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リネンの無地のプルオーバー

頭からすっぽり被るだけという原始的な形ながら、着ればすなわちカッコよく見える服、それはリネン地プルオーバー。

たとえば「白いTシャツにデニム」の王道コーディネート。Tシャツを白いリネン地プルオーバーに差し替えるだけで、別ものになるのだ。品格が明らかに三割増し。たちまちシュッとした人になる。

ただしリネン素材のカットソーではダメで、ほどよく薄いリネン織物に限る。

襟つきは論外(プルオーバーでなくてただのシャツになってしまう)。

襟ぐりにはスリットもタックもギャザーも入らないタイプ。Tシャツになるべく近い、そっけないデザインの首回りが理想的だ。

私が最初に買ったのはスクエアネック半袖の白で、1980年代前半のSaint Laurent rive gaucheのもの。最近では1980年代George Rechのボートネック七分袖の赤、1970年代Dorothée BisのVネック半袖の黄色も立て続けに入手した。

パリッとハリのあるリネン織地は、Tシャツほど素直には重力に従わない。伸縮性に欠け、皮膚の表面からは常に少し離れていて、体の動きにべったり追随しない。

この、身体に対してちょっぴりよそよそしい距離感がいいのだ。

さらに、伸縮性がないリネン織地でプルオーバーを作るとなると、必然的に身幅は広めに(そうでないと着脱のたびに肩を脱臼しかけてしまう)。そして、広めの身幅に釣り合う広めの袖幅と、大きめの襟ぐりがつく。結果、衣類と身体との間におのずと空間ができる...

...そうか、「間」の美学を隠し持った服だったのだな、これは。

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