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なぜ、そこまで企業に厳しいのか?企業を非難する“本当”のワケ


2019年、グッチから新しく販売されたとある商品が消費者の反感を呼びました。

この商品です。

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「バラクラバ・ジャンパー」という名前で、大きな赤い唇のモチーフが編み込まれた独特のデザインのセーター。これが黒人の身体的特徴を差別的に表現しているとネット上で物議を醸しました。結果的にはグッチは謝罪し、「バラクラバ・ジャンパー」は販売が中止となり世界中で話題となりました。


このように顧客からの反発によって企業が大きな不利益を被ることは多々あります。だから企業は顧客を刺激しないように細心の注意を払っています。物議をかもす企業もいずれは社会的責任を果たすように矯正されていく、あるいは社会から除け者にされるのが世の常です。

しかし、冷静に考えてみると結構厳しい要求ですよね。

今までの売れ筋商品を全て見直さないといけない、当然仕入先にも影響が出るでしょう。人々の運動によって廃業に追い込まれる業者だって出るはずです。


なぜ、人々は企業に対してここまで厳しい要求をするのでしょうか?



▼要求の高まりは企業が「敵」だから?

「人々が顧客に対して厳しい要求をするのは、企業が環境破壊に寄与しているからだ。企業は地球の敵だ。」そんな声を耳にすることがあります。そう言われると私も納得してしまいます。

しかし、ドラッカーは「企業=敵」と捉える考えを明確に否定しています。

要求の高まりは、企業に対する敵意から出てきたものではない。過大な期待を生んだものは企業の実績である。社会的責任についての要求は、多分に成功の代償である。

つまり、人々が企業に対して社会的責任を果たすように強く要求するのは、企業が今までに多くの成功を収めてきたからだと主張しています。


▼「人々を豊かにした企業の歴史」が人々に期待させる

先進国を見れば、企業がいかに多くの成功を収めてきたかが分かります。

資本主義社会になって間もない頃、人々は企業に対して何を求めたでしょうか。それは紛れもなく「生活の量」です。もっと多くの製品を出して欲しい。もっと多くの住居を提供して欲しい。もっと多くの食べ物が欲しい。大戦後の日本がそうでしたよね。人々は生活必需品を求めて暮らしていました。

しかし、資本主義社会になって数世紀、私たちは企業に対して求めるものが変わりました。多くの人は企業に対して「生活の質」を求めているはずです。もっと良い製品が欲しい、もっと良い暮らしがしたい、もっと良い食事を取りたい。全て「質」に関する要求をしています。「生活の量」から「生活の質」を求めるように、実はこの時点で私たちはすでに成功しているのです。

人々は知らず知らずのうちに企業に恩恵を受けています。だからこそ、企業に期待をします。

企業ならもっとより良い成果を出してくれるのではないか、企業なら生活の質をもっと高めてくれるのではないかと。そして、その行き過ぎた期待が企業への要求へと変化します。企業は環境を守るべき、企業は人権を侵害してはならないと。

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▼まとめます

企業を批判するのは、企業=敵という考えから来るものではありません。企業が多くの成功を収めてきたからこそ、企業に期待をする。それが批判という形で現れているのです。



▼補足 だからドラッカーは面白い

ここまで読んでいただきありがとうございます。ドラッカーを読んでいると、ふと「そうだったのかぁー」と感心することがあります。今回の話もそうでした。「企業を非難するのは企業へ期待の表れ」と言う考えに感心しました。

少し前の話ですが、吉本の闇営業が大きな話題になりましたよね。人々は吉本の管理を非難します。連日新聞やテレビ番組でも大きく取り上げられました。吉本は倒産すべき、吉本は雇用をもっとちゃんとすべき、厳しい声がSNSでも飛び交います。なぜここまで吉本を非難するのか?本質的には彼らに期待しているのです。

(吉本ならちゃんとした雇用をできるはずだから)雇用をちゃんとしてほしい、(社会から暴力団体を排除するきっかけになるから)吉本がしっかり正してほしい。非難の本質には彼らへの期待が混じっているのです。もちろん全てとは言いませんが、非難も単なる非難ではないと言うことです。

こういう考えって自分の頭だけでは考えが及ばなかったりします。でもドラッカーの知見をきっかけに深く考えられる。だからドラッカーは面白い。


ここまで読んでいただきありがとうございました!

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