「奇特な病院2」仲間はずれ科
※連作短編小説ですが、1話でも完結します。
第40外来:仲間はずれ科(患者 利市徳一)
僕はちょっと変わっているとよく言われる。
変わってるんじゃない。ちょっとだけ変わっている。
仲間ではないと言われているみたいだなと僕は思う。
どうも居心地が悪い。
ちょっと座りにくいと感じる椅子のような感じだろうか。
正式には、椅子とは呼べないぐらいだろうか。
僕は、そのちょっとの差を埋めるために、相手の様子をうかがい、趣味を合わせ、話を合わせ、なんとか僕の持っている全知性をフル活用して生きてきた。
でも、ある日、それでも、変わってるねと言われた。
自分をすり減らし、なんとか合わせているつもりだったが、やはり僕は変わっているようだった。
奇特な病院に「仲間はずれ科」という科があることを知った。
診察室に入るとすぐに先生に、
「僕は、仲間はずれですか?」
と直球の質問を投げた。
先生は、落ち着いた様子で、僕に、
「どうしてそう思うの?」
と聞いてきた。
僕は、今まで他人に仲間はずれだと気づかれないために、その場所で、浮いてしまわないために、心を砕いてきたと告白した。
先生は言った。
「別に仲間はずれでもいいんじゃない?」
僕は、知性で、それを先生が、この科でたくさんの患者さんを見てきた一つの悟りなのではないかと思った。
「先生、知性ってどう思いますか?」
「知性?」
「そうです。僕はずっと知性について考えてきました」
「なんか難しそうね」
「先生の仲間ではないですか?」
「そうね。きっと徳一くんは、私とは違うことを考えているかもしれないわね」
さきほど、先生の気持ちを悟ったと思ったが、間違いのようだった。
先生は続けた。
「でも、人と変わっていても、自分がいいと思えばいいじゃないかしら」
僕は悟った。僕は理屈っぽいんだな。だから、いつも仲間はずれなんだと。認めるのは、ちょっと寂しかった。
先生は明るく言った。
「お大事に」
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