【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #35
第5話 呻く雄風――(5)
イスルギさんがとっくの昔に去ったあとの屋上で、俺は一人、ぽつねんと考えていた。
予想だにしなかったイスルギさんの言葉に、なにかの間違いではないかと思って聞き返しはしたのだが。
『昔から何度も会ってる人の気配はわかる。間違えてない』
『姿は昔と違うけど、気配は一緒。あなたが土地神』
というように、間違いなく俺がここの土地神であるの一点張りである。
そうして俺が動揺から立ち直れないうちに、イスルギさんは俺との会話自体が面倒臭くなったのか、さっ