医師の投資  基本の考え方編


はじめに

医師というのは一見収入が多いようですが、開業医となると借入返済や、税金、医療機器の購入費など出ていくお金も大きく、それほど収入の割には自分に残るわけではありません。正直、初期の頃はいくら働いても税金や借金返済のため、お金は残らないように感じるかもしれません。通常の新規開業の場合黒字化するのに数年かかるとされています。

開業してハードな診療の日々を過ごしていれば、いつか借金の返済は終わりますがゆとりのある生活とは感じられないかもしれません。体だって無理のさせっぱなしでは壊してしまいます。

僕自身開業して5年目の頃、そのように感じ、今後このまま数十年も同じように働き続けるのは困難だと判断しました。何かを変えていかなければならないと思いたったのです。

実際個人事業主である開業医は病気などで休むとなると全く収入が途絶えてしまいますその間も従業員への給与の支払いなど出ていくものは出ていくので不安な要素も多いのです。勤務している間には感じたことのないようなハードなストレスを感じる日々でした。

そんなある日、僕は背中に強い痛みを訴え数日間寝込んでしまうような体験をしました。開業して5年程たった頃です。結局は尿管結石だったので結石が流れた後はすっかり痛みが消えたわけですがこの体験は僕に強い危機感を抱かせました。

もし自分に何かあった時に誰が家族を養っていくのか?もし仕事ができない状態になっても安定した収入を得るにはどうしたらよいのか?そのようなことを真剣に考えるようになったのです。

色々な方法を検討した結果、僕は「将来まったく仕事をしないでも、ある程度余裕のある生活が可能な収入を投資から得ること」を目標とすることにしました。このことが現在の投資法を築く上でのきっかけになっています。


ラットレース

らっと

ロバートキヨサキ氏の一連の著作には「ラットレース」という言葉が良く出てきます。
要約すると
1. 仕事で働いた結果、給料を得る
2. 生活費や嗜好品などで稼いだ給料を使う
3. 生活や支払いのために、また働く

この繰り返しです。このサイクルから抜け出せず、ハムスターが車を回し続けるような様を指して、ラットレースとたとえたわけです。この世の中のほとんどの人はこの輪の中でクルクルと回り続けています。そして消耗していきます。まずはこの輪の中から抜けなければなりません。

ラットレースから抜け出す一つの方法は、得た収入の一部を投資して、お金がお金を生み出す状態を作っていくことです。そして、徐々に投資金額を増やし、資産を形成していきます。いずれ「投資から得るお金 > 生活に必要なお金」となることを目指します。

現在の仕事による収入で生活が成り立っていると仮定すると、その額以上の収入を投資から不労所得として得られるようになれば、ある意味、仕事をしなくてもよい状態となります(経済的自由)。この状態をラットレースから抜け出した状態といいます。

この状態になっても仕事を続ける、続けないは本人の意思によります。もう仕事をしないでのんびりしたいと思えばアーリリタイアするもよし、働き続けたければ続けるもよいかと思います。僕の場合は自分の仕事のスキルを失いたくないので現状、1週間のうち半分の3.5日を働くようにしています。これは将来的には減らしていく予定です。

医師の場合、使命感を持ってなった場合が多いと思うので、仕事は続ける人が多いとは思いますが、経済的自由を得た後に働くのはそれ以前と比べると精神的にはずっと楽になります

年齢的に仕事がつらくなってきたら診察日を減らすこともできますし、開業医がとりにくい長期の休みも取りやすくなります。資金的な余裕もできるため医療機器への投資もずっとしやすくなります。

あなたが開業医ではなく勤務医であれば不労所得を生み出せるようになったのち、常勤からフリーランスに移行して、働きたい日だけ働くのもいいでしょう。

医師として働く日々がある意味、趣味に代わります。金銭的な余裕があるため自分の目指す医療を追求することもできるし、逆に仕事を大幅に減らしても構わないのです。金銭的な余裕は選択肢の幅を大きく広げます。

キャッシュフロークワドラント

これは前述のロバート・キヨサキ氏のキャッシュフロークワドラントという図です。この図には経済的、時間的自由を得るための重大な秘訣が示されています。この図を見たとき僕は大きな衝撃を受けました。経済活動をしているあるあらゆる人を以下の図の中に当てはめることができます。

クアドランと


E…従業員(employee)            B…ビジネスオーナー(businessowner)   
S…自営業者(self-employed)        I…投資家(investor)

人の経済状況、収入を得る方法は、上の4つの部分のいずれか1つまたは複数のグループに属しているという考え方です。

通常の従業員など、会社に雇われている人や医師でいえば勤務医などはの部分に属します。この部分に属する人たちはいくら高給を得ても働かないと収入が入ってきません、このためこの部分の属性だと経済的自由を獲得するのが難しくなります。
入ってくる収入を使い続け、また生活のために働く、無限の輪の中にいます。

の部分に属する人は自営業者です。開業医や弁護士で開業している人、自分でビジネスをやっている人もここに当てはまります。

自営のため、ある程度自分のがんばりにより高収入を得ることもできますが、ビジネスシステムの中に自分が取り込まれているため時間的自由は作り出すことが困難です。Eに属している人よりもたとえ収入は多くても、時間の制約は多いかもしれません。また自分が病気などになると収入が途絶えてしまいます。


に属する人はビジネスオーナーです。ある程度自分で事業を立ち上げたら人に任せ、次の事業を立ち上げていきます。複数の事業を所有していますが経営は任せているため時間的な自由を持っています。また複数のビジネスより収入があり経済的自由を確立しています。例としてはフランチャイズのオーナーなどでしょうか。ビジネスの仕組みを作り上げる能力が必要です。
 
ここに属するのは投資家です。お金を働かせることによってお金を稼ぐという知恵を使います。他の3つのクアドラントのどこに属していても知識によってIに属せるようになります。経済的自由、時間的自由を達成する可能性を高めることのできる属性です。

ロバートキヨサキ氏は左側のEやSのグループから右側のBやIのグループに移行することによって経済的自由、時間的自由を達成できるとしています。

通常医師は時間的制約も多く、診療以外に複数のビジネスオーナーになることは困難だと思います。Bグループに移行できるのはある意味、少数の特殊なビジネスの才能を持っている人間でしょう。

医師としての仕事を続けながら経済的自由を達成するにはIグループへ属することが現実的だと思います。

では実際にどのような投資をすればよいのか?何から始めればよいのか以降それについて説明していきます。

医師のための具体的投資術

僕は自分の医院を開業して5年程たった頃、自分の経済的自由を求め投資を始めました。その後15年間あらゆる投資を行い学んできました。投資信託、不動産、日本株、米国株、中国株、FX,先物取引、CFD、商品(金、原油など)オプションなど本当にいろいろなものを経験しました。

そして投資を始めることによって大きなメリットをいくつも得ることができました。

金銭的な余裕ができる。現在では所得が高いと半分以上税金に持ってかれてしまいますが、投資収入は分離課税で20%の課税(現在)です。これはかなり大きいと思います。

心の余裕ができる。投資による複数からの収入の流れは心の余裕を生みます。病気などで長期診療を休まなくてはならない事態になってもお落ち着いて対処できるのではないでしょうか。

時間の余裕ができる。体に無理をして働く必要がなくなるので休みを増やすなど時間に余裕ができました。長期の休みなどもとりやすく、夏休みや正月など旅行にも行きやすくなりました。休診日を作り、平日のゴルフなど楽しみも増えました。金銭的な余裕もあるため代診の医師に来ていただき自由な時間がずいぶん増えました。

金融、経済、会計の知識が増える。これが最大のメリットかもしれません。実際に投資するとやはり損したくないので勉強します。そしてその勉強が新しい富を生み出してくれます。知識は一番の財産です。

投資の知識は始め難しく感じるかもしれません、しかし根っこの部分がわかってくるとあとは極めて理に適っているため複利的に理解が深まっていくのを感じることができると思います。

投資といっても医師に向いた投資法は限られています。そのもっとも根本的な話から始めたいと思います。

本業を中心に考えること

まず初めに最も大切なことを述べたいと思います。投資するにあたって一番大切なことは余剰資金で行うということです。開業医であればある程度軌道に乗り、生活に余裕が出てきてから始めるということです。何事も基盤がなくてはいけません。開業医としての収入が十分でなく、その補充として投資を考えているならかなりの確率で失敗するでしょう

勤務医の場合、生活余剰資金があるのであればすぐに始めたほうがよいでしょう。開業医と違い借り入れ返済もなく、時間的余裕もあるのでかなり有利です。将来開業をすると一時的に資金がショートします。勤務医のうちから不労所得を得ておけば将来開業予定があってもかなりストレスは少なくなります。

投資からの不労所得を得たとしても、本業はきちんと続けてください。定収入こそ最も大切なことです。仕事を減らすことを考えるのは「経済的自由」に達してからです。つまり「投資から得られる収入が生活に必要なお金を、余裕をもって超えられるようになってから」考えればよいのです。それまでは本業が最も大切かつ安定収入となります。

投資に夢中になるとその時間に多くをとられ、本業に影響が出る人がいます。そのような人は投資に向いていないのでおすすめしません。

インカムゲインの投資を行うこと

投資には大きく分けて2つの種類があります。キャピタルゲインの投資とインカムゲインの投資です。
キャピタルゲインの投資とは値上がり益を狙う投資です。一般に投資と言うとこの投資を想像しますが、医師は手を出さない方が無難です。

例としては株を安く買って高く売る。為替は円高の時ドルを買い、円安になったら売り切る。不動産を安い時期に買って高くなったら売るなどです。一見問題ないように思えますが、お金は売った時にしか入ってきません。そしていつ値上がりするかは誰もわからないのです。

ラットレースから抜け出すには投資から得るお金 >生活に必要なお金となる必要があることを思い出してください。投資から得る収入は一時的なものであっては意味がないのです。毎月給料のように自動的に振り込まれてくるお金でなくてはなりません

これを可能にするのがインカムゲインの投資です。僕のおすすめする、医師に向いている投資といえます。例として株の配当金、債券の利金、不動産の家賃、定期預金の金利、FXのスワップなどです。インカムゲインによる収入は定期的に確実に入金され積みあがっていきます。

医師向けのインカムゲイン投資

医師にはどのような投資法が向いているのでしょうか。医師は日常の収入は円で得ています。これからは日本のカントリーリスクが高まっていることを考えると他国の通貨、それも将来的にも安定の見込まれる米ドルを資産の一部として持っておくのが良いかと思います。

米ドルの安定的なインカムゲイン投資として代表的なものは米国債に投資することです。10年物米国債の利回りはあらゆる投資の基本となるもので、現在考えられる投資としては最もリスクが低いものと考えられています。この利回とあらゆる投資対象の利回りを比較することが投資対象を選ぶ基本となります。

多少リスクをとれるのであれば米国株の高配当銘柄に投資するのもいいでしょう。これは銘柄を選定する能力が必要になりますが、一度身に付ければ強い武器になります。日本と異なり米国には配当を30年以上増配し続けている銘柄がたくさんあります。米国株を所有し続けているだけで5%程度の利回りで回すことが可能になります。ここで間違ってはいけないのは株を売り買いするのでなく、買ったらそのまま持ち続け、配当を貰うことを目的にすることです。

不動産投資も検討してもいい投資です。これはレバレッジ(梃子)が効くので効率の良い投資が可能です。ただし物件を見る目が必要なので、それなりの勉強は必要です。家賃は安定収入になるので経済的自由に近づくことができます。決して土地の売買で儲けようと考えてはいけません、あくまで家賃収入が目的です。ただし日本では人口減少の影響から長期的には先細りでしょう。

日本株については現在のところ僕は悲観的です。日本のカントリーリスクはかってない程まで高まっていると感じています。僕自身は日本の高配当銘柄やリートなどをある程度保有していますが、あくまで日本経済の状況をモニターするためと割り切っています。

FXや信用取引については投資初心者は決して行ってはならない投資のひとつです。十分な知識を持っていれば儲けることはできますが、毎日値動きが気になって本業がおろそかになるリスクがあります。僕自身大きく損を出したこともあります。(僕自身は現在はFXの自動売買を活用しています。)

まとめ

医師にとって理想の投資とは、

① 投資をしていること自体を忘れてしまうような投資であること
② それでいて月々本業以外の不労所得が得られること
③ カントリーリスクを考慮し、国際分散型の投資であること(円資産のみ所有するのはリスク高い)
④ 資産価値がお互い補い合うような投資を心がけること(債券、株、金など値動きが互いに異なるものを所有する)
まずは経済的自由(投資から得られる不労所得が生活に必要なお金を超える状態)を目標とすること

経済的自由を達成した後は仕事を減らし、場合によってはアーリーリタイアやセミリタイアをするのも良いかとおもいます。
投資をより深く続けたい人は次のステージに進むこともできます。ラットレースを抜け出すまでの投資と、経済的自由を達成した後での投資は機会や規模について全く別の世界が広がります。小さな雪玉でも斜面を転がり落ちていくと、あっという間に巨大な雪玉になっていきます。ここからが本当の複利の世界の投資になります。(投資は自己責任でお願いします)
以上医師のための投資の総論的な話をまとめてみました。各論については機会があったら紹介させていただきたいと思います。


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