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作品紹介#9『進化の発掘』

作品タイトル「進化の発掘」(作:齊藤 真裕)

作品解説

本作品は玉川大学8号館の解体現場内で制作したインスタレーション作品の一部です。当時8号館を使用していた工学部の人々の想いをお聞きし、自分達の目だけでは計り知ることのできない時代の進化や工学部の進化を深海にいる古代生物たちの進化に準えて表現しています。ここでは古代生物が精密なアンドロイドとして表現しており、小型の魚は解体工事の現場にある廃材を使用しています。
また、本見学から通じて知ることができた出来事、経験を扉やトングなどの「手に触れるもの」から表しています。

文化芸術・アートへの想い

アートはあらゆる人と人を繋げるコミュニケーションの一種だと思います。そこに当てはまる人は現代人だけではなく、過去に生きた画家やアーティスト、文明を築いた人々であり、それらの人々と作品から通じ合うことができると考えます。作者同士が制作に影響を受け合ったり、とあることについて考えさせられたり、心が様々に揺れ動いたりなど、アートは自分自身の中で自由に感じて考えることができるものです。作品作りにおいては、自由に鑑賞することを楽しんでもらうための方法を考えながら、制作をしています。

作者プロフィール

齊藤 真裕
玉川大学 芸術学部 芸術教育学科
美術・工芸コース 4年(2023年作品制作時)

主な実績
2022年 Tamagawa Art Gallery Projects2022-2023 no.9「解体による再構築展」西松建設賞受賞。

個展及び個人の活動情報について
主にTwitterやInstagramを通じて、アナログ作品やデジタル作品を投稿しています。
Twitter:九官鳥―官=鳩 @hatopo_atelier
Instagram:九官鳥≒鳩 @hapo_topo_

過去実績

「回想録-探索-」
作品形態:映像(51秒) 
技法・素材:Clip Studio Paint・iMovie・Img Play
玉川学園旧本部棟と玉川大学8号館の解体による廃材を使用して、自分自身が解体現場に足を踏み入れた時の感覚や卒業生の方のお話をもとに制作。
現場の物静かな空気感を深海としてイメージし、鑑賞者を潜水士として、深海に眠る歴史を覗き込むというストーリーを表現。
モニターで動画を表示し、廃材で制作したフレームをその周りに設置し、その世界観に入り込めるよう鑑賞方法も工夫。
「解体による再構築展」出展 西松建設賞受賞作品
  ※写真は、映像の一場面が表示されている展示風景

作品タイトル「回想録-探索-」(作:齊藤 真裕)

「目が合っちゃった」
技法・素材:アクリル・油彩
サイズ:M15号(652×455mm)
デジタルイラストをプリントアウト、そのプリントをメディウム転写した上から油彩で制作。
暗闇の中で不思議な存在と出会った際の緊張感を表すため、目線の効果を意識して制作した鑑賞者と作中の人物とが対話できる作品。
ーーー
ストーリー
鑑賞者は森に迷い込み、乾いた喉を潤すために山奥にある池に辿り着く。すると偶然にも、池に住む水の精霊と出会う

作品タイトル「目が合っちゃった」(作:齊藤 真裕)

「こんにちは、みなさん」
作品形態:デジタルアート 
技法・素材:Clip Studio Paint 
本作品は『目が合っちゃった』に登場した水の精霊を別の媒体で表現。
普段私たちは精霊の存在を認識していないが、この精霊は一人で水を通して人々のことを認識し、見守っている。その様子はどこか、悲しいような寂しいような表情を浮かべていた。
「この声は届かないけれど、どうか健やかでありますように。」

作品タイトル「こんにちは、みなさん」(作:齊藤 真裕)

あとがき

齊藤真裕さんは、絵画を専攻し、本学開催のTamagawa Art Gallery Projectsに作品出展、企画運営を行うなど、芸術教育活動に積極的に参加してきました。今回出展の作品はそれら活動の取り組みの一つです。廃材を単に造形が面白い素材として扱うのではなく、廃材の持つ記憶を想像し、物語性のある作品として廃材を再構築しました。
他にも、空想の世界観をベースに他者が共感できる作品づくりを目指し、未来から現在を見つめる視点でアイデアを生み出した、齊藤さんの作品制作の着眼点には眼を見張るものがあります。絵画表現の枠組みを超えて、インスタレーションや動画制作にも挑戦するなど、様々な活動で培った表現力、発想力で今後も活躍することを期待しています。

玉川大学芸術学部アート・デザイン学科講師 児玉沙矢華




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