つまり、お前の話はつまらない【ラジオメール小噺】

お前だよお前、おりがみさん。
※これは自爆をする予定の文章のため、飛散物で怪我をしないよう身の安全を確保してから読んでください。

『それメールになりますよ!』

ある特定の知人と話していて、わたしがよく言う言葉がある。
『それでメール書けますよ!』
『今の話だけでふつおた2通生まれました』

その知人は思考能力も高く喋るのが上手い。
ただわたしのほうがラジオへのメール投稿の経歴と実績があったということにより、以前メール投稿の相談を受けたことがあった。

メール相談はゼロからだと「何書いたらいい」から始まる。つまり、日常の些細な出来事・飲み会での話のネタをメールのネタとして再認識すること。
わたしが知人に『それメールになりますよ!』を言うのはその名残である。


相談を受けたのは数年前なので、「その話はメールネタになる」ということをわざわざ言うのは、字面の意味よりは実際には「その話(メールに書けるくらい)面白い」という意味合いがほとんどで、要はグッドボタンみたいなリアクションである。

とはいえ、比喩にしても「メールに書けるくらい」というのはそれなりの高水準の面白さがあって、かつラジオに乗せられる一般性か個性のどちらかを有しているから言える。
先に書いたように知人は喋りが上手いので、起承転結とか、組み立てとか、話のピークとかそういったところで面白い話ができる。これが高水準の部分。

つまり、
・組み立てが面白い(一般性+高水準)
・事象が面白い(個性+高水準)
のどちらか。

その辺の八百屋で買ったリンゴを美味しく調理する能力と、一個何千円みたいなリンゴを美味しく調理する能力。
彼は調理が上手いので、素材による味付けの差はあれど、どんなリンゴも割と美味しい話にしてくれることが多い。


わたしの話は面白くない

突然の自爆。
つまり、話の調理が上手くねえんだ。わたしは。
リンゴの皮を剥けば実が半分になってしまうし、等分に切ることもできない。

飲み会とかでもそう。自発で面白い話を提供できない自覚が昔からある。
調理が下手なので、素材が面白くてもピークを作るのが下手だったり、オチが作れてなかったりと台無しになってしまう。

ここからは爆発の現場検証をしていきます。

10通書いて10通読まれるタイプ

わたしは1000通書けて100通読まれるタイプではない。そもそも1000通書けるタイプでない。端的に表現するなら10通書いて10通読まれるタイプ。

1000通書けるタイプ……は特異なのでその前に300通書けるタイプの話をすると、これが上の「調理が上手い」人である。日常のなんでもないネタをメールに転化させられる人で、喋りの上手い人がメール書きの基礎をつけるとこれになれる。
1000通書ける人はこれに経験と研究による研鑽、それとラジオ自体への愛が必要になる。書き始めて1年の人は1000通書けないし、週にラジオ2本しか聞かない人は1000通書けない。そういうこと。

300通書けるタイプは八百屋でもなんでもリンゴを仕入れられればメールになるので、書こうと思えば結構書ける。特定のパーソナリティや特定の帯・界隈でよく名前を聴く地域の有名料理人。

ちなみに余談だが1000通書くタイプは問屋。「この人の名前どこでも聞くな!?」という超有名商社。商社なので次に書く職人タイプも含めだいたいなんでも書ける。


わたしの「10通書いて10通読まれるタイプ」というのは、厳密には「"1通書いて1通読まれる"を繰り返すタイプ」である。例えなので打率10割なわけは無いが、1回の放送に1通読まれるために1通2通しか送らないタイプである。
わたしのこのタイプはほぼほぼ「素材の味」勝負になる。
高級リンゴと自分の調理方法が作家の舌に合うと読まれる。ここでの調理方法は「好みの味付け」の部分が大きく、どこでも読まれるような調理はできない。
名称改めこの「1通タイプ」は文字通り一点物を作る、職人タイプである。一般的に言われる「ハガキ職人」の"職人"とは違う。このnoteの文脈で敢えて名付けるならそれはハガキ業者。

職人は、1つしかない素材を端正に削り、磨き、満足行かなければ送らずに捨てる。
寡黙で、コミュニケーションが少なく、ただ良いものを作ることにこだわる、よくイメージされる工芸品の職人。

そう、話が下手なのである。



感想メールが得意

わたしのメールで自他ともに認められるのは「感想メール」で、これはわりと手頃な高級リンゴである。最新シングルを聴いたりライブを観たりすれば誰でも心動かされる部分はあるはずだが、その言語化がキモになるのが感想メール。

感想メールのリンゴの木は誰の庭にも植えられているが、その収穫は感想の言語化能力による。

つまりわたしは感想メールの収穫が上手い。

どうやら他の人より良い梯子や剪定鋏を持っているらしい。

また、感想メールは個々のブランドパワーが9割なので、割と調理方法を問わない。その人の感想メールはその人の庭からしか採れないので、収穫さえできてしまえば、ほぼ生のままでも、形が歪でも、長さ1分以内のサイズに切り分けるだけで採用の芽があるものになる。

加えて、わたしは収穫と一緒に飾り切りをするタイプなので、感想メールとは相性が良い。頭より心に届けるタイプの感想メールを書きがち。

また、感想メールの木は収穫時期が限られるので、必然的に書く数も少ない。
なんとなくイメージ噛み合うと思うのだが、職人タイプは感想メールと非常に相性が良い。話が面白くなくても「わたしの庭にしかない木」から採れるリンゴの飾り切りで採用を取りにいけてしまうのである。


メールテーマ:小学校の思い出

20年前の話でも、冷凍されたものをうまく解凍して調理できればおいしく頂ける。感想メールはほぼ鮮度勝負なので消費期限はせいぜい2週間くらいだが、エピソードには消費期限がない。

ここで職人タイプは思い出に素材の個性がないと読まれるメールは書けない。個性があってようやく調理方法勝負に持ち込める。料理人タイプは些細な思い出でも上手に解凍して美味しく調理できる。誰でも経験したことのあるエピソードを、読まれる味に調理できるのが話が面白い料理人である。

わたしが読まれたメールを思い返してみても、○○時代の思い出系テーマで読まれたのはわたしの庭にしかない木のリンゴの飾り切りだった。ありがちなネタは読まれた記憶がない。


オチがつけられない

話が面白くないを象徴するかのようにこの項を書くんですが、この文章は自爆の現場検証なのでオチがありません。
話が面白い知人に対し『それメールになりますよ』と繰り返し言っていることに気づいたことから、自分の話が面白くないことを再認識してしまった。というただそれだけの文章。
自爆の飛散物で致命傷を受けた"話が面白くない自覚のある人"がいたらごめんなさい。一緒に苦しみましょう。


メール投稿はほそぼそと長年やっているのでリンゴの収穫まではまあ自力でたどり着けるのだが、飾り切りでない包丁の使い方がわからなくなってしまった。

話の組み立てでメール採用を取れてる料理人がこれを読んでいたら、よかったらそのレシピをnoteにしてください。

感想メール"職人"より。

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