内海聡氏の本を、「GID」の私が読んで考えたこと。(精神科やDSM批判?)

ネット通販で販売禁止になるなど、社会的に「問題」な医師に、内海聡さんという方がいます。最近は反ワクチン本が売れていると聞きます。

私の親族の精神科医も「お金をもうけさせるだけなので、試しに本を買うのすらやめてほしい」というくらいです。(なぜここまで言われるかはここでは省略します。シンパらからの攻撃も怖いので⋯)

とはいえ私は、もとよりそうした「宗教現象・新宗教」に興味があり、また、自身が一応GID(性同一性障害※)という診断もされたことがありますので、読んでおかなければ、

と、中古で下記の本を買ってみました。

●2012年「精神科は今日も、やりたい放題」

●2018「まんがで簡単にわかる!テレビが報じない精神科のこわい話~新・精神科は今日も、やりたい放題」


GIDには直接触れられていませんが、DSM自体を批判するというのは、「脱病理化」の人にとっては興味深いのではないでしょうか。(その主張自体は陳腐なものとは思いますが⋯)

以下、感想です。

※2013年に米国精神医学会が作成したDSM-5ではgender identity disorder(性同一性障害)に代わりgender dysphoria(性別違和・性別不合)が採用


1.病気を十把一絡げ、な印象

精神病にも、「非定型うつ」から「うつ病」「PTSD」あるいは「統合失調症」あるいは「GID」など、強度や性質が異なるものが様々あります。

マンガ本の場合、薬批判・断薬推奨をするにしても、「うつ」関連が例にあげられることが多く、これをそのまま「統合失調症」などに適用すると、大変なことになるだろうなと簡単に予想がつきます。とくに、軽症の統合失調症の人は、薬を使えば重症化しないような方法もできていると聞きますので、「断薬」するとどうなるかは・。

なお、書籍版では10ページほど統合失調症にも割かれていますが、その内容は「?」なところもあるようです。


2.薬を十把一絡げ、な印象

親族が精神科医・薬剤師なのですが、精神科の薬の進歩は、この30年くらいで目覚ましい、30年前の薬などはクソだが、今は全然マシ、といった話をします。

こうした薬の進化・進歩を無視し、いたずらに薬の問題性だけあげつらっています。

現在の「ワクチン批判」の主張と重なるところがありそうです。

ただ、一部の精神科医はたしかに過剰に薬を処方するので、それへの警鐘として減薬を薦めるのは納得できるようです。が、それにしてもあおりすぎ、のようです。(本を売るため?)


3.主観と科学

精神科は「主観」によるだけ、といいます。

さて、「主観」とは何でしょう。自分なら主観によらず、客観できるのでしょうか。

主観の入らない医学はあるのでしょうか。(すみません、私は門外漢ですが⋯)


4.因果関係と相関関係

たとえば、「精神科で処方される薬」が「自殺」につながってるようにほのめかす記述が多いです。因果関係というものです。

しかし、本当に因果関係なのでしょうか?

「精神科にかかるような人は自殺をしたいと考えている人が一般より多く、それゆえ薬も処方され服用していることも多く、あるいは薬を断薬した結果、自殺することが多い」という場合。

これは「精神科で処方される薬」が「自殺」を導く因果関係があるのではなく、「自殺の多さ」に関係するという相関関係があるだけ、と言えるでしょう。

もちろん因果関係なのかどうかは検証されるところはありますが、その検証も、「主観」に依るところが多そうです。

なお、自殺に関して「相関関係」「因果関係」を考えるきっかけになる本に、社会学の古典、デュルケーム『自殺論』がありますね。


5.「DSM」を根底から批判

マンガ P77「今ある疾患理論、薬物理論というのは現在でも全て仮設であり、証明されたり因果関係を導きたりするものが何ひとつないのです。」

アメリカの精神疾患診断マニュアル(DSM)を、「患者を家畜化するために科学的な根拠のない適当な理論で疾患の種類を増やしている」と、すべてデタラメであると主張されております。

このDSM、いわゆるトランスジェンダー界隈で、トランスジェンダリズム派や脱病理化派やGID(性同一性障害)派やその他思想家・運動家の人たちの間で、それに病名が掲載されるかされないかが大注目の的となってきました。

詳しくは省略しますが、2013年に米国精神医学会が作成したDSM-5ではgender identity disorder(性同一性障害)に代わりgender dysphoria(性別違和・性別不合)が採用されたことで、「脱病理化が進んだ!」と喜ぶ人や、「SRS性別適合手術やホルモン療法の保険適用が遠のく」といった悲観の声が多く見られました。


しかし、

そもそも「GID」や「GD」でなく、「DSM」自体を批判しようという観点で運動している人(→おもに脱病理化の人)はいるのかな?

とふと思いました。


※ちなみに、私個人的には、「医療へのアクセス・健康保険」をいう観点から、「GID、GD」はある程度残しておくべきだと思います。

※また、イスラム教を国教とする国では、「Gender Dysphoria」の場合に限ってトランスジェンダー・性別適合手術を認める向きもあるようですので、何かしらの医学的な概念は残っていた方がいいかもしれません。

※「DSM」を完全に無に帰すと、GID含む精神病はすべて「医療へのアクセス・健康保険」が適用されなくなりそうな気がします。何が何でも国が支出する医療費を削減したい人には、都合のいい主張になりそうですね。

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