見出し画像

Whateverが流れた夜

馴染みのお店の周年パーティー

その日は立食のフリーパーティーで
お店のスタッフもゲストもみんな挨拶を交わし
お互い自己紹介なんかしたりして愉しんでいた

私はその日朝早くから炎天下にいたし
前日の睡眠も足りていなかったせいか
ワイン1杯で十分に緊張はほどけてて
見慣れない臨時スタッフに話しかけ
隣に来た人に自らも挨拶し
それはまー気持ちよく過ごしていた

はじめまして〜と声をかけあい
乾杯をして
何してる人ですか〜と
お互いの話をして

(あーこんなに簡単に初対面の人と話してる
なんか今日どうしたんだろ)

酔いがまわっている頭の中で
私の中の扉が開いている気がした
今日は誰とでも仲良くなれる!
よくわからないけどなんとなくその日は
そうゆう稀なテンションだったことは
自覚していた

そこに
歳下の一見チャラチャラとした男性が
話しかけてきて
一瞬私の中で警報がなり扉を閉めかけたけど
その人の声のトーンと話し方が
あまりにも穏やかで優しかったので
フリーズしてしまった

きっと話が上手い人なのだろう
ナチュラルにいろんな話をしていて
音楽の話で気が合い
私がニルバーナのカートコバーンが
好きだと言ったら
彼がUKロックにハマってって言うから
『オアシスのWhateverがすき』となって

私の頭の中で曲が流れていた

〜I'm free to be whatever〜

完全に私の扉は開いた
楽しい〜!

音楽は人を繋ぐっていうけど
年齢関係なく好きな音楽で話が合うと
嬉しくてたまらない
初対面の異性と
こんなにすんなり会話ができるなんて!
嬉しくて楽しくてそこから動けなかった

邪気のないこの雰囲気は
きっと歳も離れてるし
男とか女とか恋とか愛とか
そんな意識がまったくないんだろうな〜と
左右対称に上げる口角で
まっすぐ笑って話をする彼を見ながら
いい表情するな〜と
純粋にこの人スキだわ〜と思っていた

そんな中で
『めちゃくちゃタイプなんですけど、女としてみてもいいですか?』なんて
ずるすぎる

嘘でもお世辞でもこんなこと言われて
嬉しくないわけがない
けど嬉しいのを隠して
信じないようにしていた

その後も
『歳下ダメですか?子どもですか?』と
甘えるようにに言われて
だんだん半信半疑になりながら
酔いがまわって
朦朧な意識の中みんなの会話が聞こえていた
彼の声が心地良かった

連絡先を交換して別れた後
急にいろんな事がありすぎて
いつもはしない行動に
若干引いてる自分を感じつつ
まー社交辞令てきな?と深く考えずに
連絡がくる期待はしないでおこうと
自転車を漕いでいた

家に着いてすぐ
メッセージが届いていて
そこには
また会いたいの文字

(何コレ。現実?)

喜んでる自分の感情に戸惑い
興奮して眠れなかった

どーしよう

嬉しいけど怖い
怖いけど嬉しい
どーしよ
ありがとう
私も、また会いたい

何年もこんな風に
心動かされることなんてなかった
もうないと思ってたし
なくていいと思ってた

突然起こるんだな〜
と思いながら同時に
滅多に起きないこの出会いを
大切にしたいと思ったんだ
空も明るくなりかけていて
曇り空のあいだに光が薄く透けていた

忘れないように
イヤホンでWhateverを聴いた

嬉しい気持ちと裏腹に
終わりのある出会いなら
はじまらなきゃいいのにと思っていた

September,2023

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?