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ぜひ日本の選手に見てほしいこの男

パラリンピックの水泳大会で一際目立っている1人の選手。Grant Patterson選手。目立つ理由は2つ。プールサイドで三輪スクーターに乗っていること。そして、彼の周囲には人が集まり賑やかであることが理由だ。

今回はオーストラリアのパラスイマー、Grant Patterson選手の話から思ったことを書き連ねる。彼の水泳に対する向き合い方はもちろんだが、ふだんの生活や社会への考え方が素敵だと感じた。

初めに、私が彼のどこに魅力を感じたかというと、ずばりユーモアである。友達にいたら絶対楽しくてゲラゲラ笑わせてくれるタイプの人だ。そしてもう一つの魅力は、社会に対する柔軟な姿勢である。

1. 障害とユーモア

例えば、Grant Patterson選手は2000年から2002年まで水泳した後、2002年〜2007年の5年間水泳をやめていた。その間に20キロ体重が増えたらしい。その時の姿をみずからジャバ・ザ・ハットと呼んでいる。スターウォーズのキャラクターだ。

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※絵で描いてみた。気になる人は検索

かなり自分の身を張って笑いに持ち込んでいる。芸人のようである。思わず笑ってしまった。

そして、他にもGrant Patterson選手は自らをチビや小人と名乗り自身をネタにする。それだけでなく、彼のコーチや周囲の友人もチビと呼ぶ。彼はそれを受け入れている。

多くの人はこう思う。『いやじゃないのか??』身長がコンプレックスではないのか、怒りたくなることはないのかと。実際、低身長であることを大抵の人は言われたくないものだ。

しかし、Grant Patterson選手はこう言う。
「もしチビと言われてもジョークとして捉えるし気にしてもしょーがないこと。人生ローラーコースターのように身を委ねるだけだ」

もちろんコーチは敬意や人格を尊重し、Grant Patterson選手を誇りに思いチビと呼ぶ。そして彼自身もそれをよく理解している。だからこそ障害は目に写らないものなのかもしれない。Grant Patterson選手の周りの人は彼をとても陽気で明るい仲間としてみてる。それだけなのだろう。

チビという呼び名は可愛い愛称でしかなく、障害を表すものではない、と私は思った。

2. 社会にどう向き合うか

社会で生きていくためにできないことは何もない、とGrant Patterson選手は述べている。一人でできない難しいことや困りごとは友達に頼めばよい。そうすれば障害は気にならない。こういうスタンスである。

Grant Patterson選手の社会への向き合い方を紐解く前に、少し水泳のキャリアに触れておく。なんと言っても水泳が何もできないことはない精神につながっていると考えるからである。しかも彼は長年世界で活躍しているスイマーであり、皆さんに知ってもらいたい。

彼は2012年にパラリンピック代表に選出された。それ以降多くの国際大会に出場して活躍している。しかし、彼の目標はパラリンピックでのメダルの獲得である。そのため、週に9回トレーニングを行う。水中練習が7回、ジムでトレーニングが2回である。プールでの練習開始は朝5時半からで平均2、3キロ泳ぐと言う。かなりハードな練習に取り組んでいる。

さて、社会とどう向き合っているかという話に戻ろう。結論から言うと、『できないことは頼む』ということで社会に適応している、ということだ。どうしても障害ゆえ苦手なことやできないことが出てくる。その時に仲間にお願いして助けてもらうことができるかどうか、が社会で生きていく上で重要となる。

一人でできない難しいことや困りごとは友達に頼めばいいというのは、実はかなり難しいことだ。実際、障害者スイマーは1人でできないことは出ていてしまうが、それを友人に「手伝って」と言えない場合がある。理由に、他人に迷惑だとか声をかけづらいということで、人にお願いできないことが挙げられる。例えば、水着の紐を結んだりプールの段差を跨いだり、障害ゆえ1人でするには難しいことがある。それにもかかわらず、人に頼めず問題を抱えこんだままくすぶっているスイマーが意外と多い。

そういう点から、Grant Patterson選手は助けを求めると言うことを、日頃の練習中も行なっていたのだろう。そこから、社会に適応する術を身に付けたと考える。これはとても重要なことだ。だからこそ社会でできないことは何もないと断言できるのだろう。人に頼ることは決して恥ずかしいことではない。迷惑でもない。まずは、社会に対する適応などと難しく考えず、『困ったらお願いする』と思えばよい。これは障害の有無にかかわらず、誰しにも当てはまる。お願いする勇気が社会で気持ちよく生きていくコツなのかもしれない。

彼の魅力と生き様はアスリートとしてだけでなく人としてどう生きていくかを示しているように思う。私も社会に対する向き合い方を考えるきっかけをもらった。日本のパラ選手もぜひ自分がどうありたいかを考えるきっかけにしてほしい。

編集長




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