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論理とアナロジー

細谷功はその著書・「メタ思考トレーニング」(PHP研究所、2016)の中で、論理思考に加えアナロジーを駆使することの重要性を説きます。
 
論理思考は一貫性と連続性を目的としているのに対し、アナロジーは飛躍を旨とし、新しい発想を生む原動力となる、と。
 
なるほどな、と思いました。
 
個人的に非常に興味深く参考になる論考、かつ自分の経験に照らしても沿う内容。
 
ぜひ紹介したいと思いました。


共通項を見出しより高い視点へ

細谷によれば、アナロジー思考は、抽象化と具体化の組み合わせ。
 
抽象化により、より高い視点(メタな視点)でものを捉えること。
 
これは、別の言い方をすると個別の複数の事象の間に共通点を探すこと。
 
こうして見出した共通点と経験や知識とを組み合わせて具体化することで、新たな地平での新たな知見を得ることができる、と。
 
同著作の中にある、共通点を探す演習問題がこちら。
 
「テレビのリモコンとデジカメの共通点は?」
 
両方とも家電ではひねりがイマイチ。
 
細谷的正解は、「多いから良いとは限らない」。
 
何が?
 
リモコンのボタンの数とデジカメの画素数。

どちらも多くなるほど歓迎された、最初のうちはね。
 
それが、ある頃から増えても必ずしも喜ばれないフェーズに入る。

便利さから乖離する技術

確かにリモコンにはずらりと多くのボタンが並んでいます、50個ほどもあるでしょうか。
 
でもその中で普段使っているのって、いかほどでしょう?
 
チャンネル切り替えにはおそらくチャンネル移動ボタン。
 
たぶん数字ボタンは使わないのでは?
 
あとは音量調整、入力切替。
 
ビデオデッキがある人は、それの関連の再生、早送り、早戻しくらい?
 
ほとんどのボタンが使われていません。
 
デジカメの画素数も、似たようなところがあります。
 
4Kとか8Kで撮っても再生できる機材が無い。
 
PCに取り込んでも重すぎるし。
 
それよりは起動や撮影開始をもっとパパッと、押した瞬間にできるようにして欲しい、電池の持ちを良くして、なんてね。

私もGoPro10持っていますが、定点撮影していると15分くらいで放熱のため自動停止。

問い合わせると「仕様です」と。

そりゃないだろう!そんな欠陥レベルの仕様がこんだけ売れてるってどういうこと?

技術者の視点にある問題点

細谷は、消費者から乖離した技術者の視点を問題点として挙げる。
 
機能の増大による売れ行き増という技術導入当初の成功体験が、その背景に。
 
機能増が顧客の満足度を上げるのは、実際には最初のうちだけ。

フェーズが変わるともう、機能の差異は言われなければ分からない程度の「職人のこだわり」の域に達する。
 
そうなると得てして、技術者の関心は競合の目や自己満足重視に移り、消費者目線の使い勝手への目配りがおろそかになる。
 
こうして必要以上の高品質が求められそこにコストが掛けられる、というのです。
 
リモコンとデジカメという、一見何の関係もなさそうな2つの間の類似点を見つける。

そこから「ひょっとして消費者は別のことを求めているのでは?」という発想が生まれます。

色々活かせる、相手目線の思考

人のプレゼンを聞いていて「長いな」と感じた時、なぜ長いと感じたのかを問うのは重要でしょう。
 
プレゼンを短く切り上げればよいのかというと、必ずしもそうではありません。
 
なぜ長く感じたのか?

おそらく心に刺さらない話が続いたんでしょうね。
 
テーマに興味があって聞き始めた。
 
しかし刺さらない。
 
それはなぜか?
 
そう考えると、別の機会に自分がプレゼンする時にも参考になります。
 
今まで自分がやって来たプレゼン、あまり受けないのはなぜか?
 
聴衆や、場を与えてくれた主催者が求めているものは、テーマに関連するあなたの知識の開陳ではないでしょう。

リモコンで言えば、テレビやビデオに関する様々な機能をつけるより、ボリューム調整ボタンを押しやすい大きさで押しやすい位置にすることだったりするかもしれません

ひらめきの背景にもアナロジー

ちょっと話はそれますが、科学研究の手法が役立つのは、研究者だけではないでしょう。
 
目の前の現象・事象を貫く一般的な法則性を見出すのが科学研究の目的の一つ。
 
その為にまず、仮説を立てます。
 
この一見すると正しそうな仮説は、もちろんそのままでは仮説にすぎないので、本当に正しいかどうかは確かめなければなりません。
 
この確かめる過程には論理思考が必要です。
 
それはそれで重要なんだけど、その前の仮説を立てる段階、ここはちょっと論理ではないですよね?
 
小難しく言うとこれは帰納的推論。
 
いくつかの事例を眺めて、そこからえいやっと、背景にありそうな正しそうな法則性を無理やりにでも仮想する。
 
そうしないとその次の検証段階に移れないので、知識が前に進まない。
 
枝からりんごが落ちるのを見て、月や惑星の運行が同じ種類の力・「万有引力」に依存することをひらめいたニュートンさん。
 
今はこの逸話が本当かどうかは重要ではありませんよ。
 
仮説の提示には類推・アナロジー思考が有効。
 
ひらめきには、無関係な二者間で共通項を見出す力が役に立つのです。

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