【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #10
第2話 延長線上の哀歌――(8)
「なんだ、居るじゃねえか、大桃先輩。来いよ、あんたに話さなきゃならないことがあるんだ」
アサカゲさんに指を差された男子生徒――オオモモくんは、突然のできごとに驚く表情から一転、観念したように深く息を吐いてから、アサカゲさんの元へやって来た。
「ええと、君、一年の朝陰さんだよね? どうして僕のことを知ってるのかな?」
それがクラスメイトの居る手前についた嘘であることは、明らかだった。アサカゲさんもそれに気づいているらしく、この場でわざわざ