見出し画像

稀代のドライバー、キミ・ライコネン

2005年の日本GP。
17番グリッドからの、奇跡の優勝。

あの時から、すごいドライバーだと目が離せなくなった。

あまり感情を表に出すことはなく、言葉も少ないが、
レース中の無線では言葉を荒げることもあった。

社交的なドライバーがほとんどを占めるF1において、
独特な雰囲気と天性の速さを持った人。
そんな印象である。

いったい彼の、何がファンを引き寄せたのか。

自分なりに見つけたものを言葉にしてみた。

・強靭なメンタル
・常に自分に正直にいる
・政治的な動きをしない
・メディアを利用して他者を攻撃(口撃)しない
・フェアでクリーンなレースをする

強靭なメンタル

これはいくつものレースを見てきて思う。

記者会見でも、レースの走りを見ても
精神的な動揺を感じるものは(傍からみると)
見受けられなかった。

わずか1ポイントで逆転チャンピオンに輝いた2007年でも、
動揺や焦りは全く感じなかった。

むしろ、マクラーレンの2人(ハミルトンとアロンソ)のほうが
気負いしているようにも見えた。

決勝の走りにも、精神的動揺を感じるものが見られたことは、
今までのレースの中で、覚えている限りなかったと思う。

F1デビュー戦で、レースが始まる20分前まで寝ていた
というエピソードも、メンタルの強さを感じる。


常に自分に正直にいる

これが彼の根幹にある「生き方」だと思う。

「媚びを売るってことが一切できない男だ。一度もね」(ウッフェ・タグストロム)
書籍「知られざるキミ・ライコネン」より

一つ大きな特徴がある。

それは、
承認欲求を満たすような行動はしない
ということである。

「まわりに自分がどう思われているかなんて、興味ない。(以下略)」

自分がスターだなんて、一度も思ったことすらない、と彼自身は言う。
書籍「知られざるキミ・ライコネン」より

つまり、他人から賞賛をもらうことは
彼にとって重要ではない、ということである。

ましてや、世界的にスターだと持ち上げられることは
彼にとって何の意味もない
、ということだ。

日本をはじめ、世界的にもファンの多いドライバーだが、
当の本人はそのことについて、

「なぜ彼らが僕を好きなのか分からない」
「たぶん、僕が僕だからだろう。一貫して変わっているというか、奇妙と言うか、何とでも呼んでいいけどね!」
https://jp.motorsport.com/f1/news/consistently-odd-raikkonen-doesnt-know-why-f1-fans-liked-him/7618261/

と語っている。

SNSも、彼はずっとやらなかった。

Instagramのアカウントが立ち上がったとき、全世界のファンが驚愕した。
「あのキミがSNSをやるの!?」と。

この「他人から自分がどう思われているかは全く気にしない」という考え方が
彼のメンタルを強くしている要因だと、僕は思う。


政治的な動きをしない、メディアを利用して他者を攻撃(口撃)しない

F1は大金の動くスポーツである。

そうなると、駆け引きというものが展開される。
激しい舌戦を繰り広げ、和解して、対立する。
昨日の敵は今日の友。
そんな中では、いかに頭脳戦を繰り広げるか…が重要になったりする。

自分が有利になるための行動を取る人々が、
関係者、ドライバーにも多い。

キミはどうだったか?
そんな動きは全くなかった。
自分に正直でいるのを曲げることはなかった。

チャンピオン争いの渦中でも、チームや他ドライバーへ
プレッシャーを与えるような言動は見受けられなかった。

「他人を言葉巧みに動かす」ことはせず
「自分の行動で、結果で周りを納得させる」…
という感じだった。

「キミが2003年にチャンピオンになれなかったのは、メルセデスのせいだった。その時に彼は私たちを責める素振りを一切見せなかった。(以下略)」
書籍「ICEMAN アイスマン キミ・ライコネンの足跡」より

フェアでクリーンなレースをする

レースというものは、時に激しいバトルになる。
相手との激しい競り合いがある。

ドライバーによっては、相手をコース外に押しやるような
いわゆる「ダーティ」な動きをすることもある。

キミにはそんな動きはなかった。
いつだって相手へのスペースは必ず残していた。
どんな激しい、サイドバイサイドの戦いでも。

長年、激戦を演じてきた
アロンソ、ハミルトンの2人も
キミとの走りを「フェアだった」とインタビューで語っていた。

2012年、インテルラゴスの1コーナーで
シューマッハとのバトルになったとき、
接触ギリギリのところまで競りながらも、当たることはなかった。

あれこそがキミの戦い方だ、と喜んだ覚えがある。


自分なりに生き続けてきた

結局のところ、彼は
自分の生き方・考え方を曲げずにやってきた
・他人からの賞賛に期待しなかった
・他人に干渉せず、他人のことをリスペクトした

ということだろう。

言葉にすると簡単な単語になるが、実行するのはとても難しい。
難しいことだから、それをやってのけるキミを皆が驚き、
惹かれていったのだろう、と思う。

誰しも、自分なりに生きたいと思うけど、そうはいかない出来事も多い。

そんな世の中でも、自分なりに生き続けてきた人がいる。
それが人気の要因の一つのような気がする。

少なくとも、僕はそうだ。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?