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作品紹介#1『カテゴライズへの違和感 ー「らしさ」の基準について考察するー』

[作品]カテゴライズへの違和感 ー「らしさ」の基準について考察するー
作品タイトル『カテゴライズへの違和感 ー「らしさ」の基準について考察するー』(作:川口春瑠)

作品解説

身体は生まれ持って与えられたもので自分自身で選択することはできない。しかし、身体的構造の違いで男性と女性は二種類に分類され、
その身体の違いよって社会的・文化的に構築された「らしさ」を通した視線でみられてしまう。

撮影と対話を通して21人の「女性」としっかりと向き合い、
肉体の違い、考え方の違い、抱えているものの違いを受け止めようとした。
私や彼女たちが持つ身体的な特徴は必ずしも違っているし、考え方も異なる。

社会的・文化的に構築された女性「らしさ」を他者から与えられ、それを理想像としていた私にとって、
この撮影を始めたことは、規定されたカテゴライズから抜け出す手段であった。

もしも、この世界に身体構造の分類が存在しなかったら。

という仮説のもと鑑賞することで、多くの人々に
現実世界に存在するマジョリティーとマイノリティーの境界の曖昧さや、
社会的・文化的に構築された「らしさ」の基準についての考察へと繋げることは可能だろうか。

私はこのプロジェクトを通して、マイノリティとマジョリティ、男性と女性など、どちらか一方に属するのではなく、
境界のないグラデーションの中に自分が存在していることを実感した。

文化芸術・アートへの想い

文化芸術やアートは、誰かの人生を変えたり、支えたりする力を持っていると思います。それは鑑賞者が、作品から得るメッセージやエネルギーからだけではなく、制作者にとってもです。よく、「アーティストは特別な才能を持っている」と別の世界の人であるかのように捉えられることが多い思います。私はそうではないと思うんです。どれだけ日常の中で疑問を持つことができるのか、どれだけ自己と向き合い続けることができるのか、これらをし続けている人なんだと思います。もちろんその考えを形にする力は、才能で発揮する人も一部存在はしますが、全員がそうではなくて、知識の量、見たものの量、繰り返す量で、どこまででも可能性を開き続けることはできると考えます。私はそれを芸術大学で実感しました。特別な才能ではなく、自分が抱える考えを形にすることが必要になったから作品を作るんだと思います。

私は自分をアーティストだと思っていません。どちらかというとデザインを勉強してきましたが、だからと言ってデザイナーでもありません。大学では情報デザイン学科に所属し、考えの視覚化について学び、課題発見や課題解決の力を身に付けました。今回の「カテゴライズへの違和感」という作品は、他者は何故「川口春瑠」としてではなく「女性の中の1人」として扱うのだろう、という日常での疑問から作品制作が始まりました。この疑問は、なんとなく感じる自分の小さな疑問でしたが、自分のこれまでの経験や社会のあり方を振り返り、他者の価値観や様々な知識を得ることで、カテゴライズされることから抜け出すと共に、自分だけの問題ではないことに気づき、伝えることを意識しながら作品を制作しました。

私はこのように気になることを突き詰めて答えを探そうとする行為をこそが、制作者の人生を変えたり、支えたりするものだと思います。そして完成された作品を通して、制作者の想いに触れた鑑賞者もまた、日常が少し変化したり、支えられたりするものだと思います。文化芸術やアートは、特別な人のものではなく、誰もが作品へと繋がる種を持っており、その種は世界を変える力も持っていると思います。

作者プロフィール

川口春瑠
京都芸術大学4年生(2022年作品制作時)。2000年2月25日大阪出身。2015年、帝塚山高等学校美術専攻美術コースへ入学し、デザインに興味を抱いた。そして、友人の誘いで写真部に入部し、写真づけの日々へ。2018年、京都芸術大学情報デザイン学科ビジュアルコミュニケーションデザインへ入学。学業ではグラフィックデザインや企画デザインなど、幅広くデザインについてを学びながら、個人活動として写真を通した作品制作や依頼での撮影を行ったりしている。

主な実績
関西御苗場2017「サイレント少女」エプソン賞受賞、第185回TopEyeフォトフォトサロン「多重人色」TopEye賞受賞、2019年10月23日-27日京都のギャラリー「gallery Main」にて個人写真展「密度」を開催、2020年3月6日-4月1日京都の飲食店「MAKO SHOP」にて個人写真展「eat」を開催、2021年7月5日-7月31日家入一真コレクション展「表現へのシナジー」企画チームのアートディレクターを務める、2022月2月5日-2月13日京都芸術大学卒業作品展2022「カテゴライズへの違和感」コース特別賞受賞、など

過去実績

個人写真展「密度」(2019/10/23-10/27)
2回生の秋、1人で企画し開催した写真展「密度」
発展途上国の情報量の多さに興味を抱きアジアを中心に撮影旅を行う。
写真の多くは密集度の高いものを映している事に気づいた。
この無意識に行っていた行動や興味の根源は何なのか、なぜ私は密に美しさを感じるのか。
この興味を分解するために写真展は開催された。

個人写真展「eat」(2020/03/06-04/01)
飲食店での開催に伴い、食をテーマにした展示内容を設定。
写真は全て、2019年タイと香港で撮影された。
それらの写真をシルクスクリーンという手法で印刷を行い、思い出の再構築を行う。
16枚もの手刷りの作品が展示された。

オンライン授業に慣れてきた今だこそ伝えたい、現役芸大生による「授業の正しい受け方と休み時間の使い方講座」(2020/07/10-07/31)
授業はパソコンで行い、休み時間はスマートフォンで息抜き。そんな日々を過ごしていませんか?液晶画面から発するブルーライトには眼球への疲労はもちろん、体内時計を狂わす力もあります。正しくパソコンとの距離を取り、休み時間でリフレッシュ。心身への影響を最大限に抑えましょう。


あとがき

惑星規模で考える環境との対話。私たちは今までに経験しなかった多様性時代に入った。ウイルスは地球を覆い、全ての価値観をリセットするかの如く本質について問われている。「ジェンダーレス」はヒト、その存在から個々人生を考える糸口の最初のQ1になるだろう。この作品は、川口春瑠自身を中心において女性として輪郭づけてきた他者との違和感を写真表現から見いだす事をめざしている。数々のパーツは私たちが他者を判断する時に某偏見として見ている部位である。性別を想像した瞬間、あなたは既にその様な目で見ているはずだ。

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