読み終わった後から、本当の本読みが始まる。
先日、自分が書いた本のABDを社内でやるので見に来てほしいと招待を受けて、一も二もなくお引き受けした。
ある社内イベントのイチ枠で実施するということで、参加者は40-50名ほどいただろうか。それだけの人数で、1冊の本を読むというのは圧巻だった。1時間ほどで、すべてのパートを読み終えて、質疑応答。しめの言葉を求められたので、少し考えたのちに次の話をした。2つある。
一つは、「この場はすばらしい」ということ。平日の昼間、いわゆる業務時間内に、部署を越えて相応の人数が一同に会し、自分たちのモノづくり、仕事の在り方に向き合う。これこそハンガーフライトだ。
書籍などでは、何気なく表現しているが、実際のところこうした場をつくろうとしたとき、その敷居の高さを感じることになる。人が集まるだろうか?誰かからクレームが出てこないだろうか?盛り上がるだろうか、何か得られるだろうか?やめておいた理由をいくらでも思いつけるだろう。
現実の場として、開催したこと自体、称賛に値する。一度開催すれば、次の場作りの敷居は圧倒的に低くなる。それは、一歩踏み出した人、彼、彼女らだけに与えられた報酬だ。
もう一つは、「本に書いている内容はそのままやるためのものではない。ここに書いてあるのは問題提起で、その数だけみんなで対話するためにある」ということ。ある特定の問題について、集まってみんなで話をするには何かの取り掛かりがあったほうが良い。書籍の役割とは、「正解を伝える教科書」ではなく取り掛かり、「対話するための理由」だと私は思う。
内容に対して、反論してみる。実践に適用するための課題をあげてみる。課題を乗り越えるための自分たちなりの工夫を講じてみる。そうした対話が、本に書いている以上の学びへと繋がり、現実との接続(日常での実践)を可能にする。
よくあることだが、学びがあったと感じる本ほど教科書で終わりかねない。読み終わった後から、本当の本読みが始まるということを伝えたかったのだった。
それにしても何かを学び取ろう、自分たちの仕事の在り方にむきなおろうとする場には、尊ささえ感じる。
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