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出会い

仕事を終えるといつも一緒に帰路に着く友人に『今日は約束があるから』と会社の玄関でさよならした。

しかたがないな

心の声をぼそっとつぶやきながらいつもの商店街を歩いていく。最寄りの駅は商店街を抜けた10分ほどの場所にある。

商店街をぶらぶらと眺めながら進んでいくと、対面からニコニコした見覚えのある顔が目に入った。

今帰りなの? あれ、今日はひとり?

ひとりの男性に声をかけられた。お世話になっている取引先の社長さんだった。会社では話しかけられると軽い会話はしたが、個人的に話しかけられたのは初めてだった。

良かったらお茶でもどう?

商店街にあるちょっと渋めの喫茶店の2階で2時間くらい話し込んだ。
社長さんの仕事の話は美容関連の話で非常に興味深くて熱心に聴き入った。

夏休みはあるのかな?

社長さんから突然質問された。

お盆休みが8日間あります(わたし)

じゃ休みに旅行に行こう!

突然の誘いにちょっと戸惑ったが、不思議なことに父親のようにも感じる社長さんに不安は全く感じなかった。

旅行鞄は空っぽのままでおいで。旅先で揃えたらいいからね。

お盆休みは社長さんの紺色のシーマであちこち旅行に出かけた。
立ち寄ったお店でモスキーノのハイネックのTシャツとメルローズのウエストシェイプされたラウンドネックの宝石柄の長袖Tシャツを買ってくれた。

気分はまるでプリティウーマンだった。


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