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プロダクトチームの未来

チームで両利きを目指そう

 先日、プロダクトマネージャーは両利きであろう、という話をした。

 プロダクト作りにおけるターンアラウンド(働きかけて、結果から学ぶ)を短くするためには「考える」と「つくる」を分断させてしまったり、その行き来に時間をかけてしまうことを避けたい。

 しかも、時間だけの話ではなく、ターンアラウンドが長いほど、また情報の受け渡しをやっているほど、その過程に誤謬が入る可能性が高まる。理想は自身が理解した内容を解像度を落とさず、濁らせずに、実現することだ。

 そのためには「考える」と「つくる」どちらかに偏ることなく、両方を受け持てるようでありたい。その状態のことを「両利き」と呼んでいる。

 実際のところ両利きの内容、つまり右手と左手でそれぞれ何をつかめるようにするかは、求められる役割によって異なる。プロダクトマネージャーであれば「仮説検証」「アジャイル開発」を挙げるが、そのほかの役割であれば、例えば「プロダクトバックログを作る」と「コードを書く」という両利きが考えられる。役割として何を果たすか?によって両手に求めることも変わる。

 右手で作るべきものを描き、左手で形にする。個人で実現するのはかなり困難で、両利きを目指すことで、かえってそれぞれの習熟が中途半端にもなりかねない。ゆえに、初期の作戦ではチームでの担保を考えたい。

両利きネイティブ

 ところが、「現実的にはチームで担保」を第一として触れ回ってきたが、新たな発見も得られている。さまざまな現場や組織を訪れていると、稀に両利きを器用にこなす人材にも遭遇するようになった。

 どうすれば、両利きに到れるのか? その方法を確かに示すことはまだできないが、仮説はある。「暗黙知だった知見が様々な媒体を通じ、共有可能になってきた」「実践に近い学習の場を得られるようになった」といった背景を置きつつ、真に効いてくるのは「目的に基づく成果を確かに挙げるために、手段を選ばない」という姿勢のように思う。これは、かつて「正しいものを正しくつくる」に向き合うべく辿った経路と合致する。

 なるほど、「想定するユーザーにとって必要なもの、意味があるものを、届ける」という目的に忠実にあるならば、仮説検証も、アジャイル開発も、自ずと適用することになる。

 しかし、「これまでの方法」に対する経験が深いほど、「必要とは理解できるが、慣れない新たな方法」への切り替えは難しい。かえって、これまでの方法に染め上がっていない、むしろ、疑念を持っている人ほど(目的に忠誠を誓うなら、そうなる)、両利きには適しているのだろう。

 現に、私が出会った現場の両利き人材も、比較的年齢が若い。若いうちに(これまでの方法に染め上がらないうちに)、暗黙知で伝えにくかった知見を実践的な学習形態(パイロットプロジェクト等)を通じて触れられると、両利き獲得の可能性が高まる。

両利きのチーム

 ここからさらに思うのは、こうした「両利きネイティブ」ともいうべき人材が増えて、いずれはチームを結成できるようになるだろうということ。そうすると、当たり前のように「この段階では仮説検証中心」「今はアウトプット出すことに集中」などと、プロダクト開発の各局面に応じて、使う手を変えていけるようになる。誰が何を担うかのフォーメーションのパターンが、チーム内で飛躍的に増えることになる。

 真の「両利きチーム」とは、右手左手を人によって分担するのではなくて、そのチームの誰もがいずれも両利きである状態。そうしたチームが強いのはいうまでもない。というか、いま我々が考えているプロダクト作りとは全くことなる開発のあり方になる可能性がある。私は、それを見たくて、いまだ組織の間を彷徨い歩いている。

 なお、「プロダクトマネージャーの両利き」については、夏にイベントを開催し、そのレポートも公開いただいた。あわせてご一読いただければと思う。


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