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プロダクトづくりの「芯」にある、2つの約束事とは何か

 私達はなぜプロダクトづくりをしているのだろう?

 その理由は人によって様々だと思う。ユーザーに価値を届けるために。ビジネスの成果をあげるために。そもそもつくるということが好きだから。チームで一つのことを実現していくでワクワクしたいから。どれもその人にとっての原動力に足ることだろう。

 私は、プロダクトとソフトウェアという言葉を使い分けるようにしているが、ここでいう「プロダクトづくり」はいずれも含めている。取り組みによっては、単一のプロダクトに焦点をあわせるよりは「事業」と呼んだほうが良い場合もあるだろう。何等かのモノと伴う諸活動をあわせ、今までには無かった「状況」を生み出そうとする営み。それを「プロダクトづくり」と呼んでいる。

 そう、先の質問は、プロダクトの一部である「機能」をつくっているのか、プロダクト利用の先にある「状況」をつくっているのか、と細かく砕くことができる。私は、特に後者のほうを強調したい。

 その「状況」とは、何等かの業務の改善かもしれない、あるいは、日常生活における「不」を解消することかもしれない。もちろん、これまでには無かった時間の使い方、もっと人とのコミュニケーションを充実させること、楽しみを増やすことなどかもしれない。マイナスの是正、プラスの加算・創出、いずれもありえる。いずれも、それまでの人の状況を変える、ということだ。

 プロダクトづくりにおいて、その芯に置くことは2つあると思っている。

 一つは、変化を作り出すこと。もう一つは、自分たち自身が変化を捉え続けること。業務システムであろうと、エンドユーザーに直接届けるものであろうと、その状況を変えるということは、変化を作り出すということにほかならない。もちろん、わざわざプロダクトづくりという面倒なことをやるのだから、マイナスの是正にせよ、プラスの加算・創出にせよ、より良き変化を生み出そうという意図がある。

 多くのプロダクトづくりの背景にあって然るべきことだが、プロダクトづくりを「タスク」、「日常のやるべきこと」、「所与の仕事」として、ある種の最適化とも言うべき流れが強くなっていくと、その芯を見失ってしまう。正確に言うと、芯を忘れてしまう

 行き着くところはどこか。やがて、変化の担い手のほうが、変化に疎くなり、硬直的になってしまう。価値とは何か、成果とは何か、問い直すことをしなくなる。プロダクトをどのようにして実現していくか、というその方法も固定化してしまう。その状態で、世の中に変化を作り出す、ということが本当にできるのか。

 より良き変化を生み出そういうならば、その作り手自身が変化への感度を備えている必要があるだろう。9冊目の本を書いたのは、そんな課題設定からだ。

 何が起きているのか、自分たちが無意識に前提においていることを揺さぶりに行く必要がある。顧客やユーザーは、本当のところ私達のプロダクト、事業に対してどのような評価をしているのか。従前の価値貢献という約束は果たしているかもしれない。ただ、それは相手にとってごく一部の領域でしかないのではないか。状況には奥行きがあり、入口から先にはさらなる期待が待っているのではないか。

 探索に出よう。それは、どんなチームにも必要になることだから。


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