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任天堂のSwitchタイトル制作陣を振り返る(総合編)

サムネイル画像として設定したもの。こちらは任天堂が中心に開発したゲーム作品のゲームデザイナー、プログラマー、アーティスト合計の比較です。

皆様はこの数値にどう感じましたでしょうか?

世界でも有数のゲーム会社である任天堂の制作陣については何も分からないままです。それにNintendo Switchもライフサイクルが半ばを入っていますし、中間地点での振り返りもやりたいなと思いこの記事を書きました。
今回はその基礎となる総合編です。

スタッフリストを見る前に

ゲームは映像作品程ではありませんが、スタッフリストがあったりなかったりします。スマホではあまり馴染みがないですが、SwitchやPS、Xboxのようなゲーム専用機、あるいはPCゲームの場合は大体あります。
(本当はあったりなかったりではダメで、社員の地位向上を目的に実装は当然だと思いますが、それはまた次の機会に…)

とはいえ何も知らないままでは見てもなんのこっちゃです。

私はゲーム開発における役職を以下の10種類に分けています。

  1. ゲームデザイン:ディレクターやシナリオ、レベルデザイン、プランニングなど

  2. プログラミング:各プログラミング、テクニカルサポート、R&Dなど

  3. アート:キャラクター/フィールドデザイン、モデリング、リギング、カットシーン、アニメーション、モーションアクターなど

  4. サウンド:作曲者、編曲者、演奏者、バンド、ミキシング、マスタリング、レコーディング関係者など

  5. ボイス:キャスト、レコーディングなど

  6. デバッグ:テスター、デバッグ、QA関係者/社など

  7. ローカライズ:ローカライズ、ローカライズに関わるテスティング

  8. スペシャルサンクス:スペシャルサンクス

  9. プロデューサー:プロデューサーや広報など

  10. スタッフ:スタッフリストでゲームデザイン、プログラミング、アーティストの構成が開示されていない場合の最終手段


テクニカルアーティストはどうすべきか、プロデューサーがディレクター的素養を持つ場合はどうするのかなど考慮すべき点はありますので「基本的」にですが、この形で分類しています。そして、ここで見るのは1、2、3です。
何故なら、この3つがゲームを形作る基本的な要素だからです。

  1. 企画や提案、その研磨を行うゲームデザイナー

  2. 仕様や発案をプログラムから落とし込むプログラマー

  3. 同じく仕様や発案をアートの面から生み出すアーティスト

この3者によってゲームの基本的な部分が生まれます。まぁ会社によってはプロジェクトマネージャーが、プロデューサーが中心となる時もありますし、サウンドが大事なゲームもありますがあくまで「基本」ということでご承知おき下さい。実際、プロデューサーがスタッフリストの先頭にいる場合、そのプロデューサーはゲームデザインにカウントしています。

ちなみによく名前が上がりますマ・オーヌこと青沼英二氏やミィズキョシアこと小泉歓晃氏、イカ研究員の野上恒氏などは現在プロデューサーとしてクレジットされます。

彼らは上述の分類では9番になる可能性が高く、カウントしていない場合があります。
彼らのような有名な方は、wikipedia上では「ゲームクリエイター」としてカテゴライズされていますし無論影響力もありますが、彼らだけでなく現場の方々を見ていくのが本記事の趣旨です。

構成を見てみよう

人数が分かりましたので、具体的に何人がどの担当にいるのか見ていきましょう。

任天堂開発作品の場合

DPAはD(Game Designer)、P(Programmer)、A(Artist)の合計です。一応参考でサウンドも見せています。

図にも載っていますが、今回お出しするのは以下の8作品です。

  1. ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド

  2. マリオカート8 DX

  3. ARMS

  4. スーパーマリオ オデッセイ

  5. リングフィットアドベンチャー

  6. あつまれ どうぶつの森

  7. Nintendo Switch Sports

  8. スプラトゥーン3


「見出しには他にも沢山あるけど!」となった方もいらっしゃるでしょう。実際には以下の9作品も加えて18作品見ていきます。


  1. EX.ピクミン3 DX

  2. EX.ゼルダの伝説 夢をみる島

  3. EX.ルイージマンション 3

  4. EX.星のカービィ ディスカバリー

  5. EX.ゼノブレイド2

  6. EX.Pokémon LEGENDS アルセウス

  7. EX.ペーパーマリオ オリガミキング

  8. EX.おすそわける メイドインワリオ

  9. EX.ファイアーエムブレム 風花雪月

  10. EX.???

『スプラトゥーン3』までは時系列順ですが、EXは開発の中心が任天堂ではない作品です。そのため『ピクミン3 DX』以降は順不同です。
なお、データはMobyGamesから取っています。

ブレスオブザワイルド:任天堂の"AAA"

サムネイルで一番多かったのが『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』です。この作品ははてなブログで記事にしていますので詳しいことはそちらでどうぞ。

  • ゲームデザイン:27

  • プログラミング:62

  • アート:263

  • 合計:352

とにかく多いのがアートです。内53名がLandscape Modelingですからあのフィールドに人員が投入されたことが分かります。ちなみにプログラミングも数では『マリオカート8 DX』の72名、『あつまれ どうぶつの森』の76名より少ないですが両作品はサポートの役職が多く、特に深く関わるプログラマーの数では『ブレスオブザワイルド』の方が多いです。

はてなブログの記事では体制を「任天堂のAAA」と呼称してます。実際、任天堂中心の作品では『ブレスオブザワイルド』が最大の規模です。あくまでも任天堂の中ではですが。

マリオカート8DX:WiiU版からの継続?

  • ゲームデザイン:18

  • プログラミング:72

  • アート:73

  • 合計:163

『マリオカート8 DX』はプログラミングに72名、アートに73名と1:1の比率です。ただ、プログラミングの72名中、44名はサポートとしてクレジットされています。ちなみに『ブレスオブザワイルド』に関わっていた人もいますが、数として『マリオカート8 DX』以降経歴が分からない人が多い印象です。

ちなみに「WiiU版の追加だから人数は減っているんじゃないの?」というご指摘もありそうですが、WiiU版の『マリオカート 8』はゲームデザイン15名、プログラミング60名、アート63名ですので実は減るどころか増えています。役職の数も一切変わっていませんので、継続して開発していた節も見られます。この、WiiU版からのリファインでは『ピクミン3 DX』と比較してみると面白いです。

ARMS:新規IPの規模

  • ゲームデザイン:8

  • プログラミング:33

  • アート:53

  • 合計:94

Switch発売年に出された新規IPの『ARMS』は規模としては控えめなのが分かります。ちなみにWiiUで初登場の『スプラトゥーン』も73名ですので新規IPを任天堂中心でやるなら70~100名辺りとなるのでしょう。

スーパーマリオ オデッセイ:3Dマリオのスタンダード

  • ゲームデザイン:22

  • プログラミング:41

  • アート:73

  • 合計:136

『ブレスオブザワイルド』で規模が飛躍的に増大したゼルダの伝説シリーズと比べて、3Dマリオシリーズはそこまで増えていません『スーパーマリオ 3Dワールド』の98名と比較すればその差が分かります。1つのシリーズの開発陣の規模増大よりかは、多様なシリーズ、IPを稼働させ続けるための雇用拡大を任天堂は推進しているのかも知れません。

ちなみに『スーパーマリオ オデッセイ』の開発者41名は2021年に発売された『スーパーマリオ 3Dワールド+フューリーワールド』にも携わっています。ただ、『フューリーワールド』はNintendo of America 傘下のNintendo Software Technologyのメンバーも加わっており(『3Dワールド』にはいませんでした)、巷で言われる「オープンワールドマリオ」のような壮大な野望は設定してないのではないか、なんてことを前のnoteで書いています。

リングフィットアドベンチャー:Wii Fitの系譜?

  • ゲームデザイン:19

  • プログラミング:51

  • アート:65

  • 合計:135

リングコンを操る独特な『リングフィットアドベンチャー』。主要スタッフは以前にちらっと記事にしています。

上の記事でも書きましたが、『Wii Fit』シリーズの経験者は確かにおりますしディレクターの松永氏も経験者ですが全体としては非常に少ないです。ディレクターやリードなど主要スタッフは『ブレスオブザワイルド』や『スーパーマリオ オデッセイ』、『スプラトゥーン2』、『バッジとれ~るセンター』開発経験者がいるなどなかなかに多様なのが『リングフィットアドベンチャー』の開発陣です。

この時は言語化できていませんでしたが、「シリーズもの、あるいはシリーズの要素を多少なりとも持つ作品の開発で、該当シリーズの経験者は主要役職者のみ」点は他の作品にもありました。

あつまれどうぶつの森:スローライフを実現する物量

  • ゲームデザイン:30

  • プログラミング:76

  • アート:109

  • 合計:215

「シリーズ、あるいはシリーズの要素を多少なりとも持つ作品の開発で、該当シリーズの経験者は主要役職者のみ」。第一弾が本作です。
はてなブログに記事があります。

各ディレクターは『どうぶつの森』シリーズ経験者でも、たとえばシステムプランニングやUIデザインは未経験者で構成されています。ただ3DSの『とびだせ どうぶつの森』の際も未経験者が多く加わったことをディレクターの京極あや氏が述べていますので、いつものことではあります。

スローライフを実現するために膨大な要素の実装が必要になる故か、規模は『ブレスオブザワイルド』の次に大きいですね。
『どうぶつの森』と言えばたくさんのオブジェクトが目立ちますが、アートの人数は比較してもそこまで多くありません。ただ、ローカライズは243人と以降の作品と比較しても最多です。

Nintendo Switch Sports:体感ゲームの難しさ

  • ゲームデザイン:9

  • プログラミング:50

  • アート:78

  • 合計:137

『Nintendo Switch Sports』はJoy-Conを駆使した体感ゲームですが、開発者のインタビューを見ても苦労の跡が見て取れます。規模自体は平均的ですが、プログラミングの現場に占める割合が36%と比較的高いのもポイントです。体感ゲームというのは珍しい存在だと私は考えていますが、プログラマーが必要とされながらも肝心のプログラマーの確保が難しいためなかなか世に出ないのかなと考えています。事実、調整に相当な時間をかけていますし。

スプラトゥーン3:前作から規模が2倍

  • ゲームデザイン:37

  • プログラミング:43

  • アート:128

  • 合計:208

「シリーズ、あるいはシリーズの要素を多少なりとも持つ作品の開発で、該当シリーズの経験者は主要役職者のみ」。語弊がありますが第二弾です。
こちらもはてなブログで記事にしました。

前作から規模が2倍。未経験者がそれだけ増えたということです。特にゲームデザインは半数以上が未経験者です。この辺、『スプラトゥーン3』だけ見るとなかなか驚きのある話ですが、先ほどの『あつまれ どうぶつの森』や『リングフィットアドベンチャー』のことも踏まえますと、もしかしたら普通なのかも知れません。

ただ、未経験者者多数で始めたプロジェクトですから、『ゼノブレイド3』と予定が入れ替わったという話も踏まえますとスケジュール管理が難しかったのかも知れません




ここからエクストラに入ります。以降は開発の中心が任天堂ではない作品です。比較してみると面白いですよ。

Ex.ピクミン3 DX:エイティングの場合

  • ゲームデザイン:9

  • プログラミング:16

  • アート:18

  • 合計:43

そもそも『ピクミン3 DX』の主要な開発は株式会社エイティングが担当しています(MobyGamesだとなぜか情報開発本部が開発)。『ピクミン 3』ではゲームデザイン12名、プログラミング16名、アート54名です。

同じ「デラックス」付けでもマリオカート8とピクミン3では中身が全然違うのは面白いですね。こちらの勝手な予想では時間の問題が大きかった『マリオカート8 DX』は確実に間に合わせるため自社で、『ピクミン3 DX』は納期の問題が薄かったので他社にお願いした…と考えています。ピクミンはインタビューがないため何とも言えませんが、『マリオカート8 DX』では新作が時間で難しかったことをプロデューサーのヤブッキー矢吹光佑氏が告白しています。

4Gamer:
(省略)
 素朴な疑問なんですが,Nintendo Switch用のマリオカートとして,新作を作るという話はなかったんですか?

矢吹氏:
 そうですね。スーパーファミコン以降,任天堂の歴代ハードでマリオカートの新作を作り続けてきましたので,それも頭をよぎることはありました。ただ,一から作るとなると,どうしてもお届けするまで長い時間お待たせすることにもなってしまうんです。

4Gamer:
 ああ……。

矢吹氏:
 Nintendo Switchという,これだけマリオカートを活かせるハードがせっかくあるのだから,少しでも早く皆さんにお届けしたいという気持ちで,マリオカート8をベースに作ることにしました。
 その分,本体の発売から2か月以内というスピードでリリースすることができます。(省略)

https://www.4gamer.net/games/368/G036843/20170303135/

事実、『ピクミン3 DX』は2020年08月05日発表、10月30日発売です。わずか2ヶ月の空きしかないことを見ると、出来次第発売するという印象を受けます。

EX.ゼルダの伝説 夢をみる島:グレッゾの場合

  • ゲームデザイン:17

  • プログラミング:23

  • アート:50

  • 合計:90

そんな、出来次第発売の印象があったのは『ゼルダの伝説 夢をみる島』も同じです。06月11日発表から09月20日発売の本作はグレッゾが中心に開発しています。スタッフの過去作を覗いてもレベルデザイン担当は『Ever Oasis』が前作です。

ここまで「発表から数か月後に発売」のパターンを見てきましたが、時間をおいて発売するパターンもあります。

EX.ルイージマンション 3:Next Level Gamesの場合

  • ゲームデザイン:16

  • プログラミング:25

  • アート:70

  • 合計:111

規模自体は平均的な『ルイージマンション 3』が仮称で発表されたのが、初代『ルイージマンション』発売17周年の2018年09月14日。2019年10月31日に発売されました。想定通りのスケジュール管理で出せたのかもしれませんね。日本の会社でもそのパターンはあります。

EX.星のカービィ ディスカバリー:ハル研究所の場合

  • ゲームデザイン:16

  • プログラミング:48

  • アート:63

  • 合計:127

Next Level Gamesのように時間を置いたパターン2つめです。
2021年09月24日発表、2022年03月25日に発売されました。
ハル研究所が中心に開発する『星のカービィ ディスカバリー』も『スーパーマリオ オデッセイ』の136名と比較すると人数ではあまり変わりません

ちなみにプログラミングの割合が37.8%と『リングフィットアドベンチャー』と同率です。ハル研究所はプログラマーが多い会社ということが再確認できます。プロコンもやってますしね。

ちなみにハル研究所は長い間、150名程度を抱える自社を中心に開発していましたが、2020年には従業員数が200名に、さらにバンプールなど協力会社も加わり『星のカービィ Wii』の頃と比べると多様な開発陣になっています。モノリスソフトやゲームフリークのような大規模な変化ではありませんが、着実に拡大しているのが分かりますね。こちらもはてなブログで記事にしています。

EX.ゼノブレイド2:モノリスソフトの場合

  • ゲームデザイン:34

  • プログラミング:28

  • アート:481

  • 合計:543

そんな、確実に間に合わせるという点ではモノリスソフトが中心となって生み出す『ゼノブレイド』シリーズは顕著です。『ゼノブレイド3』が発売日を繰り上げるなど、その大規模な陣容とは裏腹にスピード感ではゲームフリークにも負けていません。ただ、プログラミングは少ないです。モノリスソフトについては記事にしています。

これはゲームフリークにも言えることですが、任天堂の開発と比べると「序列を作る」ことを意識しているように見えます。『ゼノブレイド2』ではGraphics、Graphics Supportとセクションを分け、後者には協力会社を割り振っています。前者のGraphicsが全員自社とは言いづらいですが開発体制で上下を作っていることは予想できます。作業の効率化という点ではむしろそれが一般的でしょうが。

任天堂は『スーパーマリオ オデッセイ』ではGraphics Tool Developmentに1-UP スタジオの社員が入ったりとグループ間の協力が緊密です(このせいで任天堂開発=任天堂とは言えないのですが)し、『ブレスオブザワイルド』で話題となった300人のデバッグも協力会社を含めなければ数字が合わないなど、実態は知りませんが一緒に扱おうとします。良し悪しの問題ではなく、方針の違いですね。

EX.Pokémon LEGENDS アルセウス:ゲームフリークの場合

  • ゲームデザイン:22

  • プログラミング:81

  • アート:301

  • 合計:404

『ポケットモンスター』シリーズはゲームフリークが中心となって開発していますが、協力会社であるシリコンスタジオの"ポケモン開発に関わる"採用プロモーションが流れてきたりとゲームフリークに留まりません
『アルセウス』についてはブログで記事にしています。

この時とは分類を変えていますので、ゲームデザインは60人規模などではなくもっとコンパクトなのですが(ポケモンは独特な役職が多くて混乱します)。

規模もそうですが、ペースを維持して生み出しているのが恐ろしい所です。また、モノリスソフトと違いプログラミングの規模も大きいのが特徴的です。2016年の研究開発部新設など技術力を着実に向上させているのがうかがえます。

自分たちの力で基礎から組み上げたものでゲームが動く実感を得られるというのは、このご時世では貴重だと思っています。また、2016年に新設した研究開発部では、圧倒的な専門知識を持つ人材の採用に力を入れていますね。

https://web.archive.org/web/20200804213443/https://www.gamefreak.co.jp/recruit/crosstalk-programmer/

EX.ペーパーマリオ オリガミキング:インテリジェントシステムズの場合①

  • ゲームデザイン:22

  • プログラミング:37

  • アート:194

  • 合計:253

ハル研究所、モノリスソフト、ゲームフリーク、とくれば次(?)はインテリジェントシステムズでしょう。イズさんという愛称はいつの話でしょうか。

インテリジェントシステムズのSwitchタイトルにおける制作陣は…なんといいますか、混沌としています。私にISの知見が全くと言っていいほどないのが主な原因ですが。

ただ次の『ファイアーエムブレム 風花雪月』と『おすそわける メイド イン ワリオ』を見ても、出てくる役職やその位置が異なります。ペーパーマリオ、メイドインワリオ、ファイアーエムブレムそれぞれに開発陣の伝統や文化があると考えられます。

EX.おすそわけるメイドインワリオ:インテリジェントシステムズの場合②

  • ゲームデザイン:8

  • プログラミング:30

  • アート:49

  • 合計:87

『おすそわける メイドインワリオ』はプログラミング、アートがスタッフリストでも最初からまとめられているなど3Dマリオのような雰囲気を感じます。そのためあまり細かいことまでは分かりません。

先ほどそれぞれに伝統があるとは言いましたが、本作のミニゲームに『ファイアーエムブレム 風花雪月』を持ち込んだりしていますので、隔絶はされていないことが分かります。

EX.ファイアーエムブレム 風花雪月:インテリジェントシステムズの場合③

  • ゲームデザイン:29

  • プログラミング:24

  • アート:360

  • 合計:413

インテリジェントシステムズ、というよりかはコーエーテクモゲームスが開発に大きく関わる作品ですが一応。プログラミングはコエテク、ゲームデザインもコエテク、アートはコエテクに加えてゲーム内ムービーにサンジゲンなどが参加する形です。

人数としては

  • セクション「Koei Tecmo Games Co., Ltd. Staff」:265

  • サンジゲン:93

この2つを出せば大体分かりますが、Nintendo DREAMのインタビューのようにイズさんがかなり少ない形なのがよく分かります。現場の64%がコエテク、22%がサンジゲンです。残りの14%がIS、任天堂、その他協力会社です。

横田 イズさん側のスタッフは、これまでに比べてかなり少ない人数での構成になりましたね。コーエーテクモさんには、プログラム全般、シナリオ、修道院とバトルの遊び一つ一つの企画、もちろん難易度調整やネットワークの遊びも含めたプランニング全般、3Dモデル、モーション、エフェクト、UIデザイン、イベントシーン等々のグラフィック制作というように開発の核をご担当いただきました。さらに、ムービーパートはコーエーテクモさんに加えてサンジゲンさんにもお願いしました。

https://www.ndw.jp/fefuuka-03/

そういう意味ではIS中心で関わる『ファイアーエムブレム』は『ファイアーエムブレム エンゲージ』が最初になるのかも知れません。ただ、個人的にこれまで3つの作品を見てみますとISオンリーで何かをするよりかは、どこかしらの協力会社と開発するのが合っていそうにも感じます。

EX.???

エクストラのシークレットとなったのはこの作品です。





  • ゲームデザイン:67

  • プログラミング:113

  • アート:431

  • 合計:611

『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』。ソラとバンダイナムコスタジオが中心に開発する本作。まぁすさまじい数です。

「当然だよね」と言いたくなりますが、"2D対戦アクション"というジャンルを考えると

  • 3Dの"オープンエアー"を称するアドベンチャーゲーム『ブレスオブザワイルド』(352名)

  • 3Dの広大な世界を冒険でき、数多のブレイドが活躍する『ゼノブレイド2』(543名)

  • 数百のポケモンが生きる世界を冒険する『アルセウス』(404名)やその前作『ソード/シールド』(449名)

より多いと考えますと、スマブラの大きさをより感じられます。

任天堂の制作陣とは?

エクストラを入れて脱線はしましたが、ここまで分かったことをまとめましょう。

  • Switchの大規模タイトルにおいて、任天堂は100名規模の開発が常態化

  • セクションや役職で任天堂グループと協力会社を区別することはあまりしない。

  • 「シリーズ、あるいはシリーズの要素を多少なりとも持つ作品の開発で、該当シリーズの経験者は主要役職者のみ」現象が時々起こる。

  • 時期を決めたプロジェクトは自社中心で行うが、初報公開から数か月後発売の作品は協力会社中心で行う傾向にある。例外あり。

  • 以下、他社について。

  • モノリスソフトは序列を付けた200~500名規模の開発が主。ただしプログラミングは少ない。

  • ゲームフリークは400名規模の迅速な開発が可能。技術投資にも積極的。

  • ハル研究所は自社中心から自社+協力会社でもプロジェクトを動かすように。最大で120名規模。採用も積極的。

  • インテリジェントシステムズは企画によって開発会社、役職が大きく変わる。

「シリーズ、あるいはシリーズの要素を多少なりとも持つ作品の開発で、該当シリーズの経験者は主要役職者のみ」現象は考えてみれば『スーパーマリオ オデッセイ』と『フューリーワールド』を合わせても言えそうですが、『フューリーワールド』の役職が分からない以上なんとも言えません。NSTの社員が入っているのも気になります。

「時期を決めたプロジェクトは自社中心で行うが、初報公開から数か月後発売の作品は協力会社中心で行う傾向」の例外ですが、これは『ルイージマンション 3』が当てはまります。初報が2018年9月ですから空きがあります。どちらにせよスケジュール調整が難しいならDirectなどで数か月後発売!と発表してサプライズ感を出した方がお得です。この辺は、発表から3か月後で発売した『星のカービィ トリプルデラックス』、1か月後で発売した『ロボボプラネット』と似たものを感じます。そこから発展した考察は『星のカービィ スターアライズ』の頃に出しています。

ただ、任天堂でも『あつまれ どうぶつの森』が発売を延期したようにいくら自社中心でも限界はあります。人数が多く、未経験者(=これまでの伝統や文化を共有していない)の割合が増えればそれだけ不確定要素が増加します。だからと言って減らすのは難しい以上、やむを得ない延期は今後も出てくるでしょう


さて、ここまでみてきましたがゲームデザイナー、プログラマー、アーティストの3種だけでも100名を超すのが当たり前となりつつあります。20年前ならこれにローカライズやデバッグ、スペシャルサンクス、プロデューサーなど諸々加えて100人で「多い」となりますが、時代は変わったものです。

この100名を超す開発はこれまでの歴史の延長線上にあります。いきなり増えた訳でもなければ、ましてや会社を分かりやすく"吸収"して成し遂げた訳でもありません。
×「あらゆる方面からかき集めて人材確保を成し遂げた」
〇「開発会社それぞれの継続的な採用、協力で人材を確保した」
という下の文脈が正しいです。これは後々の記事で個別に見ていきますが、たとえば『ゼルダの伝説』だからと言ってグレッゾが『ブレスオブザワイルド』に深く関わる訳でもないですし、同日にライブを行った『あつまれ どうぶつの森』と『スプラトゥーン3』の人材確保は別口です。元ジャパンスタジオのスタッフが任天堂に~という話も全体で見れば無視できるレベルであり、それより新卒採用などが多いと考えられます。

この100名を超す座組を見るのは正直大変です。最初にお伝えしました10種に分類し直して、その人達の過去を調べると何か分かるかも知れません。ピントは人数、役職、過去作品、これまでの発言など色々あります。

ちなみに私は避けていますが、評価が芳しくない作品を見てもいいかも知れません。それはそれで何かしらの知見が得られるでしょう。


最後にここまで上げた作品のゲームデザイナー、プログラマー、アーティストの比較画像をあげておきます。

18作品のゲームデザイン、プログラミング、アート(+サウンド)の比較

数百名の開発が普通になった今もなお、任天堂は開発を維持しようと動いています。Switchは折り返し地点を通過しましたがそのやり方は今後も継続されるのか、それとも変えるのか。今後も動向を追っていきます。


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