「同期」だらけで身動きが取れない組織リーダーが手にしたい「自律化」
組織リーダーの悩みといえば、「何でもかんでも意思決定が自分に回ってくる」「本人の代わりに判断しなければ先に進まない」「自分の時間がスライシングされていき、やがてなくなる」といったメンバーシップとの関わり方だろう。このテーマは、放置していれば勝手に練度が上がって、上手いこといきはじめる…ということがあまりない。本人のストレスは止まらない。
理想は、「各自頑張れ」。全体としての意図をあわせた上で、それぞれが自律的に仕事を進めていくこと。そして、その結果を適宜集約し、やはり全体としての「次の判断」「次の行動」を適応できるようにしていくこと。
いわゆる「クモ型の組織」ではなく(頭がなくなると全体の動きが止まる)、「ヒトデ型の組織」(誰もが頭になりえる)。どうやって、そんな集団、チームに移行していこうか。
自律的なチームのあり方を、「IPO(インプット、プロセス、アウトプット)」の観点で考えてみよう。簡潔には次の3点を実装していく。
(1) 自分で考え、自分で動けるようになるためのモジュラー化
(2) タイムボックスに基づく同期、フィードバックループ
(3) 同じ情報を、全員で、同時に受け取る
(1)がプロセス、(2)がアウトプット、(3)がインプットに関する概念、仕組み化ということになる。
(1) 自分で考え、自分で動けるようになるためのモジュラー化
まず、「自分で考え、自分で動けるようになるためのモジュラー化」ということで、これはミッションコマンドをイメージする。
ちょっとものものしいが、防衛省関係者による和訳文献(Deployable Training Division of the Joint Staff J7 Mission Command )も参考になる。
いつもの組織モデルでいうと、意図をあわせて、方針を共有し、実行をお任せするという、構図。
ということが出来るようになるためには? いくつかのことを合わせる必要がある。
・ミッション(狙いや目標、及び達成条件)は何か?
・どのくらいの期間でミッションにあたるのか?
・誰と取り組むのか?(協力者、共有先、報告先)
・やらないこと(Not ToDo)
など
いわゆる「インセプションデッキ」のアジェンダに近い。「OKR」もミッションコマンドの概念と合致しやすい手立てだ。実行のプラン及びその方法についてまで、すべてつまびらかにし合意しなければやってはいけない、ではなく、最小限の約束事のみ置く。約束事を増やすほどに、遂行についての検査が増えて、密結合になっていく。
補足的な約束事は必要になったときに置いていく。いわゆる「ワーキングアグリーメント」的に。
「モジュラー」という概念の汎用性は高い。プロセスに適用すれば、スプリント強度のことであり、上記のとおりチームや人に適用することもできる。
(2) タイムボックスに基づく同期、フィードバックループ
次に、フィードバックループの構築を挙げる。IPOでいくと、アウトプット、結果についての同期のサイクルを得る。
良い「実行」ほど、最前線における「最適化」が自動的に走っていく。カイゼンを内包しており、目の前の仕事が上手くいくように動いていくことになる。これが同時に、ゆらぎ、ブレも生み出す。
まっすぐ歩いているつもりでも、前景ではなく足のつま先を見続けているとしたら、全体の方向が想定よりブレてしまう、といったイメージ。ゆえに、「フィードバックループ」が加わるように、同期の機会をタイムボックスを決める(チームミーティングや1on1)。
タイムボックスの長さは、仕事の中身による。少しでもブレると影響度が高いようであれば間隔は短く。そうでもないなら、長い目に取る。ただしあまり短すぎると、意図せずマイクロマネジメントになるので、本テーマに対して逆効果もありえる。
(3) 同じ情報を、全員で、同時に受け取る
そして、同じ情報を全員が同時に受け取るようにする。組織リーダーは同時に複数のメンバーシップ(異なるミッション)とコミュニケーションを取る必要があり、ここがクモ型の構造を招くことになる。詳細なミッションは異なるが、情報としては全員に受け取ってもらいたいものを、個別のコミュニケーションで担保し始めると当然パフォーマンスが落ちる。同報の仕組みを構築しておきたい。
要点は2つ。「全体像とその状況の可視化」と、「同報の仕組み」だ。前者は、説明しなくても見れば分かるような仕事全体のイメージ図、ミッションの関係図、コミュニティの全容(関係者相関マップ)などを用意する。認知負荷をむやみあげないよう、人目見れば分かるようなものにする。加えて、全体像からの状況の動き、差分が分かるよう、タスクボード、ダッシュボードやインジケータなどを用意して、リアルな状況理解を補完する。
もう一つは、同報のコミュニケーション場所を決めておくこと。特定のチャンネルか何かは必ず見る、ここだけは見ていないことが言い訳にできない、と共通の約束(ワーキングアグリーメント)にしておく。もちろん、リソース類の共有化一元化とセットにする(参照先の情報、リソースを散在させない)。
最後に、この仕組み全体を支えるのは互いの「信頼」になる。要点以外の非同期化を進めていくには、見ていない間の状況について背中を預けられることが前提になる。それができるのは、やっていることの意図の理解をあわせることであり、何かあればすぐに共有とフォローがしあえるという相互関係となる。
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