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「空想メタバース」

※こんな読書環境があったらいいなというのを小説にしました。
 ほんとは、紙の本が一番好きだけどという前置きをしておきます。
 今回の空想は、未来の本の読み方に焦点を当てました。

「そうだ、今日はどの続きから読もうかな」
 まず本を読む用のメガネを装着する。そのメガネは、文字をあらゆるものに投影できる。壁に文字を。専用の文庫型の紙にも自由に文字を投影させる。そのメガネは普通につけていても、近眼メガネか、老眼メガネか、本用メガネか区別がつかない。
 その投影文字は、私にしかもちろん見えない。
 寝て読むために、本を取りに行かなくていい。メガネをサングラスに付け替えるように。
 メガネによって投影された文字をタッチするだけで、大きさも変えられる。
 自分の見やすい文字の大きさに投影してくれる。
 あらゆるものが、文字を映した本になる。
「昨日の物語のあの場面は、どういう映画のシーンになっているのかしら」
 ほら、投影された文字を叩けば、映画のワンシーンが投影される。
 英語で書かれた電子書籍も同時に翻訳してくれる。
 どれだけの翻訳アシストが必要かは、こちらが選べる。全部翻訳、部分翻訳、単語アシスト。
 朗読してほしい声も選べる。メガネから音が流れる。
 操作は、投影された文字をタッチするやり方と、小さなコントローラーのようなものでも調節できる。
 このメガネの一番いいところは、自分の視力に合わせて見やすい本の投影方法や読み方が選択されること。
 私の一番のお気に入りは、布団に入り、天井に投影された文字をプラネタリウムのように読み続ける。
 文字の色は、天井の色に合わせて、読みやすい色に。
 もう続きは、目を閉じたいと思えば、朗読モードへ。
 タイマーは1時間にセット。
 電車で読むときは、文庫型の白紙を持ち歩くだけでいい。
 誰も白紙の紙を見ているとは思わない。
 そこまで誰も隣の人が何しているかなんて興味がないから。
 私は、どこでも活字に触れたい。
 歩いているとき、続きが気になる朗読モード。
 他人に聞かれないように、ひっそりとイヤフォンを装着。
 物語をどこにでも連れて行ける。
 
 こんな世の中になるかな。近未来。

(おしまい)

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