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【イラン】ノンパスSRS実行のおそれ。→当局に性別違和(性転換症)と診断されてSRSに同意してはじめて「異性装」が許可される。日本国入管の資料より。

入管が仮訳する資料「オーストラリア外務貿易省報告 DFAT国別情報報告書【イラン】2018年6月7日」の情報です。

入管の資料ということは、難民申請に対して用いられることが想定されます。

ポイントは以下の通りです。

●司法精神医学局(Department of Forensic Psychiatry)が、心理学者や精神科医から性別違和者の紹介を受けた後に、SRS適用可否を判断する。

●SRS適用と判断され、また、本人がSRSを希望した場合、「異性装」が認められる。(出生時の性別と異なる衣服、という意味で「異性装」という言葉を使っています。本人にとっては一貫して「異性装」ではないのですが、便宜的に表現しています。)

●逆にいうと、性別違和でなかったり、あるいは、本人がSRSを希望しない場合、「異性装」が認められない。(補足:SRSしないような人は女装とかできない、ということ。また、とりあえず「女装」してみて、「あ、いけそうだ」と思ってからSRSする、といった戦略がとれないということ。すなわち、ノンパスなのかどうかも分からずにSRSしてしまって、結果、SRSしたものの社会的に性別移行が認められない、という残念な人々を生み出しかねない。。それでいて、社会はトランスジェンダーを認めない、とかいう話になったら、そりゃノンパスなんだから難しいでしょう、、と思ってしまったり、、

●SRSは政府からの資金援助があり、また、保険会社の保険金対象。(補足;FFSが財政援助の対象になっているのかは不明。個人的には、イランではスカーフをすると眉骨・額を隠すことが困難だし、また、あごの骨が出ている人が多いので、社会生活をするにはFFSこそ必要と思われます⋯)

以下、法務省入国管理局による仮訳を引用します。というのも、ほかの人の記事で、この仮訳をそのまま引用している人がいましたので、一応こちらでも紹介します。太字は私がつきました。

なお、「性転換症」という訳語が用いられていますが、元の言葉は「transsexuality」です。もちろんDSMの用語の訳語としては正しいと考えられますが、「~症」とか「性転換」といった言葉を用いたこの訳語を無批判に用いるのは問題といえそうです。もちろんホメイニ師が「病の一種」としてtranssexualityを考えていたのなら、ある意味正しい訳ですが、それでも「性転換」という日本語は何かしらの思想を表明してしまっているように感じます。ここは「性別移行」とか「トランスセクシャリズム」くらいにしておくのが安牌のような気がします

3.難民条約に基づく申請
3.98 アヤトラ・ホメイニ師が性転換症はイスラムの教えに違反していないと宣言するファトワを出した1987年以来、イランはトランスジェンダーの人々を認めている。当局は性転換症を医学的解決策が利用できる疾患とみなしており、ホルモン治療と性転換手術(SRS:sexual reassignment surgery)を認めている。政府は、これらの治療を受けるための資金支援を行っており、保険会社にSRSの費用を保険対象とすることを義務付けている司法精
神医学局(Department of Forensic Psychiatry)は、心理学者又は精神科医から紹介を受けた後、対象者がそのような治療を受ける資格があるかどうかを判断する
。SRSが終了し、その法的書類(身分証明書、出生証明書及びパスポートを含む)が調整された後に初めて、対象者は反対の性に従った衣服を着て、この新しい性向けに確保されたスペースへ移ることを法的に認められる。 当局は一般に、異性の衣類を着用することを認めていない。なぜなら、男性又は女性が反対の性の衣類を着用する行為は、社会秩序を乱すことになると伝えられているからである。しかしながら、個人が性別違和感に悩まされていると診断され、SRSを受けることに同意した後であれば、地元当局はこの個人が実際の手術を受ける前に反対の性の衣服を着用して公の場に姿を見せるのを認める許可証をこの個人に発行することができる。トランスジェンダーの人々は手術を受けた後、トランスジェンダーであることに関係する烙印のため、慎重な姿勢を維持し、その過去について発言しないよう助言されている。
3.99 イランで行われているSRSの件数に関して信頼できる情報は入手することができない。 2014年のBBC報道では、ある医師の発言が引用されていた。この医師は毎年1人でそのような手術を200件以上行ったと主張していた。人権活動家とNGOは、当局と家族がゲイとレズビアン及び他の性不一致者に対し、その性的指向又は性同一性の曖昧性がもたらす法的及び社会的結果を避けるため、SRSを受けるよう圧力をかけていると報告している。
また、監視団も、国際的な臨床基準に達しておらず、長期に亘る合併症を招いている手術に関する報告を例に挙げて、SRSを提供する医療機関の質に関して懸念を提起している。失敗した手術に耐えている人々が利用できる法的救済策はほとんどない政府が資金支援を行っているにもかかわらず、SRSとホルモン治療の費用は依然として多くの人々の資力を超えている。SRSを受けない人々はしばしば家族から見捨てられ、その多くは生き残るために売春の道を選ぶ。SRSを受けず、挿入を含む売春に従事しているトランスジェンダーの女性は、さらに虐待や嫌がらせに晒されやすい状態に置かれた上、男性とみなされていることから同性愛者として逮捕及び訴追されるリスクに直面している。


日本語訳(法務省入国管理局)

http://www.moj.go.jp/isa/content/930003966.pdf

原文

https://www.ecoi.net/en/file/local/1437309/1930_1530704319_country-information-report-iran.pdf


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