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企業の社会的責任と政府の関係

アルゼンチンの首都ブエノスアイレス、南米のパリと呼ばれるほど美しいこの街に食肉工場「スウィフト・デ・アルヘンティーナ」はありました。

このnoteでは、スウィフト社の事例を基に「企業の社会的責任を阻害する政府」について考えていこうと思います。これを読めば、企業が社会的責任を考えるにあたって政府との関係性は極めて重要なことがわかります。


▼スウィフト社倒産の危機

スウィフト社は当時アルゼンチンで最大の食肉工場でした。そして、多くの人々に労働の機会を提供していました。アルゼンチンに暮らす貧困層にとっては貴重な労働の機会となっていたのです。

しかし、第二次世界大戦後から状況は一変します。

政府による価格統制が始まったのです。政府が肉牛の価格を高値に維持し続けていたことによって、食肉工場の原材料費は高騰、加工後の商品の価格も値上げせざるを得ません。すると人々は加工肉を食べないようになり、食肉工場の経営もままならなくなったのです。

「このままでは倒産し、抱える従業員も路頭に迷ってしまう。」

絶体絶命の状態に陥ったスウィフト社を救おうと、ある企業が名乗りを上げました。

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▼デルテック社の試行錯誤

救いの手を差し伸べたのはカナダのグローバル企業デルテック社でした。

デルテック社は金融業を中心に南米諸国で事業を展開していました。そこで、南米での社会的責任を果たしたいという目的もあり、スウィフト社を買収したのです。

「スウィフト社を倒産したら、従業員はどうやって収入を得ることができるのだろうか。工場を閉鎖する訳にはいかない。」

デルテック社は本気で改革に取り組みました。すぐに施設を近代化、失業率の高い地域でも雇用を維持し、人員を整理し、生産性を大幅に上げ、追加資金を投入、銀行からもお金を借り入れ、試行錯誤します。

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▼スウィフト社の工場閉鎖

しかし努力の甲斐も虚しく、用意していた資金も使い果たしてしまいました。希望も見えない状況の中、デルテック社はスウィフト社の工場閉鎖を決断します。

「それでも従業員には極力迷惑をかけたくない。」

最後の最後まで従業員のことを考えたデルテック社は全従業員に対して債務の返済を約束します。しかも親会社であるデルテック社よりも先に従業員への対応を優先しました。従業員もここまでのことをしてくれたデルテック社に恩義を感じ、およそ86%の従業員がその提案を受け入れました。(これは法律で決められている割合よりもはるかに高い割合です。)

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▼政府の圧力

会社も精一杯がんばった。
従業員もそれを認めて受け入れた。

成功はしなかったものの、ほとんどの人が納得できる結果!

のはずでした・・・。

しかし、政府から思わぬ圧力がかかりました。アルゼンチンの判事は「同意を不正に取り付けた」としてこれを認めなかったのです。スウィフト社に国と戦う力はありません。さらに政府は世論も巻き込み、スウィフト社を完全に悪者扱いしました。

結果、政府はスウィフト社の破産を宣告し、清算人の任命を要請しました。

スウィフト社の親会社であるデルテック社は債権者としての権利を一切認められず、デルテック社が保有する他の企業における持ち株さえ全て差し押さえられました。まさに政府による強制没収が行われたのです。

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▼まとめます 

デルテック社はスウィフト社を救おうと行動しました。しかし、どうしても救うことが出来ず、工場閉鎖という苦渋の決断をしました。それでもなお従業員の生活を守るために彼らに債務の返済を約束しました。従業員も納得した。

しかし政府がそれを許そうとしなかった、これを利用しようと考えたのです。世論を煽り、デルテック社を悪者扱いしました。


この話から我々は「社会的責任には政府が関わる」ということを学べます。正しい行い、社会的責任を果たす行動、それでも政府が妨害する。経済活動では企業さえ見ておけば話は済みますが、社会的責任には政府が関係している。それを教訓として覚えておくべきです。


ここまで読んでいただきありがとうございました。

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