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正解を引かなくても良いが、間違いを引いてはいけない

 明らかにDXの取り組みが進んでいる企業と、それに比べるとだいぶ手前のところに取り掛かっている企業との間には一体どんな差があってそのようになっているのだろう? と疑問に思っていた。

 進んでいる企業は1周目でよくある失敗を明らかに乗り越えていて、その次の取り組みを始めている。特徴としては「自分たちの言葉で語る」ことが出来ているように思う。その組織としての思想があるように感じるのだ。DXを自組織としてどう捉えているかに回答が出来て、自分たちの言葉で語れるだけの経験を既に経ている。

 DXがよくわからない、どこから始めたら良いかも分からない、この手の苦情にも似たような言い回しを聴くことは未だに多い。気持ちは分かる。しかし、それでも自分たちで考えることを始めるところからなんですよ。そもそも、確信をもってDXに取り組んでいる組織なんてほんの僅かなんだと思います。2周目の企業は分からないなりに、もがいてあがいて、何とか仮説を立てていますよ。そうした言葉を出したところで、なにかが動くわけではないので、そのまま飲み込むことも、また多い。

 それだけに、1周目と2周目の組織の差をどうしても知りたくなった。圧倒的に前者の組織が多いなかで、どこでどう間違えたらDX2面にいけるのか? いくつかの2周目の企業とコミュニケーションを取る中で、まだN数は少ないが、共通するものがあることに気づいた。

 それはDXの取り組み時期の早さである。

 2018年前後、ここで最初の取り組みを行っている。ちょうどDXレポート1が出された年のことだ。実際にはDXレポート1は2018年後半に出ているので、2018年に何らかの取り組みを行っているということは、その検討自体はさらに前に取り掛かっていたことになる。つまり、DXレポート1を初動のきっかけにしていない。自発的な危機感からDXへの取り組みを始めているということだ。

 さらに2018年にただ始めただけではなく、最初の取り組みの教訓(だいたい思うような成果はならない)を、プラスに転じるよう動いている。学びとして次の活動に活かす道を選んでいる。一方、最初の取り組みがいまいちだったので、そのままさらにダメな方向に倒してしまった経緯を抱えている企業もある。その後はしばらく落ち込んでいく局面が待っている。

 ここでまた1つ言えることは、DXにおける様々な選択肢から道を選ぶ際に「正解を引かなくても良いが、間違いを引いてはいけない」ということだ。企業活動とは、その組織が伝統的でかつ大きな規模であればあるほど、モメンタムがつきやすくある方向へと転がっていきやすい。長らく、「深化」的能力を極め続けてきた日本企業の特徴と言えるのだろう。

 例えば、DXにおける取り組みとはもとより新規性があり探索的に進めて然りな活動である。そうした特徴の仕事を、うまくいかないからといって、既存の枠組みに当てはめなおそうとしてしまうアンチパターンがある。「既存の枠組み」ということは、多くのことが「既存事業の判断基準」に寄せられることになる。これでは新しい試みなど前に進まなくなる。やはり、既存に寄せるべきではないと気づけたとしても、組織運動を切り替えるには時間がかかる。その間に、新規性の高い取り組みは徹底的に破壊されてしまう。

 2周目の企業の動きを参考にすると、現在1周目に取り組んでいる企業も、健全な危機感の下、取り組み結果を次に活かすというアジャイルな姿勢でもって臨むのであれば十分に進化に進める可能性があるということだ。

 ただ、もう1つ気づいたことがある。いまから1周目で失敗しようとする企業と、2周目から3周目へ向かおうとする企業との間には、取り組み方の速度に大きな開きがある。あくまで感覚でしかないが、その差は線形ではなく、指数関数的に思える。つまり、なにかの間違いでも起きない限り、あとから追いつくことが出来そうにない。これは、同一業界内で言えば、ちょっと怖い話だ。

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