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障害者雇用の実態調査からわかること

こんにちは!!
キャリアートの中塚です。
いつもご覧いただき、ありがとうございます😄

今日は厚生労働省職業安定局 障害者雇用対策課から公表されている『平成30年度 障害者雇用実態調査結果』から実態データに即して現在の障害者雇用における課題を考察してみたいと思います。
※データは厚生労働省職業安定局 障害者雇用対策課『平成30年度 障害者雇用実態調査結果』を参照。

1.障害者雇用実態調査とは何か?

まず、そもそも障害者雇用実態調査結果とは何か?

1) 目的
この調査は、主要産業の民営事業所の事業主に対し、雇用している身体障害者、知的障害者、精神障害者及び発達障害者の雇用者数、賃金、労働時間、職業、雇用管理上の措置等を産業、事業所規模、障害の種類、程度、障害者の年齢、性別に調査し、今後の障害者の雇用施策の検討及び立案に資することを目的として行った。

要するに民間企業に対して、障害者雇用の実態調査をして、障害者雇用の促進状況を把握するとともに課題を分析して今後の施策に役立てようというものです。

調査の対象はというと、

2) 調査の対象
全国の日本標準産業分類(平成 25 年 10 月改定)の大分類(「農業、林業」「漁業」「鉱業、採石業、砂利採取業」「建設業」「製造業」「電気・ガス・熱供給・水道業」「情報通信業」「運輸業、郵便業」「卸売業、小売業」「金融業、保険業」「不動産業、物品賃貸業」「学術研究、専門・技術サービス業」「宿泊業、飲食サービス業(バー、キャバレー、ナイトクラブを除く)」「生活関連サービス業、娯楽業(生活関連サービス業のうち家事サービス業を除く)」「教育、学習支援業」「医療、福祉」「複合サービス
事業」「サービス業(他に分類されないもの)(外国公務を除く)」)に属する常用労働者5人以上を雇用している民営事業所から無作為に抽出した約 9,200 事業所を対象とした。

要するに業界を問わず、従業員が5名以上の民間企業を対象に9,200事業所にアンケート調査を実施したというものです。

アンケートの回収結果は、6,181事業所、回収率67.2%でした。また、この調査はあくまでも平均的なデータであり、参考値にしかならないことを留意しなければいけません。

2.障害者の定義

1)身体障害者
原則として身体障害者手帳の交付を受けている者をいうが、身体障害者手帳の交付を受けていなくても、指定医又は産業医(内部障害者の場合は指定医に限る。)の診断書・意見書により確認されている者も含む。
◇障害の種類

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◇障害の程度

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2)知的障害者
児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医又は障害者職業センターによって知的障害があると判定された者をいう。

3)精神障害者
精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者(発達障害のみにより交付を受けている者を除く)。
また、上記以外の者であって、産業医、主治医等から統合失調症、そううつ病又はてんかんの診断を受けている者をいう。

4)発達障害者
発達障害者とは、精神科医により、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害等の発達障害の診断を受けている者をいう。

※利用上の注意点
◇重複障害の計上
平成30年度の調査では、それぞれの障害に重複して計上している(例:精神障害と発達障害の重複障害のある者はそれぞれで集計)。
そのため、身体障害者、知的障害者、精神障害者、発達障害者の合計と調査対象となった事業所に雇用されている全障害者数は一致しない。

3.身体障害者の実態調査結果

アンケート結果から推測する就労中の身体障害者数は、

『40万6千人』

◇産業別

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卸売業・小売業 23.1%
製造業 19.9%
医療・福祉 16.3%
サービス業 14.6%

◇身体障害者の職業

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事務的職業 32.7%
生産工程の職業 20.4%
専門的・技術的職業 13.4%
サービスの職業 10.3%

職業の分類においては補足説明をさせていただきます。

1)事務的職業
一般事務、受付、秘書、電話応対、経理事務、営業事務、データ入力など
2)生産工程の職業
生産設備の制御・監視、製品製造・加工処理、検査など
3)専門的・技術的職業
情報処理・通信技術者(IT関連)、研究者、建築・土木・測量技術者、医師、弁護士など
4)サービスの職業
介護サービス、飲食・調理、接客、ビル管理人など

◇障害の種類別

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肢体不自由 42.0%
内部障害 28.1%
聴覚言語障害 11.5%

◇週所定労働時間別

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30時間以上 79.8%
20時間以上30時間未満 16.4%
20時間未満 3.4%

◇週所定労働時間別の平均賃金

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30時間以上 24万8千円
20時間以上30時間未満  8万6千円
20時間未満 6万7千円

4.身体障害者の雇用における課題

雇用における課題を話す前に、この考察はあくまでも個人的な見解ということを留意いただきたい。

私はこの身体障害者に関する実態調査を見た時に障害者雇用への社会的な意識や認知の低さ、無意識の偏見のような存在を感じとった。

現在、健常者の20代の『平均年収345万円』、仮に12ヶ月+賞与2回と想定すると『月24.6万円』となる。

30時間以上の就労が可能な身体障害者の平均月額は月24万8千円、無期契約の正社員が49.3%においては健常者の20代より収入は高く、身体障害者の勤続年数は平均10年2ヶ月という点から、どの環境においても経験・スキルを蓄積し、戦力としての就労が実現できることを示している。

しかしながら、業界は卸売業・小売業、製造業、医療・福祉、サービス業に偏り、BtoC領域、または生産工程を担う職場に留まり、健常者と同等、またはそれ以上の経験・スキルがあるにもかかわらず、職業選択の自由が限られていると分析した。

身体障害者雇用における法定雇用率は、一般消費者への評価や安価な労働力としての雇用は後押ししているが、障害者の職業選択の権利や社会的立場を向上させるまでの成果は見えてきていないのではないか?

5.知的障害者の実態調査結果

アンケートから推測する就労中の知的障害者の人数は、

『18万9千人』

◇産業別

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製造業 25.9%
卸売業・小売業 23.7%
医療・福祉 21.9%
サービス業 14.0%

◇知的障害者の職業

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生産工程の職業 37.8%
サービスの職業 22.4%
運輸・清掃・梱包等の職業 16.3%

◇週所定労働時間別

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30時間以上 65.5%
20時間以上30時間未満 31.4%
20時間未満 3.0%

◇週所定労働時間別の平均賃金

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30時間以上 13万7千円
20時間以上30時間未満  8万2千円
20時間未満 5万1千円

6.知的障害者の雇用における課題

知的障害者に関する実態調査を見て気付くのは、

身体障害者が週所定労働時間30時間以上の場合、24万8千円稼ぐのに対し、知的障害者が同様の時間働いても、13万7千円しか収入が得られないという点である。

身体障害者は事務的職業の割合が多く、知的障碍者は圧倒的に生産工程の職業が多くなっている点が、月給の差に繋がっていると思われるが、果たしてそこまで生産性は変わるのだろうか?

生産工程の職業の平均年収は254万~400万程度、『年収254万』と仮定した場合の月給は、『18万1千円』である。
-4.4万円の生産性の差、または業務サポートが発生していることになる。

4.4万円とは月4日分に該当するが、果たして毎月毎月4日分の生産性の差と業務サポートが発生しているかは懐疑的である。

評価制度や昇給レンジの賃金カーブは生産性の差や業務サポートに合わせ、尻上がりな設計が必要かもしれない。

7.精神障害者の実態調査

アンケートから推測する就労中の精神障害者の人数は、

『20万人』

◇産業別

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卸売業・小売業 53.9%
医療・福祉 17.6%

◇精神障害者の職業

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サービスの職業 30.6%
事務的職業 25.0%
販売の職業 19.2%
生産工程の職業 12.0%

◇週所定労働時間別

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30時間以上 47.2%
20時間以上30時間未満 39.7%
20時間未満 13.0%

◇週所定労働時間別の平均賃金

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30時間以上 18万9千円
20時間以上30時間未満 7万4千円
20時間未満 5万1千円

8.精神障害者の雇用における課題

精神障害者に関する実態調査を見て気付くのは、

身体障害者が週所定労働時間30時間以上の場合、24万8千円稼ぐのに対し、精神障害者が同様の時間働いても、18万9千円しか収入が得られないという点である。

事務的職業かサービスの職業、販売の職業、生産工程の職業かによって30時間以上働いても賃金が大きく異なることが分かる。

サービス、販売の職業の『平均年収291万円』『月給20.7万円』である。

しかし、サービス、販売の職業は健常者と障害者で業務内容に大きな違いが生まれるのだろうか?

30時間以上勤務が可能な障害者であれば、業務内容は健常者と月数万円の差が発生するものかという点については懐疑的である。

事務的職業+障害種別により採用段階で収入が異なっており、同一賃金同一労働の観点が疎かになっているのかもしれない。

9.発達障害者の実態調査

アンケートから推測する就労中の発達障害者の人数は、

『3万9千人』

◇産業別

発達障害産業別

卸売業・小売業 53.8%
サービス業 15.3%
医療・福祉 11.6%

◇発達障害者の職業

発達障害職業

販売の職業 39.1%
事務的職業 29.2%
専門的・技術的職業 12.0%
サービスの職業 10.5%

◇週所定労働時間別

発達障害労働時間

30時間以上 59.8%
20時間以上30時間未満 35.1%
20時間未満 5.1%

◇週所定労働時間別の平均賃金

発達障害平均賃金

30時間以上 16万4千円
20時間以上30時間未満 7万6千円
20時間未満 4万8千円

10.発達障害者の雇用における課題

発達障害者に関する実態調査を見て気付くのは、

卸売・小売業に53.8%と半数以上の人材が集まっており、事務的職業と専門的・技術的職業を合わせて41.2%を占めているが、30時間以上勤務する人の給与が月16万4千円と身体障害者と比較してー8万4千円も低い点である。

身体障害者の中で、事務的職業と専門的・技術的職業46.1%と差ほど大差はないにもかかわらず、収入面は大きな差がついている。

身体障害者は製造業が多くなっているが、業界によってここまで大きな収入格差が生まれるとは考えづらく、採用段階からの障害種別による求人票の給与水準に差があり、就業後も変わらずに流用されているのかもしれない。

11.雇用実態調査の分析結果まとめ

あくまでも統計データをもとに分析しており、一概に全て該当というわけではないが、大きな課題としては3点があげられる。

1)障害者雇用への意識の浸透
2)企業側の障害種別に応じた潜在的評価の存在
3)企業側の評価・昇給制度の構築

1)障害者雇用への意識の浸透

これは障害種別に問わず、職種問わず、雇用する業界が卸売・小売業、製造業、医療・福祉業、サービス業偏りがあることから推測することができる。

厚生労働省は、障害者雇用の法定雇用率未達企業を公表することで、雇用圧力を強化しており、BtoCなど一般消費者と密接に結びつく業界において雇用が促進されている。

ただ、一方でBtoC以外の業界での雇用は促進されておらず、戦力としての障害者雇用という観点はまだまだ根付いていないことが推測される。

2) 企業側の障害種別に応じた潜在的評価の存在

私も実態調査のデータを見るまで着目した事がなかったが、成果物の大小を無意識の中で脳の機能の良し悪しで決め付けているのではないだろうか?

つまり、健常者を100としたときに、100以下であれば成果物は小さくなるという意識の存在である。

例えば、身体障害者で下肢不自由であれば車椅子用のバリアフリー環境があれば、成果物は多く、昇進や昇給もあり得る。

精神障害者であれば、プレッシャーやストレスに弱いから責任を任せられない。成果物は少なく、昇進や昇給はあり得ない。

知的障害者は、単純な軽作業しか任せられないから成果物は少なく、昇進や昇給はあり得ないなど。

無意識の中でカテゴライズが実施され、業務や給与の設定が採用段階で既に行われているのではないだろうか?

身体障害者は30時間以上の勤務で平均月給24万8千円、精神障害者は平均月給18万9千円、発達障害者は平均月給16万4千円である。身体・精神・発達障害者を比較すると、障害種別にかかわらず、卸売・小売業が多く、事務的職業と専門的・技術的職業が一定率を占めている。

果たして-8万4千円も差がつく仕事とは何なんだろうか。

管理職など責任が伴う役割は別として、そこまで大きな収入差に繋がる業務の存在を見出すことは個人的にはできていない。

3)企業側の評価・昇給制度の構築

同一賃金同一労働の観点から見ると、賃金のマイナス分は業務の種類、範囲、難易度、成果物、責任などが該当すると考えられる。

しかしながら、サービスの職業は業務の細分化が難しく、障害の有無や障害種別により、取り組む業務内容に大きな差が生まれるとは考えづらい。

もちろんゼロではなく、業務の範囲やサポート度合いに差はあるが、月4万も10万も差が生まれ続けるものなのかというのが個人的な見解である。

障害の有無や障害種別、度合いにより、採用時の基本給が異なる点は何ら異論がない。

それは障害種別や度合いにより、教育にかかる時間が大きく異なるからだ。

ただし、その後の昇給や昇進の賃金カーブにおいては教育期間の終了が近づくにつれて、同一賃金・同一労働の観点へと近づいていくのが適切ではないだろうか?

身体障害者の平均勤続年数は10年2ヶ月、精神障害者は3年2ヶ月、発達障害者は3年4ヶ月から見ると、仮に精神障害者が平均勤続年数10年2ヶ月働いたとすれば、平均賃金は身体障害者と同等になるのだろうか?

逆に評価・賃金制度が整っていないという点が平均勤続年数が伸びない原因かもしれない。
もちろん、そんな簡単な話ではないのは承知しているが。

以上、障害者雇用の実態調査から現状の課題について考察してみました。

長文をご一読いただき、ありがとうございました。
障害者雇用数が過去最高を更新し続ける中で、本来求めるべきお互いの価値を活かしあう社会には程遠く、企業側の認識の浸透も不十分であると考えている。

そのため、認識の浸透がなければ、採用時も採用後も制度設計は曖昧なままで法定雇用率を達成するがために進んでいると言わざるを得ない。

実際にコンサルティング大手のアクセンチュアの分析では、障害者雇用の戦力化に積極的に取り組んでいる企業と消極的な企業を比較すると、積極的な企業は、売上では28%、純利益では2倍、利益率では30%高いことがわかっており、株主総利回り(TSR)でも2倍の差がついている。
※参考資料

もちろん米国の調査のため、一概には言い切れないが、お伝えしたいこととしては、戦略化というテーマにもとで企業に適した障害者雇用の在り方を追求した結果が企業評価を押し上げるという点である。

この点は諸外国問わず共通事項であり、企業における障害者雇用の有用性は経営戦略にとって効果的であり、全ての企業は積極的な採用に動くという点で議論の余地はないと考える。

ただし、障害者の戦力化を前提とした採用活動でなければ意味がなく、従来通りの法定雇用率ありきの採用では、企業の重荷にしかならないだろう。

しかし、これは健常者、障害者問わず同じで、成長戦略に即さない採用は企業の衰退を意味しており、戦力化を前提に採用活動をやり切れたとすれば、有意義な結果が期待できるだろう。

引き続き障害者に焦点を開け、障害者の社会参加と活躍を後押しできる存在でありたいと思っていますので、ぜひ応援のほど、よろしくお願いいたします!!

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