環境ホルモン問題再燃?
世界の肥満率、2022年現在その水準は1975年のほぼ3倍、小児と若年層に至っては実に5倍(WHO調べ)。
2022年1月、ノルウェーの生物学者、M・ワーグナーは、ペットボトルやプラスチック製品に含まれる化学物質が飲料や食品に溶け出し、肥満リスクを挙げている可能性を指摘しました(※)。
それによると、11種類の化学物質が人間の細胞を脂肪細胞に成長させ、脂肪を蓄積しやすくさせる、と。
私が思い出すのはその昔の「環境ホルモン」問題。
カップ麺の容器から有害物質が溶け出して身体に悪影響を与える、とかさ。
精子が減るとか、キレやすい子供が増えるとか。
草食男子が増える、なんてのもあった気が。
多種多様なホルモンが機能しているおかげで私たちの身体と心は機能し正常さを保つわけですが、プラスチック由来の化学物質は構造がホルモンに似ているものがあり、その働きを阻害することがあるらしい。
中でもフェノール類は女性ホルモンのような働きをすることが知られており、妊婦のお腹の赤ちゃんに影響が出て肥満や精神疾患になりやすい、という。
しかしこの時は、実際に内分泌攪乱作用が確認された物質はなく(「メディア・バイアス、松永和紀、光文社新書(2007)」、一部の研究者が研究を続けている以外、話題は下火となったようです。
しかし、ここへ来てのワーグナー論文。
勿論一研究者が発表したからと言ってその結論が正しいと確定したわけではなく、今後多くの研究者が行うであろう追試の結果を待たなければなりません。
しかし、例えカップラーメン食べない、ペットボトルで飲まないという人であっても、今日全くプラスチックに触れない日常を送る人はほとんどいないでしょう。
この問題は現代に生きる私たちの健康に深く関わる問題であり、今後の研究の進展が期待されます。
※
“Adipogenic Activity of Chemicals Used in Plastic Consumer Products”、Johannes Völker, Felicity Ashcroft, Åsa Vedøy, Lisa Zimmermann, and Martin Wagner、Environmental Science & Technology 2022, 56, 4, 2487-2496。
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