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浮体式洋上風力のサプライチェーン。英国ですら他国頼み?

読んでいる論文が興味深かったので、イギリスのケースで気になった部分だけ、ざっくり記事にします。綺麗にまとまっていません、かつ日本語&英語が入り交じった感じで読みづらいかもしてませんが、ご容赦ください。

内容は、浮体式洋上風力の導入課題はなにか、をイギリス(スコットランド)と南アフリカを例に取って分析するもの。

文献:’Drivers for and Barriers to the Take up of Floating Offshore Wind Technology: A Comparison of Scotland and South Africa' by Kubiat Umoh and Mark Lemon, Energies 2020, 13(21), 5618 

ポイント① サプライチェーンのうち、CAPEXは他国頼み、OPEXは自国供給

イメージとして、
・CAPEX = 初期投資 まわり
・OPEX = ランニングコスト まわり
論文内では一例として、Kincardine Offshore Floating Wind Farmを取り上げています (立地は以下参照)

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実際、CAPEXまわりを担当している企業が属している国
部品
- Turbine … Germany
- Floating foundation Design … USA
                                   Fabricated (組み立て) … Spain
- Moorings, anchors (係留設備、アンカー) … Netherlands
作業
- Installation, Commissioning (導入、試運転) … Italy
- Subsea arrays, Cables (ケーブル周り) … UK
- Heavy load logistics (運輸周り) … UK, France

OPEXはO&M (オペレーション&メンテナンス)で、UK企業です。

参考:洋上風力のサプライチェーン (着床式の例)
洋上風力産業ビジョン(第1次)概要」 R2.12.15 by METI より。

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洋上風力では世界のリーダーと呼ばれるイギリスですら、導入段階では他国の企業に頼っていることが分かります。
2019年にイギリス政府が発表した 'Sector Deal' では、サプライチェーンの60%を国内で賄うことを目標に掲げていて、政府として投資や人材教育を含め、国内の産業発展を計画しています。


ポイント②港湾設備の脆弱性、作業拠点も国外

浮体式海洋構造物を現場に曳航する前に組み立てるために、設備の整った港湾施設が必要とのこと。設備や契約手続きの観点から、作業拠点として選ばれたのはスペインの港です。

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遠い… 2018年時点のことなので、すでに他の港の設備が整い始めていたり、契約等もスムーズになっている可能性はあります。プラス、あくまで浮体式洋上風力をトピックにした論文なので、イギリスで普及している着床式については、また違ってくると思います。ただし、それを考慮しても、進んでいるイギリスですらこんな状況。
周辺国でバックアップできたため、実現できたものの、日本での港湾施設設備がそこまで整っているとも思えないし、アジアの周辺国に頼れるかも分からない(調べていませんが)。
少なくとも、私は、イギリスでもそんな状況であったということに驚いたわけです。

というわけで

洋上風力の種類や、イギリスでの風力の普及度(容量や発電における割合など)の前提情報をすっ飛ばしてピンポイントに書きました。

ちなみに風力発電機の種類については、以下の図がわかりやすいと思います。(2021/07/12追記)
自然エネルギー財団「洋上風力が日本のエネルギーを支える」p39

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他、以下のウェブサイトの図も分かりやすい気がしましたので、参考まで。
・「最近の浮体式洋上風力発電の動向」 by 海洋政策研究所
・「洋上風力発電の基礎」by ガチ土木


おまけ

論文の切り口がPEST分析を適用しているのは興味深かったです。
PEST分析は、マーケティングの勉強をしたときに出てきたけれど、なるほど、こういう場合にも有効な観点なのか。

マクロ環境分析ではPEST(Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術))のフレームワークを使って自社の事業に関係の深い重要な要因や環境変化を分析する。
マクロ環境分析 by グロービス経営大学院

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↑図「PEST分析のやり方とコツを事例で学ぶ」by 株式会社シナプス より引用

実際、論文の中では「PEST分析」という言い方はしておらず、「浮体式洋上風力の課題や発展について、Political / Economic / Technical / Social の4つのポイントで見ていきます」という書き方ですが、同じようなものですね。



さて、合い言葉は…

修論がやばい!!!!!!!

ヘッダーの写真は曇天のWind Farm、上記のKincardine Offshore Floating Wind Farmではありません。

では。。。

ぱりしゅわ 2021年6月25日 2:28am (GMT)

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