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思いを噛み合わせる

 とある現場にメンターとしてしばらく関わっていた。半年ほど経っただろうか。時を遡ること、現場との最初の出会い。「どうもバラバラで雰囲気が宜しくない」ということで、友人である経営者からの相談を受けて、現場に赴いた。確かに空気は固い。そこで、まずは吐き出しをしてもらおうと、集まった面々でふりかえりをした。テーマは、自分たちの現場について。

 結果は2つに別れた。ほぼ何も挙げられないか、これまでに醸成してきた大量のProbelmを挙げるか。後者はともかく、前者が厄介。何が問題かも分からない状態では、問題解決の行為自体が始まらない。ファイブフィンガーを取ってみると、1〜2本。Problemを挙げられなくても、何となくこの状況への不安は感じている、という様相だった。

 表面的な問題は、ふりかえりである程度見えている。これを手がかりに、何が起きているのかの探索を行うことにした。まずは、大量のProblemを挙げている若手のみんなと対話する。結果、みんなの状況は一言で言うと「迷っている」ということだった。センパイ、上司にあたる中堅メンバーと会話はしているが対話になっていない。つまり、言葉はかわせているが、問題の共有や解決に向かってともに考えるということができていない。

 もちろん、次は中堅メンバーと対話する。中堅メンバーが現場(若手)を省みず、対話を拒否しているのではないか、という仮説を持って臨む。ところが、彼らと対話してみると、全く外れていて、若手メンバー、チームに向き合いたいという思いを備えていて、自分たちで必要と思う行動を起こしていた。

 では、なぜ、若手と中堅で噛み合わない状況になっているのか? それは、若手からのフィードバックが中堅に届いてない、ひいては届けるための機会、場がないためだった。だから、中堅の思いは空振りし、若手の思いも組織に届かない、結果状況は悪くなり、中堅はよりがんばろうとするが的を射ることはなく。冒頭の状態へとたどり着いていたようだ。

 さて、この状況で解決の糸口として何をしようか。問題が何かわかった時点で、もう答えは出ている。場作りだ。ただし、単に集まってフラットに会話しようとしてもなかなか言葉が出にくい。場の自主性を高めるために、OSTを行うことにした(OSTについてはこちらを参照)。テーマを自分たちで選び、話したいテーマについて話す。もちろん、若手にはこれが「中堅と対話する絶好の機会」だということ、中堅には「若手の思いを引き出す絶好の機会」だと伝える。

 私の役割はほぼここまでで果たしたようなもの。当日の運営、ファシリテートはおまけみたいなものだ。OSTの中で、問題に取り組むために何が必要か自分たちでアイデアを出し、何をやるか自分たちで選ぶ。これから取り組む作戦に名前付けをする。選んだ言葉は「秘密の花園」。この現場にしか分からない文脈と言葉だ。(だが)それが良い。OSTを終えてのファイブフィンガーが4〜5本だったという以上に、何よりも対話を終えた後のみんなのすっきりした表情が、この先のことを期待させた。

 そして、1ヶ月が経ち、ふりかえりに臨んだ。OSTのときに使った模造紙がどこかにいってしまった、どこだどこだ、なんて言って準備しているときは、こんな調子では何も行動を起こせていないのではと不安になった。ところが、YWT(についてはこちら)でやってみると、圧倒的にやったこと(Y)が出てくる。わかったこと(W)として、Goodも、Problemも見えている。次にやること(T)で選ぶ内容は、明らかに一段レベルが上がっている。

 みんな、誰に言われなくたって、何をするか分かっている感じ。ファイブフィンガーを取る必要はない。こういう変化に立ちあえることが、この仕事の冥利だ。

 さて、いくつか原則をまとめておく。

問題を面で捉える
 まず言語化できることは挙げきる。情報として広く集める。
問題の範囲を絞って探索する
 一気に捉え、解こうとしない。顕在化している問題をヒントに範囲を
 決めて問題の深掘りを行う
問題には構造がある
 問題を探索してわかったことをもとに構造を組み立てる。今回は中堅と
 若手の間でフィードバックループが回っていないことで、負の循環を
 招いていた。正の循環に直すべく、場作り(OSTとふりかえり)を組み
 入れた。

 現場からは以上です。

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