、不安定。 味噌汁。溶ける、吸い込む、ひと息つく、安心。 これは私のイメージ。 一見、相反するような気がする二つの言葉が並んでいることに「はて・・?」とかすかな疑問を無意識に抱き手に取るも、するりとその手中から抜け落ちそうな滑滑した真っ赤な装丁が、凝り固まった私の何かを破壊してくれそうな予感が