【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #42
第5話 呻く雄風――(12)
とても幸福で温和な時間に浸っていたいところだが、いつまでもこうしているわけにもいかない。
「さてと。時間もあんまりないし、後片づけしよっか」
「は? 時間?」
疑問符を浮かべたアサカゲさんに、敢えて回答はせず、俺はついっと人差し指で円を描いた。
三年五組の教室で発生した風は、そこに居る三人を優しく抱え上げると、グラウンドへと運び出す。始めこそ悲鳴を上げられたが、害がないとわかるや否や、アトラクションに乗っているように楽しんでくれた。同時に