ふるさと寄付金

【※2019年5月10日にFacebookノートに投稿した内容を再掲】


6月から施行されるふるさと寄付金の新制度,報道等で予想されていた通り,泉佐野市を始めとした4市町が「制度に基づく寄付者の税優遇」の対象外となる見込みである。除外理由は,一連の総務省通知(基準)に従わず,過度な返礼品を贈り続けることで多額の寄付金を集めたこと,端的に言えば,お上に逆らったからである。

以前,私もこの制度を利用して,東日本大震災の被災地である生まれ故郷であるN市に,震災の年も含めて毎年ふるさと寄付金を送り(納め)続けていた。制度開始当初は返礼品を送っている自治体はなかったのであるが,それがいつしか知らないうちに,誰が(どこが)知恵をつけたのか知らないけれど,返礼品を送っている自治体がぽつぽつと現れ始めたのである。これに対し,私は,
 ・寄付金というもの,道徳的に本来返礼を求めるべきではない
 ・被災地を含め,余裕・余力のない財政的に弱い自治体は,返礼品がない
  という理由で寄付金が集まらなくなる
と考え,この返礼の仕組みには疑問を持っていたのである。

しかし,震災から数年後,被災地であるN市も他の自治体と同様に返礼の仕組みを取り入れたのである。復興状況が芳しくない中で返礼できる余裕・余力があるならなぜ復興に回さないのか,でも,やはり返礼品を送る他の自治体に後れを取りたくないのだろうか,などと思いながら,返礼開始前後の年でN市へのふるさと寄付金の状況を調べてみると,なんと件数で100倍以上(数十件が数千件),金額で30倍以上(数百万が1億円以上)と「超激増」していたのである。 ふるさと寄付金制度開始以来の「数年間の寄付金累計額」よりも,返礼を開始したたった「1年間の寄付金総額」のほうが桁違いに大きかったのである。すなわち,寄付者は税優遇を受けた上に返礼品をもらうことができ,被災地であるN市も震災復興などに向けて多額の寄付金を集めることができ,結果的に,「返礼品ある」ふるさと寄付金制度ならではの下で,両者はWin-Winの関係を成し得たのである。

いやはや,返礼の仕組みの威力というか,国民の欲知恵の凄さというか,びっくり仰天するとともに,今までの私の疑問はなんだったのかとその時は思い知らされたのであるが,ただ,返礼の仕組みについて,N市を含め多くの自治体が,今回制度除外の見込みとなった4市町のケースと決定的に違うところがあるのである。それは,「地産品」に限って返礼していること,すなわち,返礼品に払うお金を地元に落としているところである。泉佐野市のように,Amazonクーポンのような地元に関係のない,ましてや国民の税金を外資系企業にまわすようなことはしていないのである。 「返礼品ある」ふるさと寄付金制度により,自治体のみならず,返礼品を扱う地元のお店・企業の方々にも元気づけることができ,喜んでもらえるのである。総務省が返礼の仕組みを「完全否定しない」のは,ふるさと寄付金制度本来の趣旨が,このような形でも反映されると考えているからなのだろう。

なお,冒頭の話に戻るが,今回,4市町に対して問題視されたのは「自治体による過度な返礼」であり,「寄付者による寄付行為」そのものに問題があったわけではない。したがって,ふるさと寄付金制度開始当初のように,返礼品なくても制度利用(=税優遇利用)により,それでもなお4市町を応援したいという「真の寄付者」の寄付行為を閉ざすのは良くない。総務省も,寄付者に対して「税優遇除外」とするのではなく,4市町に対して「返礼禁止」とすべきである。そうすれば,4市町も「真の寄付者」からの「心寄せる寄付金」のありがたみを理解するだろう。

総務省は,ふるさと寄付金制度の背景にある道徳心を大事にして,子供の喧嘩のような「仕打ち」はやめるべきである。

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