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バッシュ選び大全

このnoteではバッシュ選びに迷う全ての方のためにサイジング・機能の解説を通して自分に合ったハイパフォーマンスを発揮するバッシュの選び方を習得してもらうことを目的としています。

【加筆・修正記録】
2020/12/15 ver1.0アップ
2021/8/28 ver1.1アップ
更新内容:足指長さの違い
     ミスサイジングのサイン
     ミスサイジングによる弊害 追記
2022/2/5 ver1.2アップ
更新内容:インソール選びのコツ
     バッシュの寿命、履き替えの見極め 追記
     リンク切れ修正

【はじめに】

Twitterをはじめとしてブログ、YouTubeなどでバッシュに関する情報を発信していますが、フォロワーが増え発信する情報が様々な方の目に触れるようになりバッシュ関連の問い合わせを以前より多く受けるようになりました。
一口にハイパフォーマンスなバッシュと言ってもプレイヤーの特性によってベストの選択は変わってくるため誰にとっても高性能なバッシュというのは存在しません。

問い合わせに対応する中で感じるのが自分が求めるバッシュが自分で理解できていない方が非常に多いということです。
問い合わせを頂いた方にバッシュ選びで何を重視しているかを聞くと大抵の場合は軽くて、グリップが良くて、クッションが良くて、、、とパフォーマンスの高いバッシュのイメージをお話される方が大多数です。
同じモデルでも人によって履いた時の感触が違うように何をもって自分にとって性能が高いと言えるかは個人差があります。
そのためグリップが良いと言われて履いたモデルがグリップが良くないと感じたりするわけです。
この個人差を理解しないままバッシュを選ぼうとしてもハイパフォーマンスと感じることができず満足度の低いモデル選びになってしまうことに注意しなければなりません。

自分にとってベストのバッシュを選ぶためにはバッシュについてある程度知識を持っておくことは重要です。
デザインだけでバッシュを選ぶなら話は別ですがバスケットボールプレイヤーとしてバッシュを選ぶ以上、自分の足に合っているか、自分にとってパフォーマンスを発揮しやすいモデルかというのは気にしてバッシュを選びたいところです。

今回のnoteではプレイヤーとしての特性を自分で理解したうえでバッシュをどう選んでいけば良いかを学べるようにまとめました。
これまで400足弱を履いてきた経験とものづくりメーカー研究開発職として培ってきた知識を生かしてこのnoteを読んだ方が自分にとってより良いバッシュを選ぶ判断基準を確立していただければと思います。

//////////////免責事項//////////////
・当noteの内容は個人の独自見解によるもので正当性を保証するものではありません。
・バッシュ選びに関するアフターサポートは料金に含まれていません。
・当noteの内容を利用することで損害が発生した場合でも一切の責任を負いません。
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1:バッシュの基本

このnoteの解説を読むにあたってバッシュの構成や役割といった基本が分からないと解説を読んでもチンプンカンプンだと思うので最初にまとめておきます。
バッシュの基本構造を理解するだけでもモデルごとの違いを比較する際、どこを見ればよいのか分かるのでバスケ経験者の方は復習がてら、バスケにあまり慣れていない方は予習として参考にしてみてください。

1-1:バッシュの構成

バッシュの構成というのは大きく分けるとアッパーとソール、2つの部位に分かれています。

図1 バッシュ構成図例(NIKE Kyrie5)

アッパーとソールはモデルによって部品点数や構造は若干異なりますが基本的な機能は同じで以下のようになっています。

【アッパー】

ソールと足を繋ぎとめる役割を果たす部分でソールから一続きになっていて足を包み込み前後左右に動く足をソールにフィットさせる部材です。
デザインを大きく左右する部分でもあるので何かとここを重視してしまう方は多いかと思います。
アッパーの基本的な構造はアッパー/タン/シューレース/ヒールカウンターの4部材です。

図2 アッパー基本構造

ヒールカウンターはモデルによって入っていないこともありますが入っていない場合でもヒール部分のアッパーに強度の高い素材を重ねてヒールカウンター代わりに機能させることもあります。
ヒールは身体の動きとソールの動きの関係上、左右にブレることが多いのでしっかりヒールを抑えることでより動きやすくなるためあまりにもヒール周りが柔らかいモデルはバッシュとしての役割を満足に果たせない可能性があります。

アッパーは一括りに書いてますがトゥーボックス・インステップのように部分によって本来は細分化されています。
また、フィット感を向上させるためにタンを排除した一体型のアッパーが採用されている場合もありブーティ構造と呼ばれています。
タンが完全になくなっているものをフルブーティ構造、中足部当たりまで一体型になっていて中足部から足首にかけて従来型のタンがあるものをハーフブーティ構造として区分されています。
アッパーがインナーとアウターの2層に分かれていてインナーがブーティ構造、アウターは一般的なアッパーの構造になっているものもあります。

図3 ブーティ構造

【ソール】

足と地面の間に配置され地面と身体を繋ぐバッシュの最も重要な部材です。
ソールの基本的な構造はインソール/ストロベル/ミッドソール/アウトソールの4部材です。

図4 ソール基本構造

ストロベルはモデルによって排除されている場合もありますしミッドソールとアウトソールが一体になった(同じ素材)構造の場合もあります。
ミッドソールはバッシュのクッション性(反発力)を決める重要な部材で各メーカー様々な工夫をしている部分でもあります。
NIKEのZoom Airのようにミッドソール内に異なる部材を埋め込んでいる場合もあります。
ソールがどのような構成になっているかはバッシュの特性を決める重要な要素の1つと言えるのでパフォーマンスを気にする方はバッシュのソール部分がどうなっているか特に気に掛けていくことになるかと思います。

1-2:バッシュの役割

バッシュはバスケでパフォーマンスを発揮する上で必要な機能を私たちに提供してくれますがバッシュに求められる役割というのは大きく4つに分けることができます。

支える役割

図5 支える

バッシュは私たちの身体と地面の間に介在して身体の質量、プレイする際の荷重に対してしっかりと支えてくれる役割を果たします。
現代に生きる私たちはシューズを履くということに違和感がないのであまり意識しないかもしれませんがバッシュを履くと足で直接地面には立っていません。
シューズを履くことで物理的には地面からソールの厚み分浮いているのと同義です、つまりソールが地面を基礎に私たちの身体を間接的に支えていることになります。
バッシュの支える力が弱いと私たちの身体はバッシュを履いた状態で真っすぐ立つことすら難しくなります。

和らげる役割

図6 和らげる

静止している場合を除いて走る、止まる、跳ぶといずれの動きでも接地時に私たちの身体は大きな衝撃を地面から受けることになります。
この衝撃を適切に和らげるのがバッシュの役割の1つです。
衝撃を和らげることで膝や足首といった関節に過度な負荷を伝えず筋肉に余計な負担を強いることのないようにしてくれます。
また、プレイ中の私たちの身体は様々な角度に傾きながら動きます。
その場合、接地する身体が受ける衝撃というのは単純に足裏全体で受ける衝撃だけとは限りません。
素足の状態では接地できないような角度で接地してプレイを続行することができるのは局所的に大きくなりやすい衝撃をバッシュがしっかり和らげてくれているからです。

伝える役割

図7 伝える

バスケに限らず身体を動かすには接地している地面から反発力と言う形で推進するエネルギーを受け取る必要があります。
私たちは生まれる前から重力を感じながら生きているので意識することはないかもしれませんが、身体が重力によって地面に押さえつけられているからこそ反発力を得られ走ったり跳んだりすることができます。
前項の和らげる役割では衝撃を吸収する機能を発揮すると書きましたが衝撃を吸収するばかりでは身体に対して推進するエネルギーを与えるものがないので反発力の弱いバッシュはエネルギーを身体に返すことができず前に進むことも後ろに下がることも満足にできません。
バッシュがエネルギーを伝える役割をしっかり果たすことで接地の際、適切に地面からの反発力を身体に伝え身体を動かすためのエネルギーを身体に供給することができるというわけです。

維持する役割

図8 維持する

直進するにしろ、方向を切り替えるにしろ私たちの身体が進みたい方向に動きを維持することもバッシュの重要な役割の1つです。
直進しようと動いているつもりでもバッシュがそれを維持することができなければあらぬ方向に身体が流されてしまいます。
接地した際、荷重方向に合わせてしっかり意図した方向に動きを維持できるような役割がバッシュには求められます。

これら4つの役割を果たすことで快適にバスケをプレイすることができるわけですが、この4つの役割というのは実はバッシュに限らずシューズ全般に当てはまる内容です。
バッシュの役割というとジャンプ力を上げる、速く走れるようにする、といったプレイヤーが期待する機能・性能を想像する方は多いですがそれはバッシュの役割の本質を捉えていません。

あくまでバッシュが果たす役割はこの4つであり、道具としての土台となります。
その役割を果たすために構成する材質によってプレイヤーに提供される機能・性能があるということをしっかり理解しておきましょう。
実際にパフォーマンスを発揮するのは私たち自身の身体であることはいうまでもありません。
バッシュの基本について学んだところでバッシュ選びのためのサイジング・機能について解説を通してバッシュの選び方を学んでいただきます。

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