「奇特な病院2」きっとうまくいくよ科
※連作短編小説ですが、1話でも完結します。
第36外来:きっとうまくいくよ科(患者 柳原らら)
気を許せば、弱音があふれだしそうな今、自分をなんとか奮い立たせながら、やってきた。一大プロジェクトを任されてから。
方向性が間違っているかもしれない。正解がわからない。
私の自己満足かもしれない。
それでもいいとずっと思ってきたけど、私のおかげで世の中が良くなったと言ってくれる人は今のところ誰もいない。
誰かに期待してはいけない。
そういうのもわかるけど、私のけもの道を誰かに理解されたいと望むことも許されないか。
それじゃ、寂しい。
すぐ結果の出ることではない、それもよくわかってる。
誰かの正論はわかってるつもりだ。
でも、でもでも、自分のやってることを肯定して欲しいと思ってしまう私はわがままなのだろうか。
テレビで、「きっとうまくいくよ科」の先生が出て話をしていた。
そのテレビで先生は、自分の未熟さを痛感するばかりですとお話になっていた。
私もそうだから。私は、その先生をとても気に入って、「きっとうまくいくよ科」の診察を受けることにした。
先生は、診察に私は入ると、微笑んだ。
その微笑みに私は、なぜか感動していた。
なぜか?
その先生が私を受け入れてくれたような気がしたから。
勘違いかもしれない。それでも構わない。今まで孤独すぎたから。
でも、先生を選んだ私の感覚はズレていないことは、その後の診察でわかった。
先生に、
「まず自由に話してみてください」
と言われた。
私は、抱えているプロジェクトがあること。そのプロジェクトは誰にも相談ができないことであること。かなり私の中では挑戦であることをざっと説明した。
「不安を抱えておられるのはどのあたりになりますか?話せる範囲で構いません」
と先生は言った。
私は、
「何しろやってみないとわからないものですから」
「そうですか」
先生は、少し考えて、明るい声で言った。
「きっとうまくいきますよ」
私は、まさにその言葉が聞きたかったと思った。
別にうまくいくかどうかなんて誰にもわからない。ただ私は誰かに背中を押してほしかっただけ。それだけだったから。
先生は別れ際に言った。
「お大事に」
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