見出し画像

現代に生きる「錬金術」

かのニュートンさん、実は錬金術師でもあったという事実から、「ニュートンはダメだ」なんて言う人もいますが、そんなことは無いと思いますよ。


錬金術とは、金(きん)以外の物質を様々に混ぜ合わせ、煮たり焼いたりして金を作り出そうという試み。

当然そんなことはできなかったわけですが、できないことの理由など当時は知る由もなく、また金の実用上の価値(非常に硬い、錆びない、他の物質に変化しにくい)もあり、当時としては何とかしてそれを作り出す技術を確立しようと研究が進められたのも無理はないでしょう。


水銀や硫黄など他の元素から金を作る元素の変換には「原子核反応」が必要であり、煮たり焼いたりという化学反応レベルではエネルギーが5桁くらい低すぎて、全然足らないわけですね。

でもそんなことが分かったのはやっと19世紀になってから。


それでは錬金術師たちの綿々たる努力とその研究成果の蓄積は全くの無駄でしょうか?

決してそのようなことは無くて、物質どうしを混ぜて何がしかの生成物を得る膨大なデータからパターンが見いだされ、そこから今日の化学が発展してきたのです。

特定のその研究が本当に「役立つ」ものなのかそうでもないのか、その判断も難しいことの一つの現れではないでしょうか?


錬金術本来の目標は達せられませんでしたが、化学の発展がその後の人類社会に果たした貢献を考えると、科学研究においていかに「経験」が大事かが分かります。

ここで経験とは個人的な体験などではなく、実証研究における客観的事実の観測、ということ。


ところでちょっとツウ向けの話。

「実証的研究」と「実証主義」、どちらも「実証」という言葉が入りますが意味は全く異なります。

英語では、前者は”empirical research”、後者は”positivism”で異なる単語なのですが、日本語は不幸なことに同一語が当てられてしまい、誤解の元になっています。

実証主義とは何か、これは哲学的な問題を含みちょっと複雑になるので、また機会を改めて。

○Kindle本
「再会 -最新物理学説で読み解く『あの世』の科学」
https://www.amazon.co.jp/dp/B0973XR53P

○ホームページ
「『不思議』を科学する<見えない世界の物理学>」

ブログでは書けない不思議の科学の真髄とは?
メルマガ登録もこちら
https://parasitefermion.com/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?