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「空想駅レンタル本屋」
※できるだけ本がいろんな場所に旅できればいいなと小説にしてみました。
駅の改札の出たところに、駅レンタル本屋という名の自動販売機が設置された。
いきなり登場した自動販売機は、気になりながらも、朝の通勤のときも、疲れた帰りにも、詳しく見ることはなく、通りすぎていた。
たまたまテレビを見ていると、その自動販売機のニュースがやっていた。
「どうも本が買えるらしい」
「どうも読み終わった本を他の駅でも古本として売ることもできるらしい」
「新刊も古本も取り扱っているらしい」
今度、時間のあるときに、眺めてみよう。
自動販売機と言っても、他の販売機とは違っていて、本が文庫、雑誌、単行本と分かれて、縦に並んでいる。ジュースの自動販売機とは設計が違っている。
「買いたい本を最寄り駅に置いておいてくれるらしい」
システムがどうも複雑に思えるらしく、本屋に行って買うだけというのとは違い、なかなか世の中には浸透しないようだった。
親戚の葬式が出来て、地方に向かわなければならなかった。
そうだ。駅のレンタル本屋を利用してみようと思い立った。
「文庫本なら、高くても2000円あればいけるだろう」
事前に読みたい本の予約ができるというので、それを利用した。利用登録は、簡単だった。最寄り駅と本を選ぶだけだった。あとは、注文のQRコードをかざすだけ。QRコードをかざすと、目的の本ががたんと落ちてきた。
それで受け取り完了だ。
2時間ぐらいの電車の旅で、読み終えることができたら、着いた先の駅レンタル本屋に、買ったときのQRコードをかざして、本を投入すると、200円のポイントがつく。移動距離は長い方がポイントが高くなる。
その本は、次にそのレンタル本屋の中古品として、次の人にまた売られるらしい。
変なことを考える人がいるもんだな。
どうも雑誌に載っていたその駅レンタル本屋の良いところは、紙の本が邪魔ものとしてではなく、循環されること。地方では、その土地の人が読んだ本やその駅を利用した人がどんな本を読んでいるかがわかること。そして、何より本をより遠くに運ぶのは、電車に乗る俺たちだということだった。遠くへ本を運ぶ配達人がいらない。
新刊を注文すると、契約してある町の本屋さんが、その自動販売機に補充に来るということだった。本屋さんの売り上げになんとかつながればいいが。
儲かっているのかはわからないが、本を紙で読みたいという人には、本が荷物にならなくていいかもしれないな。
それに古本屋に行って、身分証を出す必要もない。
ゆくゆくは、新刊で本を買えば、その後、その本を電子書籍で2か月読めるようになると、雑誌には書いてあった。雑誌も読み終えたら、捨てられるか、部屋が散らかるか、だからな。電車の中だけで楽しむというのもありかもな。駅のレンタル本屋の品揃えを見れば、その町のことがわかるようになるのか。
新橋、神保町、札幌でどんな本が中古本になってるかが気になってきた。
こんな本屋できるかな。もうあるのかな。
(おしまい)
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