見出し画像

2つのDXデザイン

 DXの組織的支援を行っていると、「デザイン」という言葉をもう一度借りる必要があると感じた。「デザイン」という言葉を使いたくなるときとは、何かプラクティスをあてはめていけば結果が出せるといった状況ではない。一つ一つ、個別の状況に合わせた解決策を講じなければならないような状況だ。ではDXにおいて、何をデザインするのか? 

 デザインが必要な2つの「DX」がある。一つは、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)そのもので、目の前の組織の変革をどのように進めていくべきなのかを構想するデザイン。この領域で必要なのは、デザインではなくてコンサルティングなのではないかと思われるかもしれない。

 あてはめるべきパターンが見つかっていればそうかもしれない。しかし、DXにおいてはそのような分かりやすい、「ベストプラクティス」なるものはない。「深化(カイゼン)」と「探索」の2つの観点を用いると、「深化」が効くような既存の確立されたビジネスモデルではこれまでのベストプラクティスなるものがもてはやされる。

 一方、「探索」が必要なのは、仮説検証を通じて取り組み型自体を見つけようという局面だ。やってみて、その結果からはじめて「型」「パターン」が見つかったりする。ゆえに、型を用いるとしたら、「仮説検証の取り組み型」であり、プロセスや活動運営のところとなる。ここの構想の担い手が求められる。

 もう一つ、デザインが必要な「DX」とはデジタルエクスペリエンス(Digital eXperience)のことである。デジタルなモノ、コトに対する際の体験をどのようにデザインするか。まずもって、顧客にどのような体験を提供するのかという観点が重要となる。

 ただし、ここで強調したいデザインの対象は顧客体験だけではない。むしろ、従業員体験のほうこそデザイン対象の第一に挙げなければならない。新たなデジタルによる顧客体験を作り出す従業員側が、デジタルに適応できていなければより良い価値提供ができるはずもない。

2つのDX
┣ デジタルトランスフォーメーション・デザイン
┗ デジタルエクスペリエンス・デザイン
 ┣ 顧客体験
 ┗ 従業員体験

 ここまでのことは目新しいことではない。顧客体験も従業員体験も重要だ、そんなことは分かっている。課題となるのは「DX」という言葉を担ぎ出したときに、そもそも呼ぶ人間を間違えてしまうことである

 必要なのは、過去の深化領域でのベストプラクティスを沢山知っている「コンサルタント」ではない。仮説検証の型を実践知として持ち合わせていて、探索的な体験設計ができる「デザイナー」なのだ。ここが「DX」という言葉の認識とズレが起きやすいところになる。

 DXデザイナーというと眉をひそめる人もいるかもしれないが、2つのDXをデザインできる人材は前線で圧倒的に不足している。ここにともに取り組む仲間を増やしていきたいと思っている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?