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三日目 無くなっても何とかなるらしいの巻 ~先生、それ痛いっす2~

 起床!!!!本日の目覚めは6時半ごろ。昨晩は膝が曲げられない中でも寝られる寝方を試行錯誤して、とりあえずは眠りにつけたのだが……やっぱり眠りが浅かった。覚えてるだけでも5度、夜中に起きた気がする。
 一番しんどいのは腰だった。ありゃ痛い。

 この生活をしてると、腰を痛めないかが不安になってくる。日中はずっと座ってるか寝ている訳だから、腰が固まってしまって痛い。ちょくちょく体勢を変えたりはしてるのだが、退院するまでに痛めないといいな。

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 今朝は例のニヤニヤ医者は来なかった。フン。奴め、逃げたか。

 朝の検診で、私が氷嚢を使えないという問題が社会問題として取り上げられた。
 ホントは足を冷やしたほうがいいのだが、なんせ氷嚢を載せると足がいてえのだ。足の痛みは昨日よりもひどくなってる気がする。これ以上伸ばすと痛いという境界も、段々狭まってきてるような感じがあって、昨日より生活は不便だ。きっと足の中で膿を出すための管が当たっているのだろう。
 もうちょっと管の方にも主張を抑えてほしいもんなのだが、こちらもお世話になってる身だから、贅沢は言えん。

 気分としてはあれだな。「村を守ってくれてる傭兵が、村の中では無銭飲食を繰り返している」みたいな感じ。あるよね、そんな気持ち。

 まあそれはいいのだ。とにかく氷嚢が使えないにしろ、足を冷やさなきゃいけないのに変わりはない。看護師さんとの相談の末、保冷剤を包帯に差し込む事で落ち着いた。

 ………何というか、そんなやり方でいいのだろうか。あ、でもほんのり冷たい。

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 今日の昼は筑前煮。優しい出汁が体にしみこむ。鶏肉も美味い。デザートのフルーツも、色々種類があって美味かった。

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 昼飯の後は風呂まで暇だったので、デイルームに行ってみることにした。デイルームはその階の患者の共通の施設で、電子レンジや給湯器があったり、デカい窓から景色が見えたりする。
 せっかくなので下のコンビニで購入したこれ↓も飲んでみよう。車椅子でいざ出陣。

ホテルなどでよく売ってるイメージ。日常生活ではわざわざ買ったりしないので、これを飲むとちょっと旅行気分になれる。

 着いた。早速粉を紙コップに入れ、お湯の蛇口をひねる。しばらくするとお湯が出てきたので、紙コップの「ここまで」のラインまでお湯を流し込む。普通に紙コップなもんだから、すぐに熱が指まで伝わってきて熱い。とりあえず机まで運ぼう。

 ……しまった。ここで漸く気が付いた。

 片手だと、車椅子押せないじゃん!!!!


 しょうがないので、片手でタイヤを押す→逆の手にコップを持ち変える→空いた手でタイヤを押す→またコップを持ち変える のループで机に向かった。えらく時間を食ってしまった。それこそ、アイスコーヒーになってしまうんじゃないかというほど。

 デイルームが思ってた以上に居心地が良いため、勉強道具も持ってきてしばらくのんびりすることにした。自分のベッドも居心地が悪い訳じゃないんだが、やっぱり同じ場所にずっといるのは息が詰まる。

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 しばらくすると他の患者さんも来た。全員かなり古株でいらっしゃるらしく、今週の頭に入院し始めた私以外は顔見知りの様。
 周りの世間話に耳を傾けると、「俺は腎臓が片っぽねぇ」やら「私はこの間大腸全部取ったので」やら中々ヘビーな内容が聞こえる。

しかも、それに「大腸なら無くなっても何とかなるもんね」なんて返してる。


 




多分ならない。


 分からない。何とかなるのか?分からないが、とにかく色んな人がいるもんだ。皆さま苦労してらっしゃる。心の中で感嘆していると、私もちょくちょく話しかけられた。
 古株の患者さん方はこの病院事情にも詳しいようで、中々面白い裏話も聞けた。私の入院している病院は実は結構凄いところらしく、日本に6人しかいない難病の患者の治療もしたことがあるんだとか。かなり遠くからこの病院に来る人もいるようで、整った設備とサービスに納得がいった。

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 相変わらずハードモードな風呂を済ませると、夕食が出てきた。今日はミックスフライ。アジフライで、久々の魚らしい風味に感涙を覚えた。今日は珍しく、デザート枠はお休み。いや、しば漬けがデザートだったのかも。

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 夕飯の後エドはるみのネタを観ていたら、例の医者が来た。お久しぶりね、先生。今日は一人でいらしたみたい。
 「足の痛みどう?」と聞かれたので、素直に「足を伸ばそうとすると痛いっす」と答える。今思えば軽率だった。俺の答えを聞いた医者が口を開く。

 医者「ふーん、痛いんだ……。」

 医者「じゃあ、ちょっとやってみて。」






え?




 そんな訳で、痛いと分かり切っていることを突然医者の前でやる羽目に。
 前からうすうす感じてはいたけれど、多分この人は人の痛みが分からないんだと思う。………いや、違うな。
 多分分かったうえで、ちょっと楽しんでる。ほら、今だってニヤニヤしてる。だって、わざわざやらなくても分かるじゃん。そのために言葉ってある訳で。

 痛かったよ、先生……。

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 まあそんなこんなで今日も1日が終わる。医者曰く、もしかしたら明後日に足の中の管が取れるかもしれないそうだ。もうちょいの辛抱、頑張ろう。

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