パン生地と小さいしあわせ #ある日のパン屋の風景
「しあわせ」?
さて、どんなときだろうね、しあわせだなって感じるのは。
なに、どうしたの?何か悩んでる?笑
人によって違うから、って?
そうだよね、お金が使い切れないくらいあったってしあわせを感じられない人もいるっていうしね。私だったら大喜びだけどね。笑
あんまり感情の起伏がない方だから、しあわせだなあなんて感じた記憶はあまりないんだけど。
そうだなあ、パンを作る工程の中に、発酵っていう工程があるんだよ。
小麦とか水とか、材料を混ぜたらしばしの間こねて、粘土より少しばかりやわらかな丸いかたまりにするんだ。
そのあと、暖かいところで1時間ほどかけて、イーストが炭酸ガスを発生させてパン生地を膨らませてくれる。それが発酵。
発酵がうまくいくとね、粘土みたいだったパン生地が、赤ちゃんのほっぺたみたいにふわんふわんになるんだよ。
そのやわらかい、危うげな手触りを感じた時に、おー、よしよし、よくやったね、って、心がほどけていくような、そんな感覚を覚えるんだ。
これが、私にとってのしあわせ、っていうやつかもね。
小さい!って?笑
でも、しあわせって案外そんなもんなんじゃないの?
そういう小さいしあわせを普段の生活でどれだけたくさん感じられるか。
そんなのが、お金よりも大事なことのような気がするよね。
負け惜しみじゃないよ?
今日のパン、やわらかいでしょ?もっと食べていいよ。
でも、一次発酵が終わった時のパン生地はもっとやわらかくて、ホントにいい触り心地なんだよ。
パンこねてみる?え?いらない?
ダメだなあ、小さいしあわせ、重ねないと。
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